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gentle love  作者: 朱希
模索編
31/33

acht

女神の涙





甘くて





苦くて





僕を苦しめるから






gentle love






「歯あ、くいしばれやあ!!!!」

ボコッ!!そんな効果音がついてもおかしくないぐらい勢いよく琴乃は香南を殴った。

そんなカナンに雅は寄り添う。

「こ、琴乃ちゃん、こいつ一応歌手でテレビに出なきゃいけなくて…」

「出なくて良い!カナン!あんた何度七海を悲しませたら気が済むわけ?!ちゃんと七海の気持ち考えて行動してんの?!馬鹿にするのもいい加減にしろ!」

再び殴りそうになるのを夏流がとめた。

「琴乃ちゃん本当にこれ以上は!…香南、何があったか説明してくれるんだよね?」

「…」

一晩中起きていたのだろう。香南の目の下には濃い熊ができており殴られた痕がより悲壮感を漂わせていた。





香南から夏流へ電話がかかってきたのは朝だった。

突然の電話に夏流は驚いたものの、スケジュール確認かと何も考えず出た。

『七海が、双子が…いなくなった』

生気のない声で言う香南に夏流は目を見開くばかりだった。

「三人でどこか出かけるとも言ってなかったの?」

『ホワイトボードに、書いてあるんだ。…俺、俺は…』

周も状況がおかしいのに気づいたのだろう。近寄り夏流の携帯に耳を澄ませた。

「わかった。一度そっちに行くから。何か他に状況わかるものがないか探しておいて。いいね。」

わかったという香南の薄ら返事を聞き電話を終了させる。

周が真剣な顔でこちらを向いていた。

「緊急事態発生だよ。」

「…香南君今度は何をしたのさ」

「わかんない。…けどいなくなるって」

夏流がいつの間にかかみ締めていた唇を周がそっと指で触る。

「あと揃えるのは三人。早く連絡して情報共有しないとね。」

その指は夏流に大丈夫と伝えているように暖かく、安心させるものだった。








その後夏流が琴乃に連絡を取ると舌打ちをして今回の理由がわかるという返事をもらった。

琴乃を迎えに行った車の中で夏流たちは衝撃的事実を聞く。

まさか七海が子供を欲しがっていることなどつゆも知らなかったのだ。

それでいて香南が子供は一切要らないと拒否したこともその時知った。

確かに最近少し様子がおかしいとは思っていたが、いつものように自分に何か非があるのではと悩んでいるのではなく、自分が正しいことを貫いているような感じであった。

興奮している琴乃に対して何も話さない香南。

「…香南。お前七海にどう言ったんだよ。」

「…俺の血が流れているやつはこれ以上増えて欲しくないといったんだ。だから俺がいた施設を紹介してやると。」

「はあ?!そう言ったの?!ほんっとありえない!!」

再び殴りかかろうとすることのを必死で取り押さえるが琴乃の言葉はとまらない。

「ばか!!あほ!!!おたんこなす!!!女はね!好きな、大好きな人との子供を欲しいと思うのは当たり前なの!どうして七海の気持ちも考えないわけ?!」

ぽたぽたと流れる涙をぬぐわない。否、流れているのかもわからないほど気持ちを琴乃は香南にぶつけた。

それをぐっと受け止める香南。次の瞬間現れたのは冷酷な蒼い瞳。

「…ったら、…いい」

「え?」

「だったら、どうしたらいい?!俺は、俺の気持ちはどうなる!!俺は七海を守りたい!七海の笑顔を守りたい!七海の気持ちを守りたい!!けれど俺は?!このとめどなく生まれ行く連鎖をいったいどうしたら止められるんだ!俺の心はどうしたらいいんだ…!!!」

「香南…」

「この二つをどうやったら守ることができる?!」

睨み付けながら皆を見る香南。

「…お前、そんなに家族のことを憎んでるのか?」

「憎んでる?」

鼻で笑うと燎のほうを向きほくそ微笑む

「そんな言葉で片付けられる心なら今頃とっくに子供を抱きしめている」







もしこんな瞳がなかったら

抱きしめる自信がある

キスだって毎日してやる

一緒に微笑んでやる








ぎゅっと握り締める手に夏流が重ねる。

「ねえ香南、ななちゃんに香南は何を教えてもらったの?何をもらったの?」

「…」

「いろんなものをもらったんじゃないの?いろんなものを…乗り越える力をもらったんじゃないの?」

「なつ…」

「ななちゃんには負けるけど僕たちだって香南をずっと見てきたんだ。君がご両親にあまりいい感情を持っていなかったことは知ってるよ。けれどねその感情を変える事ができることをななちゃんに教えてもらったじゃん。現に女性に対しての感情は変わったでしょ?」

そうして夏流と香南は琴乃を見る。

「琴乃ちゃんが触ったって殴ったって大丈夫じゃん。ねえ香南。人は変わるんだよ?」

「…」

時計の針の音のみが広がるリビング。

それを遮る様に日向家の電話が鳴り響く。

香南がすばやく立ち上がり電話に対応する。その相手は少しだけ慣れ親しんだ言葉を発する。

はっきりと鋭い。しかし少しだけ暖かさを感じる。

内容を聞いて返事をする。琴乃は少しだけ驚いた様子であった。

「カナン、何語話してんの…」

「彼のもう一つの母国語」

「え?」

答える周に琴乃はさらに衝撃を受ける。

電話を切った香南が皆のほうを向く。

「七海たち、ドイツにいるって…」

「ど、ドイツ?!」

ほっとした様子のメンバー、ほっとしたらいいのかこれ以上どう驚けばいいのかわからない琴乃。

そんななか夏流が笑顔で踏み出る。




「香南、今だよ。大丈夫」





だって君にはもうたくさんの家族がいるのだから。

数字の読み方アクトかと思いきやアハトらしいです。

ドイツ語の発音は難しい!

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