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gentle love  作者: 朱希
模索編
24/33

eins

新章突入です

当たり前だと思っていたことが





当たり前じゃなくなる切なさ





時の流れは






同じくして流れゆくものだから







gentle love






双子が中学生になった春、日向七海と柳田琴乃はお茶をしていた。

瑠唯と美羽が中学生になりちゃんと成長していることへの喜び、しかし今から始まるだろう反抗期への不安様々な感情が渦巻いていた。

誰かに吐き出したい感情、しかしいう人がいない。

そんな時琴乃がお茶をしようと提案してきたのだ。

琴乃も大学を卒業し、ようやく社会人生活にも慣れてきたのだろう。しかし言いたい愚痴もたくさん増えているようだった。

七海も久々の誘いに飛びつくように頷いた。






「双子ちゃんたちも中学か~。時の流れって怖いね。」

「ほんとだね。あっという間だったなあ…」

「これからまだ、反抗期っていう恐ろしい時期がやってくるからね…あの二人が反抗期とか想像できないけれど…」

「それを言わないで…」

七海自身、反抗期と言うものがあまりなかった。

年の離れた双子が生まれたのも七海が中学に入った時期ぐらいで、彼らに対しての嫉妬心からか多少の反抗期があったものの彼らがかわいいと思えるようになるともはや反抗期など終わっていたのであった。

自分自身の反抗期をまだ覚えている七海にとって双子にもその時がやってきたかと思うと不安がよぎるのであった。

「まーあの双子のことだからちょーっともの投げるとかはあるかもしれないけれど、ちゃんと愛情沢山もらっていることを理解はしていると思うからすぐ終わるだろうね。」

「だといいんだけどなあ…琴乃はどうなの?」

「私?うーん…まあぼちぼちね。なんか変な男に追いかけられてる…」

「え?!それってストーカー?!」

「なんっていうか、ストーカーに近いただのおっかけ?」

「は?」

思わず七海は琴乃のことを顔を見る。

どうやら琴乃自身もよくわからないらしく、悩んでいるような表情をしていた。

「今年入ってきた後輩なんだけど、入社式の次の日から暇さえあれば話しかけてくるのよね…部署全然違うのに…」

「そ、そうなんだ…」

気を付けてねと付け加えるが琴乃はさらに頭を抱えてしまった。

「流石に家までは付いてこないけれど、会社では昼休憩になるといつも来るし、おかげで会社の男は近寄ってこない!合コン行ってもなぜかそこに彼がいる!彼氏なんかできるわけがない!!」

「えっ琴乃彼氏作る気あったんだ…」

「はあ?!七海までそういうこと言う?!」

琴乃は驚いた表情をすると泣きまねを始めた。

七海もしまったと手で口を押える。

「私だってanfangのファンしてるけど!それなりに結婚したいとか思ってるんだからね!子供だって欲しいなとか人並みに思ってるし」

「あー…」

七海の心がツキンと痛む。しかしそれに気付かず琴乃は七海に質問をしてきた。

「そういえばさ…双子も中学生になってちょっとは落ち着いてきたんだし、七海は自分の子供作らないの?っていうかまあ、そんな話を聞くのもどうかと思うけれど…」

「うーん…」

七海は苦笑した。

双子を育ててはや10年近く経つ。子育てと言うのは大変だと実感していたが、それでも自分の子供が欲しいと思わないわけではなかった。

「欲しいとは、思う…」

「じゃあ香南に言えばいいじゃない。夜の営みはそれなりにしてるんでしょ?そろそろ私たちも~!って」

七海が最近悩んでいる最大の要因、それがこの話題だった。

確かに七海と香南は良い年齢であり子供が生まれるプロセスを知っている。もちろんそれが無条件で湧き出てくる感情によって行われることがあることも。

香南はまだ20代で若者なのだ。何もしないということはなかったのである。

しかし、しかしなのだ。

七海はしばらく黙っていたが下を向きながら早口に、小さな声で話した。

「香南さん、子供、欲しくないみたい…」

「はあ?!」

琴乃がテーブルを勢い良く叩く。テーブルの上の紅茶がカップから飛び出した。

「何言ってんの?!カナン七海のこと大大大好きじゃん!七海の子供欲しくないわけ?!」

「わからないけれど…その、もし欲しいと思うならば何もつけないでしょう?」

小さな声でしかし切実な声で琴乃に伝える。

「…え、…も、もしかして…」

七海はコクリと頷くと琴乃は信じられないといった顔をした。

「意味わかんない…ちょっと私カナン問い詰めてくる」

「や、やめて!!」

思わず七海は首を振りながら琴乃の袖をつかむ。

「ちゃんと聞くから…理由も…それまでは、まだわからないから。」

「七海…」

「ごめん、変なこと言っちゃったね。それより、琴乃の話もっと聞かせて?」

切ない笑顔で笑う七海、その意味を琴乃は十二分に理解していた。

しかし何も言えない。そこには七海と香南の絆があるから。

琴乃は心の中でため息をつくと自分の周りで起こっている不思議な青年の話を続けていった。








「ななちゃん、ご飯こっちでいい?」

「うん、ありがとう。」

七海は夕ご飯の準備を手伝ってくれている瑠唯にお礼を述べると瑠唯は微笑んでテーブルのセッティングを始めた。

双子が中学生になり様々なことが変わった。

一つは双子が一緒の行動をしなくなったこと。

これは美羽がテニス部に入ったことにより必然的になるべくしてなったものだった。

七海はいつも一緒の双子を見ていたため、少し寂しく、切なく思うこともあったが、それでもやりたいことをやる気持ち、成長している二人を見て少し誇らしくなった。

それに伴い香南へいつも行っていた連絡も全員でできなくなっていた。

そのせいで香南と美羽とのコミュニケーションが取りにくくなっていったのだ。

美羽は忙しくてそれどころではないが、香南は寂しく思っているようだった。

そんな香南を見た雅がホワイトボードを購入してきた。


「これを四つに区分けしてそれぞれの端に名前を書く。香南、七海、とかね。んで毎日自分のところにはスケジュール、双子ちゃんとななちゃんのところにはメッセージを書くんだ。そのメッセージの下に返事を書いてもらう。どうだ?コミュニケーション取れるだろう?」


香南は早速実行した。会えない美羽には七海、瑠唯に伝えてもらうことになったのだ。

すると翌日には同じようなホワイトボードがその下に掛かっていた。

なんとそれは美羽が同じことをするために買ってきたものだった。

そのおかげで何とかみんなのコミュニケーションが取れていた。

「今日はっ、にーちゃん、夜まで撮影なんだ、ね」

「そうみたい。だからいっぱいお返事書いてあげてね。」

「う、うん!」

瑠唯は嬉しそうにホワイトボードを見る。そして返事を書きこむのであった。

「たっだいま~」

「あっ!美羽、だ!」

書き終わった頃には美羽が帰ってきた。テニスを始めてから常に疲れた声しか聞いていない。

「美羽、だいじょう、ぶ?」

「つっかれた~!けど大丈夫!俺つええし!」

「う、うん!そうだ、ね」

嬉しそうに話す双子を見ながら夜ご飯を食べるのが七海はとても好きだった。








双子が寝静まった真夜中、家のドアが開く音がする。

七海はすぐにソファから立ち上がると駆け出した。

「おかえりなさい!」

「ああ、ただいま。」

香南はサングラスを外すと七海を抱きしめる。

そしてその蒼い瞳で七海を見つめる。

「今日は何もなかったか?」

「はい!あ、お返事が届いていますよ。双子が今日も嬉しそうに書いていました。」

「そうか。」

香南は心持ち急いでリビングへ向かい、ホワイトボードを一目散に見るのだ。

たまにくすくす笑いながら、頷きながら、真剣な表情をしながら大事そうに見る。

そして傍に置いてあるデジカメでそのホワイトボードを撮ると少しもったいなさそうに消す。

それから次の日のために自分のホワイトボードをそして美羽のホワイトボードへ返事を書き込むのだった。

習慣の作業を終わらせると七海の作ったご飯を食べる。

香南は今でもほとんど飲み会に行かない。

行くとしても新年会、忘年会、ライブの打ち上げぐらい、しかも一次会で必ず帰るのだった。

「この煮物は瑠唯が手伝ってくれたんですよ。野菜を切ってくれたんです。上手でしょう?」

「そうなのか。ああ。すげえな瑠唯は。美味い」

「ありがとうございます。」



家族の形は少しずつ変わっていったけど、七海はこれでいいと思っていた。

自分が欲しいと思っているものがないとしても、今あるこの宝物だけで十分だと思っていた。

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