そして真っ白になった
お食事中の方はあまり見ない方がいいと思います。
全部捨てていい
ただ、お前が幸せになれる場所があるならば
俺はそこへ行くよ
gentle love
あの出来事から瑠唯は俺にかかわることが一切なくなった。
もちろん家では今までほとんどすれ違いの生活だったためななちゃんやにーちゃんに知られることはなくなった。
というよりも、ななちゃんも何か、少し変だった。
少し顔色が悪いし、なにかうちは呪われているのか…?
大丈夫かと聞いても何でもないと笑顔で答えるあたりななちゃんと瑠唯はそっくりな気がする。
しかしこのままでは全てが失われてしまうような気がした。
俺は瑠唯のために何度も何度も瑠唯の教室に通った。
しかしそのたびにすれ違いになる。
「瑠唯と美羽、お前らなんかあったのか?」
藤堂や他の奴らにも聞かれるがそんなこと俺が聞きたい。
俺は頼み込んで瑠唯のことを見てもらうことにした。
しかし前みたいにカナン関係かなにかでヒソヒソと話している人がいるもののおかしなところは別にないようだ。
ただ、以前よりもさらに人に接するのが少なくなっているといわれた。
「ぜってえなんかあったって。俺らも知らないうちに、なんかやられてんのか…?」
藤堂もクラスメイトが何か起こっているのを見過ごせないのだろう。
彼はとてもジェントルマンだ。ヒーローと言う言葉はあいつが一番似合う。
しかしすべてを見ているわけにもいかなかった。
俺は俺で部活でBクラスに入りさらなる厳しい練習についていくのでいっぱいだったのだ。
部活が終わるころには空も暗闇に包まれていて、帰れば瑠唯は部屋へ戻っていた。
俺は今までわけのわからないケンカをしていることを言えなかったがついにななちゃんに尋ねた。
「ななちゃん、瑠唯最近変じゃねえか?」
「…えっ?」
ななちゃんは驚いたように俺を見た。
「そうね…小学生のころより喋らなくなったけれど、思春期なのかなと思って、触れずにいたのだけれど…なにかあったの?」
「いや…何もないならいいんだ。」
ご飯を食べて風呂に入ったあとふと瑠唯の部屋を見る。
ノックをしても、そしてドア下からは光が漏れていない。
寝ているのだろうか。
俺はそっと瑠唯の部屋の前へ行き小さくノックをする。
「瑠唯、おやすみ。」
祈るように呟くとそっと部屋へ戻った。
次の日、俺は昼休みに瑠唯を追跡することにした。
お弁当を前の休み時間に食べて、瑠唯の教室付近で隠れながら瑠唯を待つ。
すると瑠唯は弁当を持ってクラスから出てきて中庭のほうへ向かった。
うちの学校中庭は割と広くて、花がめちゃくちゃ綺麗に咲いている。
その隅で隠れていると、瑠唯は何人かの女子に囲まれていた。
「あのぉ、これー美羽くんに渡してほしいのだけれどぉ…」
じっと見るとどうやら俺宛のラブレターを瑠唯に渡そうとしているようだ。
それを見た瑠唯は手をお腹に当てそっと話し始めた。
「えっと、自分で渡した方が、気持ち、伝わるよ?美羽も、そういう人、じゃないと…付き合わないと、思う…」
そうだ。中学に入り、瑠唯が俺に俺宛のラブレターを預かってきたと渡してきたことがあった。
しかし、そんなもの受け取るはずがない。
自分で渡せないやつにどう惚れたらいいんだ?
そういうことをさんざん言って結局その手紙は受け取ったが告白には応じなかったことがあった。
それをちゃんと覚えてくれていたのか、瑠唯は説明してくれていた。
俺は瑠唯が俺の気持ちを覚えていたことを嬉しく感じていたが、次の瞬間俺は固まってしまった。
女子たちはそれを聞くとため息をつきながら話し始めた。
「やっぱり噂はホントだったのね」
「あ~あ、無駄だった。何でこんな根暗なやつ追いかけたんだろ。」
「ほんとほんと。美羽くんとホントに兄弟なの?似てなくない?」
「もしかして嘘だったりして~!」
「いや、あの、ぼく、は…」
「うっわ~…”ぼく”とか…中学生になって使う?超お子様ジャン。」
「だっさー…なんか美羽くん可哀想。こんな子と兄弟なんて」
「とりあえずいこ。もー時間損した。美羽くんの兄弟ならもっとかっこよくてもいいのにねえ」
そういってまた瑠唯について「キモい」だの「うそつき」だの話しながら去っていった。
俺は手を震わせながらその場を動けなかった。
俺がやろうとしていたこと、確かに俺は俺が人気になったと思う。
それで瑠唯を救ってやるはずだった。
ふと瑠唯のほうを見ると瑠唯は手を口に当てうずくまっていた。
「瑠唯?!」
俺はすかさず瑠唯のほうへ向かい背中をさすろうとした。
しかし瑠唯は俺を拒絶すると急いで溝のほうへ走っていた。
その場へ向かうと瑠唯は嘔吐していた。
苦しそうに、ものを吐き出す瑠唯をただただ見ていることしかできなかった。
瑠唯は手慣れたように中庭のホースでその溝を洗い、濡らしたタオルで顔や服を拭いていた。
ラブレターを俺のために預かっても告白しないことをみんなに律儀に言っていたのか?
自分があれだけ文句を言われるのをわかっていても…
「瑠唯、お前、毎回ああ言って…言われてはこんな状況なのか?」
「…」
沈黙は肯定を表す。苦しそうに瑠唯は顔をゆがめた。
「いつからだ?」
「…」
「おい、答えろよ。」
「…おねがい、ななちゃんや、にーちゃんに、言わないで。」
瑠唯がいつも以上に真剣な目で俺に訴えてきた。
「何言ってんだよお前。」
「大丈夫、だから。美羽も、ごめん、ね。」
「ちげえだろ!!」
なんでこうなったんだ?
俺はただ、家族を、守りたかったはずなのに。
実際は自分のことしか考えてなかったんだ。
こんな瑠唯が優しすぎることを知っていたはずなのに。
人のために自分の心を犠牲にする人だと知っていたはずなのに。
俺が、俺がもっと瑠唯のために考えてやれなかったから。
そう思った瞬間、頭が真っ白になった。
「もう、いい、か。」
ふっと息を吐いた。
「え?」
瑠唯が困ったように首をかしげた。
「なあ、瑠唯」
俺は瑠唯をじっと見つめた。
「な、に?」
そしてにっこりとほほ笑みかけた。
「一緒に、消えない?」
こんな小さな世界、いらないや。
もっと長くなると思っていましたが、これにて美羽編終了です。
次回からは新章に突入します。




