優しいご飯
強くなりたいんだ
君のように気高い心を持ちたいんだ
だからこそ君のそばは
とても怖い
gentle love
「瑠唯、ご飯くおーぜ!」
「…え?」
テニスのトーナメントが終わった次の日の昼休みから俺は瑠唯の教室へ行くようになった。
俺の学校は給食ではないからななちゃん特製お弁当を好きなところで食べてもいい。
そういえば、お弁当だって知ったにーちゃんはひどく羨ましがっていた。
その顔をななちゃんはわかっていたのか次の日からにーちゃんが昼をまたいで仕事がある日はにーちゃんにもお弁当を作っていた。
その時のにーちゃんの顔と言ったら、たぶんファンが見たら卒倒するんじゃねえかって感じだった。
今日もありがたくななちゃんのお弁当をもらったのだが、昨日部活の仲間から言われた言葉が自分の心を突き刺していた。
『まあ、最初のころちょっと話題になっただろ?それで話しかけたことはあったんだけど一向に返事くれねえし何もしゃべらねえから誰も近づかなくなったんだよ。』
瑠唯は人見知りが激しい。それににーちゃんのこともある。
だからこそしゃべれなかったのかもしれない。けれど俺が傍に居たら少しはフォローできるかもしれないと思ったのだ。
「日向じゃん。どーしたんだよ。」
藤堂が驚いたように話しかけてきた。
「いやちょっと弟と一緒に食べようと思ってさ。お前らも一緒に食わねえ?」
「えっ、」
他の仲間を呼ぼうとしたら瑠唯は戸惑った様子だった。仲間たちも少し遠慮気味に俺に話しかけてきた。
「いいのか?」
「当たり前だろ!」
そういって周りの机を借りてみんなで食べることにした。
テニス部は数人いるから大所帯となってしまった。
「こいつ瑠唯っていうんだ。瑠唯の助言のおかげで山本先輩に勝てたんだぜ?」
「へえすげーな。」
「そ、そんなこと、ない、です…」
首をぶんぶん横に振って瑠唯は否定する。
その言い方に仲間たちは苦笑いをする。
「えーと瑠唯、でいいのか?俺たち同い年なんだし敬語はやめよーぜ。」
「あっ、ごめん…」
「別に謝ることじゃねーよ!な?」
「う、うん!」
少し嬉しそうに笑う瑠唯を見て俺は少し安心した。この瑠唯の顔は相手を信用している証拠なのだ。
「じゃあ日向は美羽だな。」
「だな!俺にぴったりの名前だろ?」
「は?どの口が言ってんだよ。」
皆が一斉に笑う。瑠唯も一緒になって笑っていた。
それから弁当を食べながらひたすらテニスの話をしていた。
瑠唯は緊張しながらも話を聞いているようだった。
「あれから山本先輩まーたひどいんだよな。お前のせいだぞ。Cチームに入れやがって!」
「えー俺のせい?」
「まああの先輩だったらあのレベルだろ。」
「そうなのか?」
「だって瑠唯も言ってたじゃねえか。美羽のほうが強い!!って。」
「あ、あのあれは…」
口をもごもごしながら瑠唯がつぶやく。
「なあ瑠唯、お前どうやってあの先輩の弱点見破ったんだ?」
「え?」
ふとした藤堂の質問に瑠唯は驚く。まさか自分がこの会話に入れると思っていなかったのだろう。
「そうだよ。あの試合だけしか見てなかったんだろ?俺なんてやってるのに気付かなかったぜ。」
瑠唯は少し考えながら恥ずかしそうに話し始めた。
「美羽は、その…緊張して、視野が狭かったんだと思うけれど、外から見てたらわかったよ。あの人、なぜかその…後ろのほうを狙う攻撃がワンパターンなんだ。一瞬、美羽が追いつめた時は余計。だから、それを逆に狙って前に打てば、あの人の足だと届かない。そう思って…その…」
「へえ、テニスわからないのに見てそれに気付いたんだ。」
藤堂が感心したようにうなずく。
「おい、お前わかったか?」
「いや、全然…」
他の仲間たちがつぶやく。
「も、もちろんその、他のサーブの狙う場所とか…」
「な、すげーだろ?瑠唯の観察力。」
俺は瑠唯の肩を抱いて自慢げにいう。こうやって瑠唯のことを知っていってもらえるのがとても嬉しかったのだ。
「美羽は、瑠唯をよばねーのか?」
「は?」
その放課後の部活、準備ストレッチを藤堂としていた時にぽつりと言われた言葉。
わけがわからず聞き返してしまった。
「あれだけ観察力が鋭いなら、うちのマネージャーしてもらえばいいのに…」
「あー…」
そしてレオンと会話をしていたのを思い出す。
「瑠唯は見てるだけでいいんだって。自信がないっていうのもあるかもしれねえけど…」
「もったいねー!けど、いいやつジャン。瑠唯。気に入った。」
俺がストレッチしているのを上から押しながら藤堂が言った。
「だろ?これからも、日向瑠唯をよろしくお願いしやす。」
「ぷっはっはははは!!!」
俺が瑠唯を頼んだ瞬間、藤堂は腹を抱えて笑い出した。
俺はムッとしながら藤堂の方を振り返る。
「んだよ!」
「ひー!お前らほんっと双子なんだな。」
「は?」
「美羽が昼休憩に帰った後、瑠唯が机を直しながら俺たちに言ったんだよ。『これからも、日向美羽をよろしくお願いします』って!もー一緒の声でいうんじゃねーよ!マジお前ら最高!」
その瞬間俺の周りを新しい風が吹いた。
にーちゃんのこと関係なく、俺達だけのことを言ってくれている。
これはなんて嬉しいことなんだろうか。
嬉しくもあり、恥ずかしくもある言葉に、照れながらも俺はお礼代わりにまだ笑っている藤堂の頭にチョップを送った。
大変お待たせしました。




