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華は歌い続ける04

 ギルドラは黙っている。建物は薄暗くなり静寂がおとずれる、俺もまたただ黙ってギルドラを見つめているだけだった。

「お前が、昔の俺に似てたから助けたんだ」

「昔の?」

 ギルドラは頷き一度俺を見ると視線を天井へと投げやった。

「俺は昔、漏れ出す力を回収し抑える仕事をしてたんだ。その時に背中を預けられる唯一の存在が居た」

 俺は黙って話しを聞いている。俺は言葉を発する代わりにギルドラの手に触れた。やっぱり、ギルドラの手は温かい、ギルドラは頷き一つ呼吸を置き口を開く。

「俺はついカッとなると冷静を失っちまうタイプでな。あの日俺はつい作戦を無視して武器の売買が行われている現場に単独で突っ込んじまった」

 自嘲気味にギルドラが笑う、暗く狭い建物の中にギルドラの乾いた笑いが響く。

「勿論、袋叩きにされたさ。仲間も俺を見限った……でもアイツだけは助けに来てくれたんだ。こんな馬鹿な俺を。アイツは敵を正確に倒し、場を混乱させ俺を逃がしてくれた。だがな、俺を逃がしてる最中アイツは撃ち殺された」

 言葉が俺の胸に重たく響く、表情まではうかがえないがギルドラは震えていた、俺もそんなギルドラになんて答えていいのか分からずに居た。

「一人生き残っちまった俺は、辛くて情けなくて申し訳無くて……生きてる意味が分からなくて死んだように生きてた」

 ギルドラに手を握り返される、繋がった手を引かれ俺はギルドラに抱き締められた、俺はそのまま話しの続きを待つ。

「でもな、都合の良い話しだがアイツは俺に後を追って欲しいなんて思っちゃいねぇって思えてな。それに残された俺には使命があるって気付いた」

「……使命?」

「ああ、アイツが……いや、俺達が守ろうとした世界がどんな終焉を迎えるのか見届けるのが俺の使命でいつかアイツが居る場所に逝った日にはアイツに伝えてやるんだ」

「……そうか」

「そう決めた時すっきりしてな、やっと自分がまだ生きてるって実感出来た、だからだな、途方に暮れたお前を見た時つい手を差し伸べちまった」

「俺を拾った事……後悔してるか?」

「こんなご時世だ、守るものを抱えちまう事は利口とは言えないが、後悔なんてしてねぇよ。何よりお前は小さいなりになかなか頑張ってるしな……それに」

「……ギル?」

 ギルドラは何か言い掛けるが、クスッと小さく笑うだけで答えてくれない、それから「もう寝ろ」と俺は強く抱き締められ、結局言葉の続きは聞けなかった。俺を抱き枕か何かの代わりにしているのかと言いたくもなるが、言葉を胸の中にしまい込み、俺は黙ってギルドラの腕に身を委ねて目を瞑った。

 その温もりは俺を心地良い眠りにいざなう。

 夢と現実の境界線が曖昧になりながらも俺は、何か写真のようなものを見て、涙を流すギルドラの姿を見た気がした。きっとその写真には「アイツ」が写っているのだろう。

 以前母が父の写真を握り締めていた事を思い出す。母にとって父はかけがえのない人物だった。そう思うと何故か、胸がチクリと痛んだ。

 俺の意識はそこで、再び深い眠りの底に落ちていく。


 ◇◇◇◇


 珍しく俺は瞼をくすぐる柔らかな陽の光で目を覚ます、珍しいと言えばギルドラがまだ眠っているという事も珍しい。

 ギルドラの腕から抜け出し窓から空を見上げる、雲が多いが綺麗な青空だ、空を見ているだけでなぜだか自然と胸が躍る。ギルドラは「終焉」を見届けると言っていたがこの世界が終わるとは俺には思えない。

 人は過ちを繰り返してきた何度も、そしてこうして今女が消え環境が変わり、人は絶滅の危機を迎えている。自業自得だ。

 人は滅ぶべきなのだろう、それでも俺はなんとなくだが、「終焉」を感じられなかった。


「おい、そんなに窓に貼りついてると外の奴等に気付かれるぞ」

 いつの間にか起きたギルドラに首根っこを掴まれ窓から引き離される。

「随分ゆっくり眠っていたな」

「いつもなら直ぐ起きれるように熟睡はしないんだがな、お前の抱き心地が良いのがいけない」

「俺のせいか」

 やはり抱き枕扱いされていたようだ、何故か複雑な気分になる。

「そろそろもう少し遠くまで行っても大丈夫そうだな」

「そうだな、俺は歌を探さないとならないし」

「ああ、俺はこの国の終焉を見なきゃならねえ」

 ギルドラがニカッと笑い俺の頭を乱暴に撫で回す。抱き枕の次は犬扱いだ。少し呆れるが人の頭を滅茶苦茶にかきまわすのはギルドラの癖のようなものでもあるからあえて何も言わないでおく。

「よし、旅の前に腹ごしらえだな! 待ってろ食糧を持ってきてやるから」

 そう言ってギルドラは俺を置いて外に出て行こうとしたが、不意にぴたり立ち止まり、振り返って俺に近寄って来る。ギルドラは真顔だ。

 ――何か大事な物でも忘れたのだろうか。

「どうしたんだ?」

「いや、お前が良い子で待ってられるおまじないをしてやろうと思ってな」

 言い終わるや否や、ギルドラの指先が俺の顎を捉え、軽く唇を塞がれる。思考停止、頭が真っ白になり情け無いが俺は腰を抜かし、その場に尻餅をついてしまう。

「ぷ、あはは!」

 驚きのあまりに尻餅をついた俺を、ギルドラは腹を抱えて笑っていた。俺は悔しくなり目一杯ギルドラを睨むもギルドラは楽しげに笑い続けるだけだった。

 それを見送り今度こそ一人になった俺はぼんやり考え込む。

 初めて他人と口付けを交わした、初めての相手が男というのもどうかと思うが。俺もどうかしている、嫌だとは想わなかった、それどころか……。

「いや、おかしいだろ」

 ぽつりと声に出して言ってみる。だが返事をする相手は俺自身しか居ない。暫く無意味な自問自答を繰り返した。

◇後書き?《おまけ》


「ギルドラってコードネームなんだろ?」

「ああ、格好いいだろ?」

「格好いいかどうかは置いといて、何か意味はあるのか?」

「聞きたいか? 特別に教えてやろう」

ギルドラがニヤリと笑う、何だか腹立たしい。


「昔俺がまだアイツと世界を守るため走り回ってた頃に放送されてた刑事ドラマのタイトルから取ったんだ、…あのドラマはよかったぞ、主人公の刑事が…「そうか」


「聞いてきたくせに、なんだその反応は、ガキの癖に生意気だ―」


俺はギルドラに頬を抓られた



ギルドラの方がシランより無邪気というか子供っぽいようです。命を救われたからか、その人柄に惹かれるのかギルドラへの気持ちに戸惑いシランの気持ちは揺れます。

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