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天使たちの騒々しい日々  作者: 三井ゆず
2.暗躍する悪友
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2_02

「話を戻したいんだけどね、ダシェル」


 ひとしきり友人に笑われてやった後、スークレヒトはこわばった顔でまじめくさって言った。


「エミディール様がおっしゃってたけど、ヴェイアが天の硬直化を防いでいるっていうのはどういう意味だ?」

「さあ。意味はわかんない」

「……あのねえ。君とラゼオス殿は、そう言ってヴェイアに会うよう、エミディール様にお勧めしたんだろう」

「会うように言ったのはラゼオスのおっさんで、俺じゃない」

「でも、君も賛成したんだろ? いいかげんなことをするなよ」


 のらりくらりしたダシェルに、スークレヒトはまたイライラしてくる。

 するとダシェルはおもむろに両手を挙げて、降参のポーズをとった。


「いいかげんに申し上げたわけではありませんよ。失礼だな」

「どういうことだ」

「調べた結果、少なくとも相関関係はあると見ている。理由はまだわからない。現在調査中だ」

「……ごめん」


 たしかに、調査はダシェルの専門だ。エミディールが彼にそれを命じても、何の不思議もない。

 スークレヒトが謝ると、ダシェルは肩をすくめて少し笑った。


「あんまり心配しなさんな。エミイはエミイなりに、何か考えがあるんだろ」

「……エミイと呼ぶなよ。エミディール様と呼べ」

「……へいへい。で、そのエミディール様がだ。いまさら、おまえに心配されるようなタマか?」

「それはそうなんだが」


 エミディールの総帥としての手腕は、他次元の天上界からも賞賛を浴びるほどだ。長い間、彼女はうまく国を治めている。

 スークレヒトが心配するようなことは、何もないのかもしれない。


「しかし……」

「しかし? 何だよ?」

「エミディール様は、ちょっと極端なところがおありだろう」


 スークレヒトの懸念は、どうしてもそこにある。

 その言葉に、ダシェルもはっとしたように顔を曇らせ、言葉を濁した。


「……そりゃ、昔はな」


 その反応に、スークレヒトは勢いづく。


「昔だけじゃないよ。ついこの間も、毎食あんぱんとかいうのを食べてたじゃないか。毎日毎日」


 するとダシェルは一転、呆れ顔だ。


「勝利の天使とあんぱんは同じレベルかい?」

「そういうわけじゃないが」

「……それくらいは食わせてやれ」


 ダシェルは冷めた目をして静かに言う。

 やはり、自分は細かすぎるのだろうか。スークレヒトは悩まないでもない。

 いや。だが。しかし。

 気を取り直して、毅然と反論した。


「だけど、あんぱんだって何が起こるかわかるもんか。何もなかったのは、たまたまだよ。あのときだって――」


 ダシェルがはじめに何を思い出したのか、スークレヒトはよくわかっていた。


 ずいぶん昔の話になるが、エミディールはかつて、これまた異次元の人間界の娯楽品、「おんらいん・げーむ」なるものに夢中になり、天界時間で三日ほど政務を忘れて没頭していたことがある。


 だが彼女が戦争ゲームに夢中になっている間に、あろうことか、地上の《愛の国》は実際に近隣諸国との交戦状態に陥った。

 それまで何の兆しもなかったにもかかわらずだ。


 スークレヒトにとっても苦い経験である。


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