表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

第6話  冥界からの来客!?

 その日の夜。


 洋館の空気が、いつもより重たかった。


「……来るな」


 監視役が、ぽつりと言う。


「なにが?」

 礼はソファに寝転びながら聞き返した。


 その瞬間――


 コンコン。


 玄関を叩く音。


 こんな時間に?


 しかも、妙にゆっくり。


 コン……コン……。


「……人間じゃない」

 監視役の声が低くなる。


 礼は起き上がった。


「冥界?」


 ドアノブが、ひとりでに回る。


 ギィ……。


 立っていたのは、

 背の高い黒ローブの影。


 顔は影で見えない。


 長い杖を持ち、空気がひやりと冷える。


「四宮 礼……いや、バロン」


 低く響く声。


「……なんだよ」


「おまえの“修行の様子”を見に来た」


 礼は、顔をしかめた。


「抜き打ち!?」


「当然だ」


 影は、ずいっと一歩入ってくる。


 そのたびに、床がしん、と鳴る。


 *


「ふむ……人間界にずいぶん染まっているな」


 来客は、洋館を見回した。


 監視役は腕を組んだまま。


「問題は起こしていない」


「本当か?」


「……だいたいは」


「だいたい!?」


 礼が叫ぶ。


「失礼だな! オレ、最近ちゃんと学校も行ってるし!」


「ほう。学校」


 影が、ふっと礼を見下ろす。


「人間の遊びにうつつを抜かしているのではないか?」


「遊びじゃない! 修行だ!」


「ゲームもか?」


「うっ」


 監視役が咳払いする。


「彼なりに、学んでいる」


「ほう……」


 来客は、杖をコツンと床に打ちつけた。


 その瞬間――


 洋館の窓が全部、バタン!と閉まった。


「うわっ! なにすんだよ!」


「人間界の空気が入りすぎている」


「換気だよそれ!」


 *


 そのとき。


「レイー!」


 外から浩太の声。


「忘れ物ー!」


 礼は凍りついた。


「まずい……!」


「人間か」

 来客が低く言う。


「見つかったらどうなるんだよ!」

「規則では、“接触禁止”だ」


「えええ!?」


 玄関のノブが回る。


「入るぞー?」


 礼は必死で来客を押す。


「隠れろ隠れろ隠れろ!」


「押すな。私は高位の――」


 ずるっ。


 黒ローブがソファに引っかかり、

 来客はもつれて転んだ。


「……いたっ」


 沈黙。


「今、“いたっ”って言った?」


「……言ってない」


 言ってる。


 *


 浩太が入ってくる。


「なんか寒くない?」


「気のせいだ!」

 礼が即答。


 ソファの裏から、ローブの端が見えている。


 有希も顔を出した。


「わあ、だれかいるの?」


「いない!」


 来客は、くしゃみをした。


「……へくしっ」


 全員が止まる。


 礼はゆっくり振り返る。


 来客は、ソファの陰で正座していた。


 ローブの中から見えた顔は――


 意外にも、丸メガネの優しそうな青年。


「……すまない。人間界のほこりは苦手だ」


「怖い感じで入ってきたくせに!?」


 *


 結局。


 来客は、浩太と有希に見つかる前に、

 監視役に引きずられて奥の部屋へ。


「で、評価は?」

 礼が腕を組む。


 来客はメモを取りながら言う。


「総評……」


 ごくり。


「バロン、思ったより普通」


「普通!?」


「もっと問題児だと聞いていた」


「誰だそんなこと言ったの!」


「冥界の噂」


「広まりすぎだろ!」


 来客は真顔で続ける。


「だが、人間界に情が移りすぎるのは危険だ」


 その一言だけは、少し重かった。


「……」


「では、報告する」


 来客は立ち上がる。


 杖を鳴らすと、空気が揺れた。


「また来る」


「もう来るな!」


「へくしっ」


 消えた。


 *


 静寂。


「……なんだったんだ、あいつ」


「査察官だ」

 監視役が答える。


「もっと怖いの想像してた」


「中身は天然だが、立場は重い」


 礼は窓の外を見る。


「……情が移りすぎる、か」


 遠くで、浩太が手を振っている。


「レイー! 明日ゲームな!」


 礼は小さく笑った。


「……うるさい」


 でも、その声はやさしかった。


 冥界と人間界。


 その間で揺れながら――

 死神の子供は、今日も少しずつ変わっていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ