第2話 ゲームで大ゲンカ!?
洋館のリビングには、大きなテレビが置いてあった。
その前で、神谷浩太はゲームのコントローラーを握りしめている。
「よーし、次は負けないぞ!」
となりには、腕を組んでふんぞり返る四宮 礼。
――いや、本名はバロンだが、今は誰も知らない。
「ふん。さっきは様子見だっただけだ」
「それ、さっきも言ってたし」
ゲームが始まった。
画面の中では、キャラクターたちが走り回り、ジャンプし、攻撃し合っている。
「ほらほら! そこだ!」
「なっ!? なんで当たらないんだよ!」
礼はボタンを連打する。
連打する。
連打する。
「おい、押しすぎ!」
「うるさい! 冥界ではこれで勝てるんだ!」
「ここ、冥界じゃないし!」
結果――
礼、また負けた。
「……は?」
画面に表示された「KO」の文字を、礼はじっと見つめた。
「やったー! 三連勝!」
浩太はガッツポーズだ。
「な、なんでだ……」
「だから言ったじゃん。ちゃんとタイミング見ないと」
礼のこめかみが、ピクッと動いた。
「人間界のゲーム、ズルくない?」
「ズルくない!」
「絶対おかしいって!」
礼は立ち上がり、コントローラーを握りしめた。
「もう一回! 今度こそ本気だから!」
「それ、毎回言ってる!」
そのとき――
「お兄ちゃんたち、なにしてるの?」
ちょこちょこと現れたのは、
浩太の妹、神谷 有希だった。
「ゲーム!」
「レイくん、負けてムキになってるんだよ」
「む、ムキになってないし!」
有希は、きょとんと首をかしげる。
「ケンカしてるの?」
「してない!」
「……ちょっとしてる」
礼は、ぷいっとそっぽを向いた。
「もういい!」
その瞬間――
バチッ!
画面が一瞬だけ暗くなり、ゲームが止まった。
「あっ……」
「え? 止まった?」
どうやら、コードが抜けたらしい。
しーん……。
「……壊れた?」
有希が不安そうな声を出す。
浩太と礼は、顔を見合わせた。
「……ごめん」
「……オレも」
二人は同時に言った。
「一緒にやろうぜ」
「……うん」
有希は、にこっと笑った。
*
その夜。
神谷家の廊下を、浩太の父親が静かに歩いていた。
手には、湯のみ。
ふと、洋館の方を見る。
――礼が、一人で立っていた。
月明かりの下。
その横顔が、ほんの一瞬――
片目だけ、きらりと光った。
「……?」
父親は、足を止めた。
(今のは……見間違いか)
次の瞬間、礼はいつもの生意気な顔に戻り、
大きなあくびをしていた。
「……気のせいだな」
父親は、そうつぶやいて歩き出す。
だがその手は、無意識のうちに、
部屋の奥にしまってある刀とお札のことを思い出していた。
一方そのころ――
「……なんか、イヤな感じした」
礼は、小さくつぶやいた。
「気のせいだ」
後ろで、監視役が低い声で言う。
「今日は、よく頑張った」
「……ゲームで負けたけどな」
礼は、ちょっとだけ悔しそうに笑った。
こうして、
となりの死神くんの人間界生活は、
少しずつ――
楽しくて、少しだけ不思議な方向へ進んでいくのだった。




