表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/16

3.僕と暁茵姉の友情の始まり――それは『親友』としてのやつ!

「暁茵姉、おはよ~」 「あら、おはよう。玖」


彼女は不意に僕の手にあるコンビニのパンに目を留め、眉をひそめた。


「朝ごはんはそれだけ? そんなパサパサなパン一つじゃ栄養なんてないでしょ! 三食きっちりバランスよく食べなさい!」


そう言うや否や、彼女は僕の手をぐいと引き、「出来の悪い後輩を指導する先輩」のような笑顔を浮かべて、反対側の屋上へと歩き出した。


「嵐!? どこ行くのー?」


女子生徒の大声が飛んでくる。たぶん、暁茵姉の友達だろう。


早朝の日差しが校舎のガラス窓を透過して屋上に降り注ぎ、そよ風が心地よい涼しさを運んでくる。二人は並んで低い塀に腰を下ろした。


屋上は静かで、たまに数人の生徒が通りかかる程度だ。暁茵姉は自分の朝食――卵チーズサンドとパイナップルパン(菠蘿包)を取り出し、惜しげもなく僕に半分分けてくれた。


「半分あげる。私、小食だから食べきれないの」 「わぁ、暁茵姉ってば優しすぎでしょ!」 「世界一の親友で、学校一のクールビューティーが、自分の朝食を僕なんかに分けてくれるなんて……うわぁ、全校生徒の嫉妬の視線で殺されそうだよ!」


暁茵姉は呆れたように言う。


「殺されるって、大袈裟ね。私はただ、可愛い後輩を全力で口説き落とそうとしてる、しがない一学生に過ぎないわよ」 「あ、ツッコミは禁止! 私が『後輩(女の子)』だって言ったら、あんたは『後輩』なの!」


僕は視線を落とし、声のトーンを重くした。


「でも……僕、君をガッカリさせるのが怖いよ。だって君が好きなのは女の子で、僕は男の子だから……」 「僕のせいで、君の指向を無理やり変えさせるわけにはいかないし」


言葉を区切り、さらに声を潜める。


「それに、僕みたいな人間、恋愛なんて縁がないよ。香港に来た目標はただ一つ――しっかり勉強して、いい大学に入って、将来いい仕事に就くことだけ」


僕は顔を上げ、遠くの空を見つめた。浮かび上がりそうな涙を必死に堪える。


「僕みたいな人間って……キモチワルイでしょ? 自分でもわかってるんだ。僕みたいなのがカバンを捨てられたり、教科書を破られたり……そういうことされるの、当たり前なんだって……」 「ごめんなさい、暁茵姉にこんな暗い話を聞かせちゃって」


暁茵姉は沈黙していた。その目元は微かに赤くなっている。彼女は声を震わせ、静かに言った。


「あんた……今まで、ずっと辛かったのね?」


彼女の瞳の奥で涙が揺れている。


「ごめんね、私、何も知らなくて……。それなのに自分のやり方で、あんたに無理強いばかりして……」


僕は慌てて手を振った。


「だ、大丈夫だよ! 暁茵姉が謝ることじゃないって。これは全部、僕自身の問題だから」 「僕が言いたいのは、もし本当に僕みたいなのと付き合ったりしたら、君の評判に傷がつくんじゃって……」


彼女は突然顎を上げ、その瞳にひときわ強い光を宿した。


「余計な心配しないで。あんたはすごいわよ。少なくともコンピュータ技術に関しては、私よりずっと造詣が深い」 「私はいつだって教科書通りの知識しか使えないけど、あんたは教科書の外にある発想を持ってる」


彼女は僕に微笑みかけ、言葉に力を込めた。


「それにね、男の子が可愛くちゃダメなんて、誰が決めたの? あんたのことをキモチワルイとか言う連中こそ、本当の変態よ! 心がねじ曲がった変態!」


彼女は体を横に向け、遠くの空を眺めながら、感慨深げに言った。


「本当に教養のある人っていうのはね、自分と違う『すべて』を受け入れられる人のことよ」 「違う性別、違う考え方、違う生き方――それらすべてをね」


一呼吸置いて、彼女は僕の方を振り返り、優しく囁いた。


「私、以前は女の子しか好きじゃなかった。だって、男なんてみんな強引で、冷淡で、デリカシーがなくて、ただの蛮勇を誇るだけの生き物だって……勝手に思い込んでたから」


「でも、あんたが私のその考えを揺るがした」


彼女の声は柔らかく、それでいて確信に満ちていた。


「あんたは可愛くて、気配りができて、繊細で……。試合に勝っても、それを鼻にかけて偉そうにしたりしない」


僕はもう我慢できなかった。唇が震え、ついに涙が決壊する。


「暁茵姉ぇ……うわぁぁ……ッ」


僕は彼女の胸に飛び込んだ。肩の震えが止まらない。彼女は優しく僕を抱きしめる。 屋上には今、互いを救済し合う二人だけが残されていた。


この光景は、傷ついた二つの魂の交錯であり、真摯な感情と無限の包容力が芽吹いた瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ