13.なんて綺麗なんだろう、マカオで暮らせたらどれほど幸せだろう……
『あなたの……幸せを願ってる』
この五文字は、真っ赤に熱せられ、猛毒を塗られた五本の鋼鉄の針のように、僕の鼓膜から頭蓋骨を貫通し、僕の魂を『絶望』という名の十字架に死ぬほど強く釘付けにした。
暁茵姉が背を向けて去っていった瞬間、世界中のすべての光、すべての音、すべての温度が、彼女の決然とした背中と共に吸い取られてしまったかのようだった。
屋上に吹き荒れる冷たい狂風が僕の肺を満たしたが、酸素を一ミリももたらすことはなく、残されたのは窒息しそうな、希薄な真空だけだった。
僕は粗いコンクリートの床に崩れ落ち、声を上げて泣いた。
その泣き声は嗄れて、途切れ途切れで、まるでトラバサミに足を挟まれた瀕死の野獣が、夜に覆われた空虚な荒野で発する、最後の無念と苦痛に満ちた哀号のようだった。
涙が鼻水や唾液と混じり合う。
誰かの前でこれほど無様に、これほど……脆い姿を晒したのは初めてだった。
だが、もうどうでもよかった。
僕の世界はあの瞬間、徹底的に、取り返しのつかないほどに崩壊してしまったのだから。
どうやって寮に戻ったのかは覚えていない。
その道のりは、一光年もあるように長く感じられ、同時に一瞬の出来事のようでもあった。
僕の体はすべての糸を抜かれた哀れな操り人形のように、わずかに残された惨めな慣性だけで動いていた。
寮の中は死のように静まり返っていた。
僕は電気もつけず、実体を持ったかのように濃密な闇の中へ沈んでいくに任せた。
闇は、優しく冷たい羽毛布団のように僕を包み込み、一抹の哀れで偽りの安心感を与えてくれた。
『あなたたち、『した』って……どうやらそれも事実のようだし』
暁茵姉のあの重さのない、温度のない声が、僕の脳内で繰り返し、残酷に反響する。
彼女が地面に投げ捨てたあの封を切られたビニール袋が、永遠に癒えることのない血塗れの傷口のように、僕の網膜を焼き続ける。
彼女は思ったのだ……僕と林姉が……。
この認識は、どんな直接的で暴力的な傷害よりも僕を苦しめた。
どう説明すればいい? どう説明できる?
僕は林姉が自ら編み上げた、完璧な論理の閉回路に閉じ込められている。
僕のすべての弁解は、暁茵姉へのさらなる深い傷害となる。
僕のすべてのもがきは、彼女をより深い絶望へと突き落とすことになる。
僕は……徹頭徹尾、卑劣で、救いようのない悪人になってしまった。
自分が最も大切にしていた、あの手の届かない星を自らの手で空から摘み取り、そして、粉々に叩きつけた……ろくでなしに。
闇の中で、スマホが唐突に震えた。
璃からのメッセージだった。
『クソお兄、今週末暇? 母さんが久しぶりにお兄ちゃんに会いたいって。時間があったら家に連れてきてご飯食べさせろって言ってる』
家……。
その一文字は、微弱で、遠く、今にも闇に飲み込まれそうな蝋燭の火のように、僕の目の前で小さく揺らめいた。
僕は震えながら、涙ですっかり冷たくなり、強張った指先で、画面に一文字一文字打ち込んだ。
『璃、今週末……僕たち、マカオに行かないか?』
僕は逃げ出したかった。
この学校から、この屋上から、そして僕のすべての苦痛を幽閉する巨大で冷たい孤島である香港から。
僕は……自分自身が誰なのかを、自分がどれほど許されざる罪を犯したのかを、一時的に忘れさせてくれる場所を見つける必要があった。
そして、『虚構』と『虚飾』で世界にその名を知られる都市、マカオこそが、今の僕が思いつく唯一にして、最も完璧な……避難所だった。
週末の早朝。
窓の外の深センは、朝の光の中でゆっくりと目覚めようとしていた。
普段なら見慣れすぎて何の感慨も湧かない街並みが、今の僕の目には、吐き気を催すほどよそよそしく、疎遠なものとして映った。
すべての高層ビルが、冷たい墓標のように見える。
すべての歩行者が、顔のない、僕とは無関係な亡霊のように見える。
璃は僕の隣に座っていた。彼女はまるで熟れたばかりの、果汁たっぷりの蜜柑のように、青春と活力の甘い香りを放っていた。
彼女はこれから始まる旅行に、期待を膨らませていた。
彼女は楽しそうに、ネットで調べたマカオの様々なグルメや観光スポットを僕に共有してくれた。
「お兄、調べたんだけど、マカオに着いたら、まずあのアンドリューのエッグタルトを食べに行かなきゃ! 私たちが普段食べてるK〇Cのとは全然レベルが違うらしいよ! それからそれから、大利来記のポークチョップバーガーも、毎日数量限定だから、遅く行ったら食べられないんだって!」
彼女の瞳はキラキラと輝き、清らかな泉に浸した二粒の黒葡萄のように、純粋で、一点の曇りもない喜びを放っていた。
対して僕は……。
うん……そうだね……。
僕の魂の半分は、数日前のあの冷たい、絶望に覆われた屋上に置き忘れてきてしまった。
僕の体はここに座っているけれど、心は燃料を燃やし尽くした冷たい隕石のように、果てしない暗黒の宇宙を、あてもなく漂っているだけだ。
璃はすぐに僕の異変に気づいた。
彼女はあの楽しげなおしゃべりを止め、横を向き、その澄んだ、一抹の心配を帯びた瞳で静かに僕を見つめた。
彼女は問いたださず、無理強いもしなかった。
ただ手を伸ばし、彼女のイヤホンの片方を、そっと僕の耳に入れた。
イヤホンからは、僕がとてもよく知っている、ある古いアニメの、優しく切ない挿入歌が流れてきた。
その緩やかな、流水のようなピアノの旋律が、優しい手となって、過度の緊張で切れそうになっていた僕の神経をそっと撫でてくれた。
「クソお兄」
彼女は頭を僕の肩にそっと預け、独り言のように小さな声で言った。
「……また、何かあったの?」
僕の目頭が、熱く潤んだ。
僕は顔を背け、窓の外の果てしない、薄墨色の海を眺めた。
海面には薄い紗のような霧が立ち込め、遠くの水平線をぼかしていた。
ついにマカオの地を踏んだ時、潮の匂いと亜熱帯特有の湿った粘り気のある空気が顔に吹き付けてきた。
香港のあの四六時中存在する、息詰まるようなハイテンポとは異なり、マカオの空気にはより気だるげで、より……金と欲望にまみれた気配が漂っているようだった。
僕たちはバスに乗り、マカオの跨海大橋を渡り、陽光の下で非現実的な光を放つ、無数の鉄筋コンクリートとガラスのカーテンウォールで構成された現代のバベルの塔――コタイ・ストリップへと向かった。
あの伝説的な、実物大で再現されたヴェネツィアの鐘楼や、延々と続くヨーロッパの宮殿のような壮麗な建築群が、初めて完全に、余すところなく僕の目の前に現れた時、僕は思わず息を呑んだ。
それは……現実を超越した、不条理に近い壮麗さだった。
この世に実在する建築物というよりは、ある狂った、無限の富と想像力を持つ神がレゴブロックで組み上げた、巨大で虚構の夢境のようだった。
ザ・ヴェネチアンのロビーに入ると、その非現実感は極致に達した。
足元は鏡のように磨き上げられ、天井画を映し出す冷たい大理石の床。
頭上は高くそびえ、ルネサンス様式の壁画で埋め尽くされた、金碧輝く円形ドーム。
耳元には世界各地から来た、様々な言語を話す観光客たちの入り混じった、興奮した喧騒。
僕は巨人の国に迷い込んだ、ちっぽけなガリバーになったような気分だった。
周囲のすべてがあまりに壮大で、あまりに……非現実的だった。
そしてエスカレーターに乗って三階のグランド・カナル・ショップスに着いた時、僕はようやく理解した。なぜ人々がここを『沈まぬ太陽の夢の都』と呼ぶのかを。
頭上には、白い雲が浮かぶ紺碧の『空』が広がっていた。
その空の青さはあまりに純粋で完璧で、まるでアニメからそのまま切り取った一コマのようだった。
陽光が『雲間』から優しく降り注ぎ、僕の顔に柔らかな光の斑点を落とす。
足元には蛇行する碧緑の『運河』。
運河の両岸には、ヨーロッパ情緒あふれる『古き良き建築』が並んでいる。
壁には斑な、わざと古びて見せた痕跡がある。
バルコニーには、今を盛りと咲き誇る真っ赤なゼラニウムの鉢植えが置かれている。
様々な高級ブランドの店がこれらの『古い建築』のファサードの下に隠れており、ショーウィンドウには最新の、キラキラと輝く商品が陳列されている。
僕は顔を上げ、頭上のあの永遠に雨が降らず、永遠に日が暮れない、完璧で偽りの蒼穹を呆然と見上げた。
強烈な、言葉にできない不条理感と、一抹の奇妙で病的な『親近感』が、僕の心の中に湧き上がった。
ここは、僕が今置かれている人生と、なんと似ていることか。
同じように、無数の金と心血を注いで積み上げられた、一見きらびやかで完璧な舞台。
同じように、偽りの永遠の『陽光』の下で上演される、一見美しく、その実は……空虚な芝居。
僕もまた、こんな巨大で偽りの舞台の上で、自分自身さえ馴染みのない役を演じているのではないか?
「お兄! 見て! ゴンドラだよ! 私たちも乗ろうよ!」
璃は興奮して僕の腕を引き、そう遠くない船着き場を指差した。その目は期待に輝いている。
彼女の笑顔を見て、僕の心の陰鬱も少し薄まった気がした。
「いいよ」
僕は彼女に微笑みかけた。それはここ数日で初めての、心からの微笑みだった。
もしかしたら、一時的にこの盛大で偽りの夢に溺れるのも、悪いことではないのかもしれない。
少なくとも、この永遠に日が沈まない偽りの空の下では、現実世界のあの息詰まる重い闇を、一時的に忘れることができるのだから。
ザ・ヴェネチアンの永遠の夕暮れから抜け出し、クリスタルのシャンデリアが吊るされた長い屋内回廊を抜けると、僕たちはまた別の夢境――ザ・パリジャン・マカオに入った。
ザ・ヴェネチアンが盛大で古典的なイタリア・オペラだとしたら、ザ・パリジャンは軽快でロマンチックなフレンチ・シャンソンだ。
ホテルのロビーは、ギャラリー・ラファイエットの古典的なデザインを完璧に復刻していた。
高さ35メートル、精巧な壁画で埋め尽くされたドームは、燦然と輝くクリスタルのシャンデリアに照らされ、目が眩むような壮麗さを呈していた。
生き生きとしたギリシャ神話の彫刻と、複雑な紋様が刻まれた雄大で壮麗な大理石の柱が、古典的かつ非凡な芸術的雰囲気を醸し出している。
そしてホテルの正面玄関を出て、パリのエッフェル塔の二分の一スケールで建造された、陽光の下で金属的な光沢を放つ巨大な鉄塔を見た時、その視覚的衝撃は頂点に達した。
「わあ……」
璃は心からの感嘆の声を漏らした。
彼女の気持ちは分かる。
ロマンスに対してアレルギー持ちのつまらない僕でさえ、この『愛の都』を象徴する気勢の雄大な建築を見た時、心の中に思わず……奇妙な波紋が広がったのだから。
暁茵姉……。
もし君だったら……。
僕たちも、周りの親密なカップルたちのように、鉄塔の下で甘い雰囲気のツーショットを撮っただろうか?
僕たちも、あの伝説の『愛の南京錠の橋』に行って、二人の名前を刻んだ錠前を掛けたりしただろうか?
この考えは、細く鋭い針のように、軽く、しかし正確に僕の心臓を刺した。
馴染みのある、酸っぱく痛む感覚が、一瞬で胸腔に広がった。
「クソお兄、また何ボケっとしてんの?」
璃は不満げに唇を尖らせ、肘で僕の腰を軽く小突いた。
「行くよ! お腹空いた! 美味しいもの食べに行こう!」
彼女は有無を言わせず僕の冷たい手を取り、そう遠くないフードコートへと走り出した。
彼女の手は、温かく力強かった。
その温もりは皮膚を通して、少しずつ僕のとっくに凍りついた心臓に染み込み、凝結したばかりの薄い氷の層を……ほんの一角だけ、溶かした。
僕たちはザ・パリジャン・リゾートの三階にあるフードコートの窓際の隅に席を取った。
ここの内装はパリの街角のオープンカフェを模しており、頭上には同じく本物そっくりの、紺碧の人工空が広がっている。
周りは各地から来た観光客で、空気には様々な食べ物の香りと、異なる方言が入り混じった騒がしい喧騒が満ちている。
璃は念願のポルトガル風チキンライスを注文し、僕は適当にワンタン麺を頼んだ。
料理を待つ間、璃は頬杖をつき、行き交う人々を眺めていた。その好奇心に満ちた目は二台の高速レーダーのように、僕たちのそばを通り過ぎる一人一人をスキャンしている。
「クソお兄、ずっと気になってたんだけど」
彼女は突然僕の方を向き、大真面目な顔で尋ねた。
「中国本土の人、香港の人、マカオの人って、どうやって見分けるの?」
僕は一瞬固まった。彼女がそんな……技術的な質問をしてくるとは思わなかったからだ。
箸を置き、彼女の真似をして頬杖をつき、勿体ぶって笑ってみせた。
「簡単に見分けられるよ」
僕は咳払いをし、声を潜め、秘伝の奥義を伝授するかのような口調で彼女に言った。
「中華人の言語のことを、何て呼ぶ?」
「中国文字でしょ」
璃は即答した。
「文字じゃなくて、話し言葉、中国共通語のことだよ! その言語を何と呼ぶ?」
「中国標準語」
「それでいい」
君は『中国標準語』という言葉を使った。これで君が本土、香港、マカオのいずれかの人間だと確定できる。
「へえ?」
璃の目が輝き、身を乗り出して強い興味を示した。
「じゃあ台湾の人は? それにシンガポールやマレーシアの中華人は?」
「一般的に、シンガポールやマレーシアの中華人は『中華語』と呼ぶし、台湾人は『国語』と呼ぶ習慣がある。この単語一つだけで、大半を篩い落とせるんだ」
「へぇー……」
璃は口を小さく『O』の形に開けた。
「で、その次は?」
「次は、具体的な状況を見るんだ。広東語は話せる?」
「話せるよ」
璃はすぐに背筋を伸ばし、得意げな顔をした。
「私の広東語はクソお兄より上手いもん」
「はは、確かにね」
僕は吹き出した。
「君は広東語が話せる。広東省には広東語を全く話さない都市もたくさんあるから、君がそれらの都市の出身じゃないと判断できる」
「君はこの言語を『広東語』と呼んだ。これは君が広西チワン族自治区の人や、広東の古い広府文化圏の人である確率が低いことを示している――彼らは自分たちが話すのは地方の言葉だと言うからね。例えば広州人は広州話や広府話と言うし、東莞人は東莞話と言う」
「もちろん、状況によっては『白語』とも呼ぶけどね。今の状況から判断すると、君は深セン、香港、マカオのいずれかの人間だ」
僕は一拍置き、わざとじらしてから、彼女が机の上に置いた、ピンク色で可愛い形の『Power Bank』を指差した。
「机の上のあれ、何?」
「パワーバンク(充電宝)でしょ」
璃は瞬きをし、意味が分からないといった様子だ。
「これで正解だ」
僕は魚を盗んだ猫のように笑った。
「君は広東人、それも深センの人だ」
「え? なんで? 根拠あるの?」
璃は完全に好奇心をそそられ、机に突っ伏さんばかりになった。
「もちろんあるよ」
僕はゆったりと説明した。
「まず『中国標準語』。この言葉で基本的に本土と香港・マカオ地区に絞られる。次に『広東語』。一般的に、香港人とマカオ人、そして香港文化の影響を深く受けた深センの地元民は、習慣的にそう呼ぶ。最後に、机の上のこれだ。台湾人はこれを『パワーバンク(行充)』と呼び、香港人は『尿バッグ』、マカオ人は『乳母』、そして本土の人は『パワーバンク(充電宝)』と呼ぶんだ。この三つの言葉だけで、十中八九、君の身分を特定できる」
「わあ!」
璃の目から星が飛び出しそうだ。
「確かに! その確認方法、簡単で早いね。お兄すごいや!」
「じゃあもし、みんなが『中国標準語』を話して、『広東語』を話さなかったら?」
彼女はさらに追及した。明らかにこの言語学的な探偵ゲームに夢中になっている。
「ならもっと簡単だ。一発で特定できる」
僕は彼女の机の上のパワーバンクを指差した。
「机の上にあるのは何だ?」
「わあ、確かに!」
璃は合点がいったようで、僕を見る目がさらに尊敬に満ちたものになった。
その可愛い様子を見て、僕の心の中に久しぶりの、温かい暖流が湧き上がった。
こういう感じ、本当にいいな。
夜の帳が、ついに下りた。
もちろん、コタイ地区にとって、昼と夜の境界線など、消えることのないネオンサインによってとっくに曖昧にされている。
ホテルの部屋の巨大な床から天井までの窓から外を眺めると、世界全体が光と影で構成された、流れるような彩りの、煌びやかな海に変わっていた。
遠くでは、ザ・ロンドナーの時計塔が、夜色の中で荘厳かつ典雅な金色の光を放っている。近くでは、ザ・パリジャンの鉄塔が五色の色彩を変化させ、宝石を散りばめた巨大な杖のように、天を指している。
無数のスポットライトが、黒いベルベットのような夜空で交錯し、巨大な、絶えず形を変える光の網を編んでいる。
コタイ・ストリップ全体が、人間界で眠っていた銀河が目覚めたかのようだ。豪華で、煌びやかで、動悸がするほど美しく、そして……一抹の寒気を覚えるほど美しい。
僕たちが泊まるスイートルームは50平方メートルもあり、寝室、リビング、バスルームの三つの部分に分かれていた。
サンクンリビングには柔らかく快適なソファが置かれ、巨大な液晶テレビがつまらないローカルニュースを流している。
バスルームには、冷たく滑らかな、美しい紋様の大理石が敷かれ、巨大なバスタブは、僕が三、四人入れそうなほどだ。
これらすべてが、僕には不釣り合いな夢のように豪華だった。
僕と璃は、人を丸ごと飲み込んでしまいそうなほど柔らかいリビングの絨毯の上にあぐらをかき、下で買ってきたばかりの、まだ湯気の立つエッグタルトの箱を囲んでいた。
「お兄、ねえ……」
【璃】はエッグタルトを一口齧った。サクサクのパイ生地が『サクッ』と軽い音を立てる。彼女の口元に、金色のカスタードクリームが少しついた。
「下で賭け事してる人たちって、本当に……お金勝てるの?」
彼女の質問に、僕の口の動きが止まった。
僕は顔を上げ、窓の外の虚構の、金銭で積み上げられた繁栄を見て、長く沈黙した。
そして振り返り、璃の純潔無垢な、まだこの世界への好奇心に満ちた目を見て、かつてないほど真剣な口調で彼女に言った。
「璃、覚えておけ。賭け事っていうのは、面白いもんだ」
「勝つことのほうが、負けることよりずっと恐ろしいんだよ」
璃は呆然とした。僕がそんな……脅しのような言葉を言うとは思っていなかったらしい。
僕は手のエッグタルトを置き、手を拭き、この機会に彼女に……もしかしたら彼女の一生に影響を与えるかもしれない授業をすることにした。
「まずは、基本無料だけど課金要素のあるスマホゲームをやってみるといい」
そう言いながら、脳裏にはなぜか、あの人の天使のような、優しい笑顔が浮かんでいた。
「もしゲームの中で、お前がすごくすごく好きなキャラが出たとして、そのキャラを手に入れるために『ガチャ』にハマるかどうか見てみるんだ」
「もしどうしてもそのキャラが欲しくて、そのために大量に課金して、当たった後に『運が超良かった、次も続けよう』なんて思ったら……璃、お前は今後、『くじ引き』の性質を持つものには一切手を出しちゃダメだ」
「でももし当たって『運が良かったな、ゲーム楽しかった』程度で、外れてもそこまで悔しがらなければ、お前のメンタルはまだ正常だ」
僕の声は静かだが、断固とした力強さを持っていた。
「まず、僕は賭博を強く勧めない。次に、もし本当に賭けるとしても、絶対にゲーム感覚で、勝っても負けても一、二回でやめることだ」
「負けたら運が悪かっただけ。勝ったらまぐれ当たり。でも、まぐれ当たりは一回きりだ。もし二回目が起きたら、それは異常事態で、必ず裏がある!」
「まずはやらずに、自分のメンタルをテストしてみるのもいい。賭博をしてる知り合いを見に行くんだ。そいつが勝った時、心の中でどう思うか?」
「もし『運がいいね、おめでとう』と思えるなら、お前はギャンブル依存症になる確率は低い」
「でももしその時、ほんの少しでも『私も一、二回やってみようかな、勝てるかもしれない』なんて考えがよぎったら、絶対に止まれ! 直ちに損切りだ! すぐに自分に言い聞かせるんだ――私は一生、『有料のくじ引き』活動には関わらない、ってね!」
「もし賭けて、ずっと負けてるならまだマシだ。でも一度でも勝ってしまったら、たとえ一万元つぎ込んで千元しか勝てなくても、お前はその巧妙に設計された罠に落ちて、抜け出せなくなる」
「正規のカジノの胴元は、決してお前を騙すようなイカサマはしない――なぜなら全く必要ないからだ。賭博自体が、必ず負ける数学ゲームなんだ。少し頭のある人なら、数学的アルゴリズムを通じて、各種ギャンブルゲームの勝率の具体的な数値を割り出せるし、賭ける回数が増えれば増えるほど、負ける確率も無限に100%に近づくことすら計算できる」
「だから、カジノがイカサマをしてると思う奴と、自分は必ず勝ち続けられると思う奴には、一つの共通点がある――数学が苦手ってことだ」
「そしてこの二種類の人間は、実はどちらも非常に危険だ。カジノのイカサマを正義面して語る奴も、一度ギャンブルに似た活動で当たって甘い汁を吸えば、徐々に自分の初心を忘れ、最後には自分がかつて最も軽蔑していた『ギャンブル狂』と同じ末路を辿る」
「科学的理論を使って『賭ければ必ず負ける』と証明できるようになれば、もう賭けようなんて思わなくなる。なぜなら最初に勝った金なんて、ただの『撒き餌』――すべての悲劇の始まりに過ぎないからだ」
「カジノの活動だけが賭博じゃない。僕たちの現実生活において、宝くじも賭博だし、確信のない個人投資家が株をやるのも一種の賭博だ。絶対に気をつけろ!」
「だから、生活の中でこういうことを見かけたら、必ず遠ざかることだ。自分の人生と未来を賭けないことが、最良の選択なんだよ」
一気に言い終え、僕は喉が少し渇いたのを感じた。
少し緊張して璃を見た。僕のこの……重すぎる話が理解できたか分からなかったからだ。
しかし、璃の反応は僕の予想を完全に裏切った。
彼女は不耐煩な様子も困惑した様子も見せず、逆にプッと吹き出したのだ。
「クソお兄、そんなに言わなくても分かってるってば」
彼女は最後のエッグタルトを手に取り、口に放り込んで、もごもごと言った。
「私、そういうのに全然興味ないもん。代金と引き換えに現物が手に入らないものは、基本的にリスクがあるでしょ。知ってると思うけど、私、課金制のネットゲームなんてやらないし、お兄といる時は画面分割の二人用ゲームしかしないし、『BUGPM』とか『AOVM』みたいなゲームはやらない。それに、くじ引きイベントにも全く興味ない。子供じゃないんだから、それくらいの理屈は分かってるよ」
言い終わると、少し照れくさくなったのか、頬をほんのり染めてうつむき、僕たち二人にしか聞こえない、蚊の羽音のような声で小さく呟いた。
「だってクソお兄が小さい頃から私と一緒にファミコンゲームで遊んでくれたから、こういう習慣がついたんじゃない……」
「小さい頃、お兄言ってたじゃん。多くのゲームは、実はスロットマシンの変種だから、将来絶対に手を出すなって……」
「それに『従来型宝くじ < スクラッチ < 課金ネットゲーム < カジノ < ネット賭博』っていうリスクレベルの公式まで教えてくれたの、お兄は覚えてないかもしれないけど、私ずっと覚えてるんだから……」
僕の心は、その瞬間、巨大で、温かく、酸っぱい感情に完全に飲み込まれた。
なんだ、僕自身も知らないうちに、かつて僕が言った言葉、僕がしたことは、とっくに小さな、強靭な種となって、璃の心の中で根付き、芽吹き……彼女の未来の人生におけるすべての雨風を防ぐに足る、大樹へと成長していたのか。
なんだ……僕という『クソお兄』も……役立たずってわけじゃなかったんだな。
僕は手を伸ばし、小さい頃と同じように、優しく彼女の髪を撫でた。
一泊二日のマカオ旅行は、短く絢爛な、非現実的な夢のように、あっという間に終わった。
バスに乗り、港珠澳大橋の平坦で広い橋の上を走っていると、僕の気分も、絶えず後ろへと流れていく見渡す限りの海の景色と共に、少しずつ再び谷底へと沈んでいった。
マカオという金とネオンで積み上げられた、偽りの『避難所』は、すでに遥か彼方に置き去りにされた。
そして前方には、香港という見慣れた、無数の摩天楼で構成された、鋼鉄のジャングルのようなスカイラインが、海の向こうでますます鮮明になってきている。
僕のすべての苦痛と絶望を幽閉する、冷たい孤島が、僕を待っている。
僕は、家に帰るんだ。
いや……自ら網にかかりに行くんだ。
予定では、香港口岸でバスを降り、そのままクロスボーダーバスに乗り換えて深センに戻るはずだった。
しかし、入境ロビーを出ようとしたその時、僕は魔が差したように足を止めた。
振り返り、隣の妹に言った。
「璃」
「僕たち……深水埗に行ってから、深センに帰ろう」
「深水埗?」
璃は困惑した表情を浮かべた。
「そこに行って何するの? あそこって電子製品とか売ってる場所じゃないの?」
そう、深水埗。
自分でも、なぜ突然そこに行きたくなったのか分からない。
もしかしたら、自分をリラックスさせてくれるあの『サイバーパンク』めいたガジェットたちに触れたかったのかもしれない。
あるいは、僕の潜在意識が、密かに何かを期待していたのかもしれない。
深水埗駅のB2出口を出た時、マカオとは全く異なる、より雑多で、より鮮烈な気配が、一瞬にして僕たちを飲み込んだ。
ここには広い道路も、壮麗な建築も、洗練されたショーウィンドウもない。
ここにあるのは、狭く、混雑し、両側に五色の、巨大で古ぼけた看板が吊るされた通りだけだ。
空気中には、屋台から漂う油煙の匂い、漢方薬局から発散される薬草の匂い、そして……人々の汗の匂いが混じり合った、複雑で独特な臭気が充満している。
耳元には、露天商たちが訛りの強い広東語で大声で売り込みをする声、古い室外機が発する『ブーン』という轟音、車が通り過ぎる時に鳴らす耳障りなクラクションが響く。
福栄街は『おもちゃ街』と呼ばれ、無数のおもちゃ屋が、珍しく安価なおもちゃを山のように積み上げ、無数の子供たちと、童心を忘れない大人たちを引きつけている。
そして僕たちの目の前にある鴨寮街は、この『混沌』の美学を、極致まで発揮していた。
通りの両側には、様々な電子製品や部品を売る店や露店がびっしりとひしめき合っている。
ここはまるで巨大な、露天の電子ゴミ回収所のようであり、同時にギークやDIY愛好家たちの、都市の深部に隠された秘密の楽園のようでもある。
ここのすべては、あまりに粗雑で、あまりに……飾らない。
だがここのすべては、またあまりにリアルで、あまりに……生命力に満ちている。
僕が璃の手を引き、道を渡って向かい側にある古い携帯電話を見に行こうとしたその時、僕の足が猛然と凍りついた。
道の向かい側、深水埗駅の行き交う人でごった返す出口に……心臓が止まるほど見慣れた人影が見えた。
彼女だ。
暁茵姉。
彼女はただ一人、賑やかな人混みの中に孤独に立っていた。
生徒会長の身分を象徴するあのかっちりとした制服は着ていない。
着ているのはごく普通の、洗いざらしで少し白っぽくなったグレーのパーカーと、ゆったりとしたスウェットパンツだけ。
いつも一分の隙もなく手入れされていた、柔らかなピンク色の長髪は、今は無造作に肩に散らばり、毛先が風に吹かれて少し乱れている。
顔には、化粧っ気がない。
いつも気だるげな自信を漂わせ、実在の人間とは思えないほど美しかったその顔は、今、血の気がなく蒼白だった。
目の下には、薄暗いクマができている。
いつも秋の湖のように澄んでいた瞳は、今、空洞で、散漫で、すべての焦点を失っていた。
彼女はただぼんやりと立っていた。周囲の喧騒と活力に満ちた世界から完全に隔絶された、道に迷った、無力な魂のように。
彼女は……どうしてこんなところに?
僕の脳は、一瞬で真っ白になった。
僕の体は、意志を裏切った。
意識する前に、僕は璃の手を離し、狂った野獣のように、なりふり構わず車流の絶えない道路を突っ切っていた。
耳をつんざくブレーキ音と、運転手の怒りの罵声が背後で響く。
だがもう聞こえなかった。
僕の世界には、彼女しか残っていない。
人混みの中に立ち、今にも全世界の悲しみに飲み込まれてしまいそうな、脆く、孤独な……暁茵姉だけ。
僕は彼女の前に駆け寄り、急激な疾走で肩で息を喘がせた。
彼女は、僕の到来に気づいていないようだった。
相変わらず、空虚な目で茫然と前方を見つめている。
「暁茵姉……」
僕の声は、興奮と心痛で激しく震えていた。
僕の声を聞いて、彼女の長いまつ毛が、ようやく微かに、震えた。
彼女はゆっくりと顔を向け、焦点の定まらない目を、僕の顔に合わせた。
僕だと認識した時、彼女の目には、驚きも、怒りも、さらには……一欠片の波紋さえなかった。
その眼差しは、まるで……自分とは無関係な、見知らぬ……空気を見ているようだった。
そして、彼女は背を向け、歩き出し、去ろうとした。
「ごめんなさい!」
僕はほとんど無意識に手を伸ばし、彼女の冷たく、細い手首を死に物狂いで掴んだ。
「暁茵姉、ごめんなさい!」
僕の声は、絶望で嗄れていた。
「僕と林欣の間には、何も起きてない! 僕も彼女と付き合うなんて一度も承諾してない! 僕たちは何もしてない! すべて……すべて、嘘なんだ!」
僕の言葉は、死水に投げ込まれた石のように、ついに彼女の死に絶えていた瞳の中に一筋の……微かな波紋を呼び起こした。
彼女は足を止め、ゆっくりと振り返った。
彼女の目には、いつの間にか涙がいっぱいに溜まっていた。
その涙は眼窩で頑なに回っていたが、強情にも流れ落ちようとはしなかった。
彼女は僕を見ていた。その真っ赤な目には……僕には読み解けない、極めて複雑な、苦痛、疑い、そして……最後の一筋の哀れで、卑小な希望が入り混じっていた。
彼女は朱唇をわずかに開き、周囲の喧騒にかき消されそうなほど軽い、少しかすれた、震える声で、小さく尋ねた。
「……本当なの?」
僕の心は、その瞬間、砕けた。
僕は全身の力を込めて、深く頷いた。
次の瞬間、彼女の涙に満ちた瞳の中の、最後の一筋の哀れで脆い防衛線が完全に崩壊した。
涙が、決壊した洪水のように溢れ出した。
彼女は猛然と僕の懐に飛び込み、震える冷たい両腕を伸ばし、僕の首を死ぬほどきつく抱きしめた。
そして、涙で濡れた梨の花のような顔を上げ、冷たく、柔らかい、涙の塩辛い味がする唇で、僕の唇に激しく口づけをした。
このキス。
それは絶望に満ち、委屈に満ち、そして……失ったものを取り戻したような、狂気じみた、略奪に近い独占欲に満ちていた。
彼女の舌先は、強引に僕の歯列をこじ開け、口腔内を狂ったように掃討し、絡みついた。
僕は彼女の涙の塩辛さと、彼女特有の、あの清らかな甘さの中に一筋の花の香りを含んだ、僕の魂を夢中にさせる気配をはっきりと味わった。
僕の脳内で『ドカン』と音がして、絢爛たる白い花火が炸裂した。
僕は呼吸を忘れ、思考を忘れ、僕たちが今深水埗の人通りの多い、喧騒の街頭にいることさえ忘れた。
僕の世界には、彼女しか残っていない。
彼女の唇の柔らかさと、気配の甘さと、密着した胸を通して伝わってくる、あの力強く、失って戻ってきた……心臓の鼓動だけ。
時間は、その瞬間、完全に凍結されたかのようだった。
このキスは、とても長く、長く続いた。
僕たちがこのまま天地が果てるまで、世界の終わりまでキスをし続けるのではないかと錯覚するほど長く……。
彼女はようやく、名残惜しそうに僕の唇から離れた。
彼女は頭を深く僕の首筋に埋め、重傷を負ってようやく頼れる港を見つけた哀れな小動物のように、抑圧された、壊れた、胸を引き裂くような嗚咽を漏らした。
僕はただ手を伸ばし、泣いて激しく震える彼女の華奢な体を強く抱きしめ返し、何度も何度も、彼女の耳元で、枯れた声で蒼白で無力な謝罪を繰り返すしかなかった。
「ごめん……暁茵姉……ごめん……」
この遅れてきた、苦痛と涙に満ちた再会が、こうして……悲しくとも、希望に満ちた形で幕を閉じるのだと僕が思ったその時。
極度の衝撃と……信じられないという感情に満ちた、甲高い声が、平地の雷鳴のように、僕の背後で炸裂した。
「ら――ランランランラン……嵐暁茵お姉さんが……クソお兄の……か、かかかか彼女ぉぉぉぉ??!」
僕は固まった。
暁茵姉も、固まった。
二人は、ゆっくりと後ろを振り返った。
道路の向こう側――僕の妹——洛璃が、卵が一つ入りそうなほど大きく開いた口を片手で死に物狂いで押さえ、もう片方の手で震えながら僕たちを指差していた。
彼女のいつもハムスターのように澄んで明るい瞳は、今、過度の衝撃で見開かれ、銅鈴のようになっていた。
彼女の顔には……『私の世界観が完全に崩壊した』という、不条理な表情が書いてあった。
そして、彼女は……まるで宇宙人を見るような、極度の困惑と不可解さに満ちた目で僕を見て、魂の深淵からの、最終的な質問を発した。
「あ、あ、あんた……彼女がなんでクソお兄なんかに惚れるわけ!?」




