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空に立つ翼 ― 天翼族の少女は殴り倒す ―  作者: てん


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55/58

第55話 世界が“敵意”を見せる

 風が、止まった。


 次の瞬間、

 逆に流れ出す。


 音が遅れ、影が先に動き、

 地面が“拒む”。



《ステータス・オーバールック》

世界反応:敵意

分類:環境主導型干渉

対象:外来存在(継ぎ目通過者)



「……来たね」


 アリエスは、深く息を吸った。


「さっきまでとは、違う」


 レオンが、盾を構える。


「敵が“現れる”んじゃない。

 世界が、敵になる」


 その言葉を裏付けるように、

 空間が軋んだ。



 足元の地面が、

 “存在を主張”し始める。


 踏み込むたびに、

 反発が返ってくる。


「……歩きづらい」


 リィアが、歯を食いしばる。


「拒否されてる」


 セリスが、即座に判断する。


「この世界、

 私たちを“異物”として認識した」


 カイが、解析を重ねる。


「敵意は、個体じゃない。

 領域全体から来てる」


「つまり」


 ミラが、短く言う。


「殴る相手、いない?」


 アリエスは、首を振った。


「いるよ」


 拳を、地面へ向ける。


「世界そのもの」



 次の瞬間、

 空気が刃になった。


 ――ザァッ!!


 見えない斬撃が、

 七人を同時に襲う。


「受ける!」


 レオンが、前に出る。


 盾が、

 概念的な斬撃を受け止める。


 ――ギィ……ン……


 軋む音。


「……重い」


「今、支援!」


 エルナが、

 世界干渉に対応した回復を流す。


 セリスが、

 空間安定魔法を展開。


「一時的に、

 通れる状態にする!」


 足元が、

 ほんの一瞬、軽くなる。


「今だ!」



 アリエスが、

 踏み出した。


 拳を、

 何もない空間へ叩き込む。


 ――ドンッ。


 音は小さい。


 だが――

 反発が、返ってきた。


 世界が、揺れる。


「……効いた」


 アリエスは、目を細めた。


「拒否してるけど、

 触れられる」


 それは、

 完全な排除ではない証拠。



 世界の敵意が、形を持ち始める。


 地面から、

 輪郭だけの“壁”が立ち上がる。



敵性反応:ワールド・リジェクター

Lv:測定不能

特性:

・外来排斥

・形状可変



「来る!」


 リィアが、前へ。


 だが、

 攻撃は、戻される。


 ――ガッ!


「……押し返された!」


「正面突破は、拒否される」


 カイが、叫ぶ。


「アリエス、

 “殴り方”を変えて!」


 アリエスは、頷いた。


「了解」


 拳を、

 握り直す。



 今度は、

 “壊す”のではなく、

 “ずらす”。


 ――トン。


 軽い一撃。


 だが、

 世界の反応が、遅れた。


 その隙に――


「今!」


 レオンが、

 盾で“壁”を押す。


 セリスが、

 空間の“継ぎ目”を固定。


 ミラが、

 存在の薄い部分を切り取る。


 リィアが、

 一気に押し崩す。


 ――ズドンッ!


 敵意の壁が、

 霧のように散った。



敵性干渉:後退



 世界が、

 一歩、引いた。


 風が、元の流れに戻る。


 地面の反発が、弱まる。


「……敵意、消えてない」


 エルナが、静かに言う。


「でも」


 アリエスは、拳を開く。


「話は、聞いた」


 カイが、頷く。


「この世界は、

 “拒絶”はするが、

 完全排除はできない」


 それは、

 彼らが“修復者”として

 認識された証拠でもあった。



 光が、控えめに走る。



《経験値獲得(適応)》

アリエス:Lv41 → Lv42

STR:338 → 342

獲得:世界適応(初期)

レオン:Lv56 → Lv57

VIT微増

セリス:Lv54 → Lv55

空間安定適性

ミラ:Lv51 → Lv52

存在把握精度

リィア:Lv51 → Lv52

押し合い耐性

エルナ:Lv52 → Lv53

干渉回復安定

カイ:Lv46 → Lv47

世界挙動予測



 派手ではない。

 だが、確かな前進。



 アリエスは、空を見上げた。


 紫の層が、

 少しだけ薄くなっている。


「……敵意、あるのは分かった」


 笑う。


「でも」


 拳を、軽く鳴らす。


「殴れば、聞く」


 それで、十分だった。


 この世界は、

 敵でも、味方でもない。


 理解するまで、拒む存在。


 そして――

 《セブン・ブラッド》は、

 拒まれても、進む。


 世界が敵意を見せたなら、

 それに応じたやり方で。


 壊さず、

 引かせ、

 先へ。


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