第55話 世界が“敵意”を見せる
風が、止まった。
次の瞬間、
逆に流れ出す。
音が遅れ、影が先に動き、
地面が“拒む”。
《ステータス・オーバールック》
世界反応:敵意
分類:環境主導型干渉
対象:外来存在(継ぎ目通過者)
「……来たね」
アリエスは、深く息を吸った。
「さっきまでとは、違う」
レオンが、盾を構える。
「敵が“現れる”んじゃない。
世界が、敵になる」
その言葉を裏付けるように、
空間が軋んだ。
⸻
足元の地面が、
“存在を主張”し始める。
踏み込むたびに、
反発が返ってくる。
「……歩きづらい」
リィアが、歯を食いしばる。
「拒否されてる」
セリスが、即座に判断する。
「この世界、
私たちを“異物”として認識した」
カイが、解析を重ねる。
「敵意は、個体じゃない。
領域全体から来てる」
「つまり」
ミラが、短く言う。
「殴る相手、いない?」
アリエスは、首を振った。
「いるよ」
拳を、地面へ向ける。
「世界そのもの」
⸻
次の瞬間、
空気が刃になった。
――ザァッ!!
見えない斬撃が、
七人を同時に襲う。
「受ける!」
レオンが、前に出る。
盾が、
概念的な斬撃を受け止める。
――ギィ……ン……
軋む音。
「……重い」
「今、支援!」
エルナが、
世界干渉に対応した回復を流す。
セリスが、
空間安定魔法を展開。
「一時的に、
通れる状態にする!」
足元が、
ほんの一瞬、軽くなる。
「今だ!」
⸻
アリエスが、
踏み出した。
拳を、
何もない空間へ叩き込む。
――ドンッ。
音は小さい。
だが――
反発が、返ってきた。
世界が、揺れる。
「……効いた」
アリエスは、目を細めた。
「拒否してるけど、
触れられる」
それは、
完全な排除ではない証拠。
⸻
世界の敵意が、形を持ち始める。
地面から、
輪郭だけの“壁”が立ち上がる。
敵性反応:ワールド・リジェクター
Lv:測定不能
特性:
・外来排斥
・形状可変
「来る!」
リィアが、前へ。
だが、
攻撃は、戻される。
――ガッ!
「……押し返された!」
「正面突破は、拒否される」
カイが、叫ぶ。
「アリエス、
“殴り方”を変えて!」
アリエスは、頷いた。
「了解」
拳を、
握り直す。
⸻
今度は、
“壊す”のではなく、
“ずらす”。
――トン。
軽い一撃。
だが、
世界の反応が、遅れた。
その隙に――
「今!」
レオンが、
盾で“壁”を押す。
セリスが、
空間の“継ぎ目”を固定。
ミラが、
存在の薄い部分を切り取る。
リィアが、
一気に押し崩す。
――ズドンッ!
敵意の壁が、
霧のように散った。
敵性干渉:後退
世界が、
一歩、引いた。
風が、元の流れに戻る。
地面の反発が、弱まる。
「……敵意、消えてない」
エルナが、静かに言う。
「でも」
アリエスは、拳を開く。
「話は、聞いた」
カイが、頷く。
「この世界は、
“拒絶”はするが、
完全排除はできない」
それは、
彼らが“修復者”として
認識された証拠でもあった。
⸻
光が、控えめに走る。
《経験値獲得(適応)》
アリエス:Lv41 → Lv42
STR:338 → 342
獲得:世界適応(初期)
レオン:Lv56 → Lv57
VIT微増
セリス:Lv54 → Lv55
空間安定適性
ミラ:Lv51 → Lv52
存在把握精度
リィア:Lv51 → Lv52
押し合い耐性
エルナ:Lv52 → Lv53
干渉回復安定
カイ:Lv46 → Lv47
世界挙動予測
派手ではない。
だが、確かな前進。
⸻
アリエスは、空を見上げた。
紫の層が、
少しだけ薄くなっている。
「……敵意、あるのは分かった」
笑う。
「でも」
拳を、軽く鳴らす。
「殴れば、聞く」
それで、十分だった。
この世界は、
敵でも、味方でもない。
理解するまで、拒む存在。
そして――
《セブン・ブラッド》は、
拒まれても、進む。
世界が敵意を見せたなら、
それに応じたやり方で。
壊さず、
引かせ、
先へ。




