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空に立つ翼 ― 天翼族の少女は殴り倒す ―  作者: てん


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第51話 継ぎ目の向こうへ

 静かな日が、三日続いた。


 四日目も、何も起きなかった。


 高原の屋敷の屋根の上で、アリエスは仰向けになり、空を眺めていた。


「……ねえ」


 雲が流れる。


「この世界、もうやること少なくない?」


 返事は、すぐに返ってこない。


 だが、しばらくして。


「否定はできないな」


 レオンが、隣で同じように空を見ていた。


「壊れかけた場所は、ほぼ直した」


「破滅級も、しばらく出ないでしょうね」


 セリスが、穏やかに言う。


 エルナは、少し困ったように笑った。


「平和、ということなのでしょうけど……」


「……退屈」


 アリエスは、率直だった。


 胸の奥が、ざわつく。


 戦いたい、というより――

 知らない場所に行きたい。


 その夜。


 カイが、珍しく声を上げた。


「……見つけた」


 全員が、顔を向ける。


「何を?」


「世界の継ぎ目の、その先」


 空気が、変わった。


 カイは、机の上に光の地図を投影する。


 それは、見覚えのある歪みだった。


「以前、修復した境界域」


「直した場所?」


 リィアが、眉をひそめる。


「正確には、“縫い合わせた”場所だ」


 カイは、淡々と続ける。


「完全に塞いだわけじゃない。

 通れる状態で、安定させた」


 アリエスは、ゆっくりと起き上がった。


「……行ける?」


「理論上は」


「危険?」


「測定不能」


 一拍。


「最高じゃん」


 アリエスの目が、輝いた。


「待て」


 レオンが、低く言う。


「そこは、この世界じゃない可能性が高い」


「うん」


「帰れないかもしれない」


「うん」


 即答だった。


「でもさ」


 アリエスは、仲間を見る。


「私たち、

 世界の外側を直せって言われてない」


 誰も、言い返せない。


「だったら」


 拳を、軽く握る。


「見に行っても、いいでしょ」


 沈黙。


 そして――


「……行こう」


 セリスが、静かに言った。


「好奇心は、抑えられない」


「面白そう」


 ミラが、短く言う。


「落ちても、守る」


 エルナが、頷く。


「解析は、任せろ」


 カイが、即座に準備を始める。


 リィアが、牙を見せて笑った。


「また、知らない敵がいるかもね」


 全員の視線が、

 自然とアリエスに集まる。


「……決まり」


 世界の継ぎ目は、

 夜になると、静かに光った。


 縫い目のような、淡い線。


 触れれば、

 向こう側の気配が伝わってくる。


《ステータス・オーバールック》


境界継ぎ目

状態:安定

通過可能:限定

先の世界:未登録



「……ほんとに、世界の外だ」


 アリエスは、一歩前に出る。


 振り返る。


「ねえ」


 笑った。


「戻る保証、ないよ?」


 誰も、ためらわない。


「戻れなくてもいい」


 レオンが、短く言う。


「進めるなら」


 アリエスは、満足そうに頷いた。


「じゃあ――」


 一歩、踏み出す。


 世界が、切り替わった。


 音が、色が、重力が、

 一瞬で書き換えられる。


 足元に、

 見たことのない大地。


 空は、二重に重なり、

 遠くに、知らない星が浮かんでいる。


「……うわ」


 リィアが、思わず声を漏らす。


「ここ、どこ?」


 カイが、即座に解析を始める。


「……データが、通らない」


 それは、

 この世界の外側に来た証拠だった。


 アリエスは、深く息を吸う。


 胸の奥が、久しぶりに高鳴る。


「……いいね」


 拳を、ぎゅっと握る。


「現実、超えてきた感じ」


 誰かが、笑った。


 誰かが、息を呑んだ。


 だが、全員が理解している。


 ここからは、未知だ。


 世界修復者も、

 踏破者も、

 名前も、役割も。


 何も通じない。


 それが――

 最高だった。


 《セブン・ブラッド》は、

 世界の継ぎ目を越えた。


 守るためではなく、

 命じられたわけでもなく。


 飽きたから。

 面白そうだから。


 それだけの理由で。


 新しい物語は、

 ここから始まる。

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