第48話 雲上迷宮・最終層――空の心臓
最終層は、音がした。
どくん。
どくん。
規則正しい鼓動。
それは、生き物のものではない。
だが、確かに――生きている。
《ステータス・オーバールック》
雲上迷宮・最終層
通称:空の心臓
特性:
・世界安定核
・破滅級集束点
・干渉=不可逆
「……心臓、って言い方」
リィアが、思わず声を落とす。
「本当に、そのままじゃん」
広間の中央に、
巨大な“核”が浮かんでいた。
白と青の層が、幾重にも回転し、
空間そのものを支えている。
その周囲には、
砕けた世界の“欠片”が漂っていた。
「……破滅級の残骸」
カイが、即座に理解する。
「ここに、集められてる」
セリスが、息を呑む。
「つまり……」
「世界で生まれた破滅は、
ここに溜まる」
アリエスが、静かに言った。
その時。
心臓が、強く脈打った。
――ドクン!!
空間が、歪む。
核の周囲から、
形を持った圧が立ち上がった。
敵:ワールド・レギュレーター
Lv:測定不能
特性:
・世界修復
・過剰戦力排除
・存在圧縮
「……守る側だね」
レオンが、盾を構える。
「壊す気はない」
エルナが、即座に言う。
「調整してくる」
その判断は、正しかった。
圧が、七人を包む。
重い。
だが、敵意ではない。
測られている。
「到達者よ」
声が、直接頭に響く。
「汝らは、
世界の均衡を超えた」
「だから?」
アリエスが、一歩前に出る。
「排除、する?」
「否」
即答。
「委ねるか、拒むかだ」
圧が、さらに強まる。
核が、七人それぞれに反応する。
干渉対象確認:
・力
・意志
・連携
「……来る」
カイが、短く言った。
戦闘ではない。
だが、
耐えなければならない。
レオンが、前に立つ。
圧を、盾で受ける。
――ゴォ……ン……
「……っ」
膝が、沈む。
「今、支援!」
エルナが、
世界干渉レベルの回復を流す。
セリスが、魔力を安定させ、
ミラが、圧の“隙”を探る。
リィアが、
踏ん張る。
「……負けない」
それは、
敵への宣言ではない。
世界への意思表示だった。
アリエスは、
核の前に立った。
翼を、ゆっくりと広げる。
「……ねえ」
拳を、
心臓へ向ける。
「壊す気、ないよ」
拳を握り、
しかし――振り抜かない。
「でも」
一歩、踏み込む。
「止まったら、殴る」
それが、彼女の答えだった。
核が、
静かに、応えた。
圧が、和らぐ。
回転が、安定する。
適合確認:
・外部戦力
・役割:世界調律者(暫定)
光が、七人を包む。
《経験値獲得》
アリエス:Lv36 → Lv38
STR:309 → 320
レオン:Lv51 → Lv53
VIT上昇
セリス:Lv49 → Lv51
INT上昇
ミラ:Lv46 → Lv48
DEX上昇
リィア:Lv46 → Lv48
STR上昇
エルナ:Lv47 → Lv49
支援干渉耐性獲得
カイ:Lv41 → Lv43
世界解析権限(限定)
戦闘ではない。
だが、越えた。
心臓が、
安定した鼓動に戻る。
どくん。
どくん。
声が、最後に響く。
「汝らを、
世界は記録した」
「……うん」
アリエスは、拳を解く。
「じゃあ、
壊れそうになったら、呼んで」
軽い口調。
だが、
世界は――震えた。
最終層が、
ゆっくりと消えていく。
七人は、雲の上に立っていた。
空は、広く、静かだ。
「……終わった?」
リィアが、聞く。
「一段落、だな」
レオンが、答える。
アリエスは、空を見上げる。
胸の奥は、
不思議なほど落ち着いている。
「……でもさ」
少しだけ笑う。
「殴る理由、なくなってないよね」
全員が、頷いた。
世界は、直った。
だが――
世界は、まだ壊れる。
その時、
《セブン・ブラッド》が、来る。




