表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空に立つ翼 ― 天翼族の少女は殴り倒す ―  作者: てん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/58

第36話 奈落回廊・最深層――扉の向こう

 扉は、音を立てなかった。


 開いた、というより――

 向こうが、こちらを受け入れた。


 最深層は、空間そのものが“深い”。


 天井も床もない。

 上下の感覚が曖昧で、

 ただ、中央に一枚の扉だけが浮かんでいる。



《ステータス・オーバールック》

ダンジョン:奈落回廊・最深層

特性:

・選別完了

・介入不可

・記録開始



「……何も、出てこないね」


 リィアが、周囲を見回す。


「出るなら、とっくに出てる」


 レオンは、盾を下ろした。


 敵意は、ない。

 だが――視線はある。


 全員が、それを感じていた。



 扉の前に、文字が浮かぶ。


【ここから先は、試練ではない】

【証明でもない】


【汝らが、何者かを記録する】


 セリスが、静かに息を吸う。


「……評価じゃない」


 カイが、頷いた。


「世界に残す“定義”だ」


 扉は、誰にでも開かれている。

 だが、戻ることはできない。


 アリエスは、一歩前に出た。


「行く?」


 振り返る。


 誰も、躊躇しない。


「当然」


 レオンが、短く答える。


「ここまで来て、

 名前も持たずに帰るわけない」


 ミラが、影のように笑った。



 扉の向こうは、戦場ではなかった。


 巨大な円環。

 中心に、淡い光。


 そして、声。


「血縁よ」


 姿はない。

 だが、はっきりと聞こえる。


「汝らは、

 個であり、群である」


 光が、七人それぞれに分かれる。



《最深層干渉》

・戦闘なし

・最終同調

・個別限界解除(小)



 それは、戦いの報酬だった。


 数値が、静かに更新される。



《経験値獲得(最深層到達)》

アリエス:Lv29 → Lv30

STR:262 → 270

レオン:Lv46 → Lv47

VIT上昇

セリス:Lv44 → Lv45

INT上昇

ミラ:Lv42 → Lv43

DEX上昇

リィア:Lv41 → Lv42

STR上昇

エルナ:Lv43 → Lv44

支援範囲拡張

カイ:Lv37 → Lv38

解析共有速度上昇



 派手さはない。

 だが、確かな“積み上げ”。



「汝らに、名はあるか」


 問いが、落ちる。


 誰も、すぐには答えない。


 視線が、自然とアリエスに集まる。


「……今は、ない」


 正直な答え。


「でも」


 拳を、軽く握る。


「ここまで一緒に来た」


 仲間を見る。


「それだけで、十分だと思ってた」


 光が、わずかに揺れた。


「名は、外から与えられるものではない」


「分かってる」


 アリエスは、笑う。


「帰ってから、決める」


 その瞬間、

 最深層の光が、静かに収束した。



最深層 記録完了

奈落回廊:踏破





 気づけば、

 七人は地上に立っていた。


 朝の風。

 澄んだ空。


 振り返ると、

 奈落回廊は――消えている。


「……帰ってきたね」


 エルナが、安堵の息を吐く。


「踏破、か」


 レオンが、拳を開く。


「世界が、どう動くか楽しみだな」


 アリエスは、空を見上げた。


 胸の奥が、静かに熱い。


「……名前、考えよ」


 それは、

 次に進むための合図。


 扉の向こうには、戦いはなかった。

 だが――


 帰ってきた先に、

 世界が待っている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ