第33話 奈落回廊・第四層――役割破壊
第四層へ降りた瞬間、
違和感ははっきりしていた。
広い。
だが、広すぎる。
柱も遮蔽物もない、円形の大空間。
天井は高く、床は鏡のように滑らかだ。
《ステータス・オーバールック
ダンジョン:奈落回廊・第四層
特性:
・役割干渉
・連携逆転
・適性反転
「……役割、って書いてある」
カイが、即座に反応する。
「固定した動きを、壊しに来る層だ」
言い終わる前に――
空気が、歪んだ。
最初の異変は、アリエスだった。
翼が、重い。
「……?」
飛べる。
だが、加速が効かない。
警告:
・飛行補正低下
・前衛特化制限
「前に出づらい、ってこと?」
同時に、レオンの盾が光る。
補正発生:
・攻撃倍率上昇
・防御倍率低下
「……逆だな」
レオンが、低く呟く。
タンクが、殴れと言われている。
敵が、出現する。
敵:ロール・ブレイカー
Lv:45
特性:
・役割反転付与
・対象依存強化
複数体。
しかも、配置がいやらしい。
「来る!」
ミラが動こうとして、止まる。
警告:
・隠密無効化
・影歩き制限
「……影、使えない」
セリスが詠唱に入る。
だが――
警告:
・詠唱遅延
・魔力逆流
「っ……長い!」
全員の得意分野が、潰されている。
「落ち着け」
カイの声が、通る。
「役割を“入れ替えろ”って言われてる」
視線が交わる。
アリエスが、にっと笑った。
「じゃあ、やってみよ」
前に出たのは、レオンだった。
盾を捨て、
拳を構える。
「殴れって言うなら――殴る」
――ドンッ!!
重い一撃。
ロール・ブレイカーが、吹き飛ぶ。
「……効くな」
撃破
《経験値獲得》
レオン:Lv43 → Lv44
STR:185 → 192
「次!」
後衛に回ったのは、アリエス。
飛べないなら、
地上で合わせる。
敵の動きを見切り、
一瞬の隙を作る。
「今!」
その声に、
リィアが反応する。
普段は追撃。
だが、今は――
「前、行く!」
獣化。
――ガッ!
――ズドン!!
主攻撃として、敵を粉砕。
撃破
《経験値獲得》
リィア:Lv38 → Lv39
STR:214 → 221
「……前も、悪くないね!」
ミラは、囮に回った。
隠れられないなら、
見せる。
わざと視線を集め、
敵を引きつける。
「こっちだよ」
そこへ――
「まとめて、いく」
セリスの魔法。
詠唱は遅い。
だが、時間は稼げている。
――ドォン!
広域殲滅。
撃破(複数)
《経験値獲得》
セリス:Lv41 → Lv42
INT:360 → 368
ミラ:Lv39 → Lv40
DEX:328 → 336
最後に残った一体が、
空間を歪める。
――ギィ……。
層主だった。
敵:ロール・オーバーシア
Lv:48
特性:
・役割完全反転
・適応学習
「解析不能、部分あり」
カイが、即座に判断する。
「だから――」
アリエスが、前に出た。
「全員で殴る」
合図は、それだけ。
役割も、隊列も、関係ない。
レオンの拳。
リィアの爪。
ミラの刃。
セリスの魔法。
エルナの支援。
カイの指示。
そして――
「今!」
アリエスの一撃。
――ズガァンッ!!
層主、粉砕。
第四層 制圧
光が、全員を包む。
《経験値獲得》
アリエス:Lv26 → Lv27
STR:241 → 247
カイ:Lv34 → Lv35
戦術再構築速度上昇
エルナ:Lv40 → Lv41
支援効果範囲拡大
第四層は、静かになった。
全員が、無傷。
息を整えながら、
アリエスが言う。
「……役割、なくても戦えるね」
レオンが、頷く。
「役割は、武器だ。
だが、縛りじゃない」
カイが、静かにまとめる。
「この層は、
固定観念を捨てられるかを見ていた」
アリエスは、下を見た。
第五層が、待っている。
「……次、何壊しに来るんだろ」
ワクワクが、戻ってくる。
奈落回廊は、
まだ、試す気でいる。




