第30話 奈落回廊・第一層――血縁、始動
縦に裂けた大地の縁に立つと、
空気が一段、冷たくなった。
奈落回廊。
世界最難関と呼ばれるダンジョン。
底は見えない。
ただ、闇がある。
「……深いね」
アリエスは縁から覗き込み、軽く息を吐いた。
背後では、皆が自然と間隔を取り、
それぞれの準備を終えている。
鎧の軋む音。
魔力の循環。
気配の消失。
言葉は少ない。
「降りる」
それだけで、全員が動いた。
第一層は、広かった。
自然洞窟のようでいて、
どこか人為的な直線が混じる。
天井から淡く光る結晶が垂れ、
足元には霧が溜まっている。
《ステータス・オーバールック》
ダンジョン:奈落回廊・第一層
特性:
・魔力濃度:高
・地形可変:低
・敵再出現:あり
「来るよ」
アリエスの声と同時に、
霧の奥が動いた。
――ズルリ。
人型。
だが、皮膚は石のように硬い。
敵:ストーン・ウォーカー
Lv:28
「前、任せろ」
レオンが一歩出る。
盾を構え、
正面から受け止める。
――ゴンッ!!
衝撃音。
だが、レオンは一歩も退かない。
「右、空いた」
「了解」
ミラが、影の中から一閃。
――シュッ。
関節部が、切断される。
「今だ」
アリエスは、翼で加速。
――ドンッ!!
拳が胸部を貫き、
ストーン・ウォーカーは崩れ落ちた。
撃破
視界に、小さな光が走る。
《経験値獲得》
アリエス:Lv21 → Lv22
STR:218 → 222
レオン:Lv38 → Lv39
VIT:310 → 318
ミラ:Lv34 → Lv35
DEX:290 → 298
「……一体で、上がるのか」
レオンが低く呟く。
「第一層でも、経験値高めだね」
セリスが、魔力を整えながら答えた。
次は、群れだった。
天井から、影が落ちる。
敵:スウォーム・バット
Lv:26 × 複数
「数、任せて」
セリスが前に出る。
詠唱は短い。
――パァン!
雷が走り、
群れが一気に弾けた。
「残り、左!」
「追撃いく!」
リィアが獣化し、
連続突進。
――ガッ、ガッ、ガッ!
残敵が、次々と落ちる。
撃破(複数)
また、光。
《経験値獲得》
セリス:Lv36 → Lv37
INT:320 → 328
リィア:Lv33 → Lv34
STR:195 → 201
エルナ:Lv35 → Lv36
MP:1800 → 1860
カイ:Lv29 → Lv30
INT:210 → 216
「全員、順調だ」
カイが、短く報告する。
「第一層は、連携確認用って感じだね」
アリエスは、笑った。
「いい練習」
最後に現れたのは、
第一層の主だった。
敵:ガーディアン・ゴーレム
Lv:32
巨体。
鈍重だが、一撃が重い。
「私が止める」
レオンが、真正面へ。
「背後、任せて」
「了解」
ミラとアリエスが、左右に展開。
セリスが、上空制御。
「今!」
レオンが、渾身の受け。
――ドォン!!
衝撃が、床を揺らす。
その瞬間、
アリエスが真上から落ちた。
――ズガァンッ!!
核、粉砕。
ゴーレムは、動きを止めた。
撃破
最後の光。
《経験値獲得》
アリエス:Lv22 → Lv23
STR:222 → 227
レオン:Lv39 → Lv40
HP:2400 → 2480
セリス:Lv37 → Lv38
INT:328 → 336
ミラ:Lv35 → Lv36
DEX:298 → 306
リィア:Lv34 → Lv35
STR:201 → 207
エルナ:Lv36 → Lv37
回復効果微増
カイ:Lv30 → Lv31
解析速度上昇
第一層は、完全制圧。
小休止。
岩に腰掛け、
皆が水を飲む。
「……強いな、俺たち」
レオンが、ぽつりと言った。
「今さら?」
アリエスが笑う。
「でもさ」
ミラが、首を傾げる。
「私たち、まだ名前ないよね。パーティ」
「確かに」
エルナが、くすっと笑う。
「決めるのは、帰ってからでもいいでしょう」
アリエスは、立ち上がる。
「うん。
もっと潜ってからでいい」
下を見下ろす。
奈落回廊・第二層が、待っている。
「行こ」
誰も、異議を唱えなかった。
血縁が揃い、
力が噛み合い、
名前は――まだ、要らない。
第一層、突破。
最難関ダンジョンは、
ようやく“こちらを見る”準備を始めた。




