第22話 破滅級、完成――海が吠える
海は、静かすぎた。
風がない。
波が立たない。
音が、吸い込まれている。
「……完成、してる」
アリエスは上空で翼を止め、真下を見下ろした。
海面に浮かぶ、巨大な魔導陣。
その中央で、影がはっきりと“形”を持っている。
視界が切り替わった。
《ステータス・オーバールック》
対象:アビス・レヴィアタン
分類:破滅級魔獣(完成体)
Lv:???
HP:???
MP:— —
特性:
・海域魔力無限供給
・自己再生(海中)
・広域破壊
核:深部(移動)
「……へえ」
胸の奥が、強く跳ねた。
怖さじゃない。
逃げたいでもない。
楽しい。
(これ、ちゃんと殴り合える)
⸻
次の瞬間。
海が、割れた。
――ドォォォンッ!!
巨大な影が、海面を突き破る。
山のような頭部。
絡み合う触手。
海そのものを纏ったような巨体。
破滅級。
咆哮が、空気を震わせた。
――ゴァァァァァッ!!
衝撃波が、海面を押し下げる。
アリエスは、笑った。
「……最高」
⸻
初撃。
触手が、一斉に襲いかかる。
――ズドドドッ!!
水圧を纏った打撃が、空を薙ぐ。
アリエスは、翼で急上昇。
「遅い!」
回避。
急旋回。
背後へ。
――ドンッ!!
拳が、触手を粉砕する。
だが、すぐに再生。
再生確認:
・再生速度:極
・海中で加速
「……なるほど」
アリエスは、海面へ急降下した。
――ドォンッ!!
水柱が上がり、海中へ突入。
環境補正:
・水圧(極)
・移動抵抗(極)
「重っ……でも」
翼で踏ん張り、
そのまま前進。
巨体が、口を開く。
――ズガァァン!!
噛み砕き。
アリエスは、正面から受け止めた。
――ガンッ!!
衝撃が、全身に走る。
だが、止まらない。
「……効く!」
拳を引き、
全力で叩き込む。
――ゴォォンッ!!!
牙が、砕け散る。
破滅級が、悲鳴を上げた。
⸻
海上へ、再浮上。
アリエスは、息を吐く。
「……いいね。ちゃんと強い」
視界に、更新が走る。
《最適破壊ルート(再計算)》
① 核の移動パターン固定
② 海上へ誘導
③ 急降下連撃で核粉砕
成功率:68%
「六割超え? 十分!」
翼を広げ、
海上へ飛び出す。
破滅級が追う。
海が、荒れ狂う。
――ドゴォン!
――ズガン!
互いの攻撃が、何度もぶつかる。
触手が当たる。
拳が入る。
殴り合いだ。
アリエスの胸が、高鳴る。
(……楽しい!)
⸻
核が、一瞬、露出した。
「今だ!」
アリエスは、真上へ跳ぶ。
全身を反らし、
翼を畳む。
全力急降下。
――ズドォォォォンッ!!!!
拳が、核を直撃。
衝撃が、海全体を揺らした。
核に、亀裂。
だが――まだだ。
「……終わらせる!」
アリエスは、連撃。
――ドン!
――ゴン!
――ズガン!!
最後の一撃。
――バキィィィンッ!!!
核が、完全に砕けた。
⸻
沈黙。
巨体が、力を失い、海へ沈む。
海が、静かになっていく。
戦闘終了
破滅級討伐完了
アリエスは、海面に立った。
胸の奥が、一気に晴れた。
「……あー、スッキリ」
そして――
視界が、白く光った。
《経験値獲得》
獲得EXP:24,800
(破滅級撃破・単独討伐・海域制圧補正)
レベルアップ!
Lv 10 → Lv 15
数値が、一気に跳ね上がる。
《ステータス・オーバールック(更新)》
Lv:15
HP:1,120(+360)
MP:480(+150)
STR:178(+32)
DEX:104(+18)
VIT:158(+36)
INT:58(+4)
LUK:55(+7)
新規獲得:
・破滅耐性 Lv1
・海中戦闘適応 Lv1
「……一気に来たね」
拳を握ると、
世界が軽く感じる。
アリエスは、思わず笑った。
ワクワクが、止まらない。
「……ねえ」
空を見上げる。
「もっと、強いやつ出てこないかな?」
恐怖はない。
疲労もない。
あるのは――
次を殴りたい気持ちだけ。
破滅級を倒しても、
彼女は止まらない。
世界が壊れる前に、殴る。
それが、アリエスのやり方だった。




