第19話 反発は、影から始まる
同盟の通達は、早かった。
王国とルミナリアの連名。
形式は簡潔、内容は重い。
特別同盟締結。
軸戦力:アリエス。
敵対行動は高リスク。
それを読んで、頷いた国もあれば、
顔をしかめた国もあった。
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南方交易国家。
会議室は、閉ざされている。
「ふざけるな」
机を叩く音。
「十五歳の小娘一人で、世界の均衡だと?」
「同盟? 脅迫の間違いだ」
集まっているのは、軍務大臣、諜報長、商会代表。
共通するのは――恐怖だ。
「彼女が“軸”になれば、
我々は常に“殴られる側”になる」
諜報長が、低く言った。
「なら、確かめるしかない」
視線が、集まる。
「本当に、噂通りなのか」
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動きは、静かだった。
夜。
王都近郊の街道。
月明かりの下、
空気がわずかに歪む。
――転移。
黒装束の集団が、音もなく現れた。
所属:ヴァルケン非公式部隊
人数:8
平均Lv:40
目的:拘束/拉致
「……やっぱ来た」
アリエスは、屋根の上でそれを見下ろしていた。
同盟成立から、まだ半日。
早すぎる。
(話し合い、嫌いなんだ)
胸の奥が、少しだけ騒ぐ。
殴る理由としては、十分だった。
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黒装束の一人が、魔具を展開する。
結界。
遮断。
逃走路の確保。
だが――
次の瞬間、
結界の上に影が落ちた。
「――なっ」
影の正体は、翼。
アリエスは、結界の外から拳を振り下ろした。
――ドンッ!!
結界が、紙のように砕け散る。
「……は?」
理解する暇は、ない。
アリエスは、着地と同時に踏み込む。
――ガッ!
――ゴンッ!
二人が、地面に沈む。
他の者が、陣形を組もうとする。
「囲め! 数で――」
「数?」
アリエスは、首を傾げた。
「見えてるよ」
《ステータス・オーバールック》
対象:ヴァルケン非公式部隊
最高Lv:44
脅威度:低
「足りない」
翼で加速。
一瞬で距離を詰める。
――ズドンッ!!
前列が、まとめて吹き飛ぶ。
背後へ回った一人が、拘束魔法を放つ。
――バシュッ!
だが、
当たらない。
「遅い」
振り向きざまに、拳。
――ゴシャッ!!
最後の一人が、壁に叩きつけられ、動かなくなる。
全員、無力化。
時間にして、十数秒。
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アリエスは、倒れた集団を見下ろした。
殺していない。
だが、十分に恐怖は刻んだ。
通信魔具を拾い上げ、
軽く覗く。
「……国名、出てるね」
そのまま、空へ放り投げた。
――バキン。
粉砕。
「隠す気ないなら、
堂々と来ればいいのに」
独り言。
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翌朝。
ヴァルケンに、報告が届く。
非公式部隊、壊滅。
対象、抵抗不能。
戦闘時間、短すぎて測定不可。
会議室が、凍りついた。
「……もう一度、行くか?」
誰も、答えない。
諜報長が、静かに言った。
「やめろ。
次は、国が殴られる」
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一方その頃。
アリエスは、屋根の上で伸びをしていた。
「……同盟、正解だったね」
殴る前に、
守る理由ができた。
それだけで、
世界の見え方が、少し変わる。
だが、次に動く国は――
もっと、しつこいかもしれない。
アリエスは、空を見上げた。
「次は、どんな手で来るんだろ」
怖くはない。
殴れる限り、問題ない。




