第14話 国家専属、初出動――規模が違う
王都を発った部隊は、一個大隊規模だった。
騎士団前衛。
魔導士中隊。
工兵、補給、後方支援。
旗がはためき、結界が展開され、
街道が完全に封鎖される。
――国家案件。
その中央を、アリエスは空から並走していた。
「……人、多すぎない?」
正直な感想だった。
地上では、騎士団長が苦笑する。
「これでも最小構成だ。
今回の対象は“災害指定”だからな」
「災害って……」
アリエスは、前方を見た。
空気が、歪んでいる。
風の流れが、途中で切れている。
視界が切り替わった。
《ステータス・オーバールック》
地域:黒歪盆地
危険度:災害指定S級
環境補正:
・魔力過飽和(極)
・重力乱流(中)
・感覚阻害(弱)
(前より、はっきりヤバい)
胸の奥が、ゆっくり熱を帯びる。
昂る、というより――集中。
⸻
盆地の中央が、隆起した。
――ゴゴゴゴッ!!
地面が裂け、岩が宙を舞う。
現れたのは、
岩と肉が融合したような四脚の巨獣。
中心に、脈動する赤黒い核。
「災害魔獣……!」
騎士団長が叫ぶ。
「全隊、第一防御陣形!
魔導士、結界展開!」
詠唱が始まり、魔力が集束する。
だが――
「遅い」
アリエスは、翼を広げた。
地面を蹴り、単独で前へ。
「アリエス!? まだ連携を――」
「大丈夫!」
返事は、空から。
⸻
視界に、情報が走る。
《ステータス・オーバールック》
対象:グラウンド・ハート
種族:災害魔獣
Lv:???
HP:3,200 / 3,200
MP:— —
STR:210
DEX:28
VIT:240
INT:18
LUK:6
耐性:
・斬撃△
・打撃△
・雷○
弱点:
・露出核(打撃有効・倍率大)
・四脚基部(破壊で転倒)
「……殴れる」
それで十分だった。
《最適破壊ルート》
① 四脚破壊 → 転倒
② 露出核へ急降下
成功率:91%
「行くよ!」
⸻
――ドンッ!!
翼で加速し、急降下。
拳が四脚基部に直撃。
――バギィッ!!
岩と肉が砕け、
巨体が前のめりに倒れる。
「今!」
二撃目。
――ズガァァンッ!!
露出した核に、拳が叩き込まれる。
衝撃波が、盆地を揺らす。
魔獣が咆哮し、暴れるが――
「まだ足りない!」
三撃、四撃。
――ドォン!
――ガゴン!!
核損傷率:78%
暴走予兆:発生
「暴走する前に、終わり!」
アリエスは、さらに上空へ。
翼を畳み、全力急降下。
――ズドォォォンッ!!!!
核が、完全粉砕。
魔獣は、崩れ落ちた。
⸻
静寂。
歪みが、ゆっくりと収束する。
騎士団も魔導士も、
一歩も動いていない。
「……終わった?」
誰かが、呆然と呟く。
アリエスは、地上に着地し、拳を振った。
(……やっぱ、殴るとスッキリする)
⸻
視界に、光が走る。
《経験値獲得》
獲得EXP:8,300
(災害指定S級・単独討伐補正)
レベルアップ!
Lv 8 → Lv 9
数値が更新される。
《ステータス更新》
HP:680(+60)
MP:300(+20)
STR:138(+6)
DEX:81(+3)
VIT:112(+8)
INT:52(+1)
LUK:46(+1)
新規獲得:
・災害耐性 Lv2
「……また上がった」
拳を握ると、
前よりも明確に“重さ”を感じる。
騎士団長が、ゆっくりと近づいた。
「……これが、国家専属か」
「うん」
アリエスは笑った。
「規模、違うでしょ?」
誰も、否定できなかった。
この戦いで、全員が理解した。
――国家専属とは、
国家が動く前に終わらせる存在だ。
⸻
その日の報告書には、こう記された。
災害指定S級案件
対応時間:3分12秒
主戦力:アリエス(単独)
アリエスは、空を見上げて呟く。
「次は、もっとデカいのかな」
胸の奥が、また少し騒いだ。
国家専属の初出動は、完全成功。
そして――
世界は、さらに彼女を必要とし始めていた。




