第11話 横取り? じゃあ、覚えさせる
砕けた中枢核の残骸が、床に転がっている。
歪んでいた空間は静まり、
地下施設は、ようやく“死んだ”。
アリエスは拳を振り、軽く息を吐く。
(……終わり)
そう思った、その直後。
――足音。
ひとつ、ふたつではない。
組織だった数。
振り向くと、通路の奥から人影が溢れてきた。
統一装備。整った陣形。
王国第三騎士団。
さらに反対側。
黒い外套、散らばった配置。
他都市ギルドの混成隊。
――合わせて、十数名。
視界が切り替わる。
《ステータス・オーバールック》
王国第三騎士団 先遣隊
平均Lv:28
指揮官Lv:33
他都市ギルド混成隊
平均Lv:30
最高Lv:35
(……弱い)
はっきり、そう分かった。
騎士団の指揮官が一歩前に出る。
「本体撃破を確認した。
だが、この遺跡と成果は国家管理下に――」
「横取り?」
アリエスは、首を傾げた。
純粋な疑問だった。
「これ、私が殴って壊したんだけど」
外套の男が、にやりと笑う。
「証拠は?
S級案件だぞ。
小娘一人で処理できるわけが――」
言い終わらなかった。
次の瞬間、アリエスの翼が全開になる。
――ドンッ!!
衝撃波が、通路を叩き潰す。
床が割れ、壁がひび割れ、
前列の騎士団がまとめて吹き飛んだ。
「――がっ!!」
鎧が歪み、
身体が壁に叩きつけられ、
気絶。即退場。
アリエスは、止まらない。
外套の集団へ向け、踏み込み。
「証拠なら――」
拳を振る。
――ゴォンッ!!
一人目、地面に埋まる。
悲鳴が上がる前に、二人目。
――バギィッ!!
骨の軋む音。
空中で回転し、落下。
アリエスは、空中で姿勢を制御しながら連打。
――ドン!
――ゴン!
――ズガン!!
殴るたびに、人が飛ぶ。
逃げようとした後列に、翼で一気に距離を詰める。
「逃げるの?」
笑顔。
拳。
――ゴシャッ!!
地面に、もう一つ“穴”が増えた。
騎士団の指揮官が剣を抜く。
「全員、防御陣形――!」
遅い。
アリエスは、真上へ跳んだ。
天井すれすれ。
「覚えさせるね」
急降下。
――ドォォンッ!!!!
床が、完全に陥没。
衝撃波が、残っていた全員を吹き飛ばす。
騎士団、混成隊、関係ない。
全員、地面に転がった。
静寂。
呻き声。
誰も、立てない。
アリエスは、ゆっくり歩いて指揮官の前に立つ。
「ねえ」
屈み、目を合わせる。
「横取りってさ」
拳を、すぐ横の壁に叩き込む。
――ゴォンッ!!
壁が砕け、
天井から岩が落ちる。
「次やったら、
人じゃなくて街を壊すから」
指揮官の顔から、血の気が引いた。
「……り、了解……」
外套の男たちも、必死に頷く。
誰も、逆らわない。
恐怖は、十分に刻まれた。
⸻
アリエスは、振り返る。
床に転がる核の破片。
「成果は――」
拳を握る。
「私の」
誰も、否定しなかった。
視界に、通知が浮かぶ。
《成果確定》
S級案件:正式撃破認定
脅威排除:完了
他勢力干渉:沈黙
「よし」
翼を広げ、出口へ向かう。
背後では、
二度と逆らわない者たちが、震えていた。
アリエスは、空を見上げて呟く。
「横取りするなら、殴られる覚悟してからにして」
空から来た少女は、
恐怖ごと、支配した。




