第10話 本体覚醒――見えない“核”
地下施設の奥で、音が変わった。
低く、重く、規則的。
端末の金属音とは違う――脈動だ。
「……来た」
アリエスは足を止め、拳を握る。
胸の奥が、さっきよりも静かだ。
高鳴りではない。研ぎ澄まされる感じ。
通路の先、広間に出た瞬間、空気が歪んだ。
天井が高い。
円形の床。
中央に、何もない。
なのに――圧がある。
視界が切り替わる。
《ステータス・オーバールック》
対象:???
分類:本体
Lv:???
HP:???
MP:???
特記事項:
・中枢核:不可視
・空間干渉:強
・端末との完全同期
「……核、見えないんだ」
その瞬間、床が沈んだ。
――ズンッ!!
アリエスは即座に跳ぶ。
翼で加速し、天井近くまで上昇。
次の瞬間、何かが通った。
見えない。
だが、空気が裂ける音だけが残る。
「攻撃も見えないって、厄介だなあ」
笑っているが、油断はない。
周囲の空間に、歪みが走る。
床、壁、天井――同時に。
――ドゴォンッ!!
衝撃が、四方から叩きつけられる。
アリエスは翼で姿勢を制御し、真正面から受け止めた。
――ガンッ!!
骨に響く衝撃。
だが、吹き飛ばされない。
「……私、すごい」
そのまま、着地。
足元に走る微細な表示。
補足解析:
・攻撃発生点:空間歪曲
・核は歪曲の中心に存在
「中心、ね」
アリエスは、あえて動かない。
次の歪みを待つ。
――来る。
床の一点が、わずかに沈む。
「そこ!」
翼で一気に踏み込み、
何もない空間を殴った。
――ゴォンッ!!!
手応え。
確かに、当たった。
空間が、悲鳴を上げるように震える。
不可視対象にダメージ確認
リンク負荷:上昇
「やっぱり、殴れる」
本体が反応した。
広間全体が、うねる。
壁から、天井から、端末が次々に出現。
「多いな……」
だが、問題ない。
《最適破壊ルート(暫定)》
① 端末を無視
② 歪曲中心へ連撃
③ 負荷限界を超過させる
成功率:72%
「無視で行こ」
端末の攻撃を、翼で弾く。
避けない。耐えて前に出る。
――ガッ!
――ズドン!
拳を、同じ空間に叩き込み続ける。
「見えなくてもさ!」
一撃、二撃、三撃。
「そこにあるなら!」
――ドォォンッ!!!
空間が、割れた。
不可視だった何かが、輪郭を持つ。
光る核。
歪んだ結晶体。
中枢核:露出
防御低下:大
「やっと出た」
アリエスは、上空へ跳ぶ。
真上から、
全力急降下。
――ズガァァンッ!!!!
核が砕け、
衝撃波が広間を満たす。
端末が、同時に沈黙した。
静寂。
⸻
視界に、光が走る。
戦闘終了
本体撃破
獲得EXP:6,420
(S級相当撃破補正)
レベルアップ!
Lv 4 → Lv 6
「……二つも上がった」
更新された数値が並ぶ。
STR:120(+8)
VIT:90(+8)
DEX:72(+4)
新規獲得:
・不可視感知 Lv1
「見えないの、次からは見えるね」
アリエスは、満足そうに息を吐いた。
胸の奥が、完全に静かだ。
(……あー、スッキリ)
殴って、解決。
やっぱり、それが一番だ。
だが――
広間の奥で、別の反応が動いた。
警告:
・外部干渉接近
・複数勢力確認
「……まだ続く?」
アリエスは拳を鳴らし、笑った。
「いいよ。全部まとめて来なよ」
S級案件は、終わったばかりだった。




