表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

君なんて。

作者: あおりんご

君と私が出会ったのは小学二年生の時。

私と君はなんだか似ていて、私たちはすぐに打ち解けた。

ある日君は私に言った。



「私たち、ずっと親友だよ!」



中学一年生の夏のこと。

親友だ、と嬉しそうに笑っていた君はここには居ない。

その代わりか、冷たい眼差しで私を見下ろす君が僕の前に立っている。


昔の君は私より背が低かったのに、いつの間にか10センチほどの身長差が生まれてしまっている。そのせいか君は前よりずっと大人っぽく見えて、少し遠い存在になってしまったような、そんな気がした。


明るく振る舞っているように見えるが、私にはその目の奥になんとも言えぬ冷たさがあるような気がして、私はなんとなく、私を見下ろしている君と目をそらした。


君は昔と打って変わって積極的に人と話している。なぜかなんて私にはわからない。


私たちは吹奏楽部で、現在はコンクールに向けての練習に力を入れている。

パートの違う私たちは別室練習のため、基礎練でも顔を合わすことがほとんど無い。

部活で顔を合わせるときといえば、出欠確認や全体練習の時くらいで、喋ることなどほとんど無いに等しい。私はいつも笑顔の君の横顔を遠くから眺めているだけ。


何故ここまで変わってしまったのかは私にはわからない。

君が変わってしまっても私はずっと親友だと思っているし、変わってしまった君も嫌いじゃない。

でも、君の態度はまるで私を忘れてしまったかのようで、少し胸が締め付けられた。そんな気がした。でも君はみんなに明るく接していて、私は嫌われてしまったんじゃないかとも思う。忘れられてないだけいくらかマシだが、やはりこちらの仮説でも寂しいことには変わりない。


昔と比べ大分口が悪くなったであろう君は、今日も友達と笑い合っていて。

もし隣に立っているのが自分だったらどうだろうかと妄想する。

君と壁を挟んで向こう側で静かに私は呟いた。




ーーー




君と出会ったのはいつだっけかな。

何年も前に君と出会った時は心底驚いた。だって僕と似たような人間が現れるのだから。

外見なんてものじゃなくて、内面が。情緒豊かで、でもそれを表に出すことが不得意なとこ。

運動が苦手で勉強が好きなとこ。友達が大好きで、でも人付き合いが上手くないとこ。

全部そっくりで本当びっくりしたっけな。


中一の夏。

君はあれからずっと変わってなかったけれど、なんだか少し寂しそうで、昔のように頼ってくれたらいいのになと思う。

コンクールの日が近づくにつれて不安感が募っていくが、失敗するわけにはいかない。


ー『結局``天才``ってこんなものなのか。全然ダメじゃんw』


嫌な過去が僕の脳内を侵食していく。

そのたびに吐き気がするが、これももう慣れたものだ。

でもこんな僕なんて・・・と君に会う度に思ってしまう。釣り合わない、と。


君のことは嫌いじゃないし、むしろ好感を持っている。

でも、君は僕のことを忘れて生きていて欲しい。失敗作の僕なんか捨てて、別の人と親友として仲良くしていけばいい。そうしても僕は君を責めないし、むしろ、そうして欲しい。


小学校のことをふと思い出す。嫌われたくなくて感情を押し殺していたとき。応えるたびに高まっていく期待を裏切ってしまったとき。いつの間にか貼られたレッテルと本当の僕の違いに失望する友達を見たとき。


ー「親友」に裏切られて何も解らなくなったとき。


苦しくてもどこか他人事のように考えてしまう僕はきっとみんなの言う通り、ロボットやアンドロイドなのだろうか。・・・失敗作の。


もう失うものなど無くなって。何も感じなくなって。レッテルを貼られて、それに応えて。過去など全部捨てていって。そんな毎日の繰り返し。


我ながら意味の無い人生だと思う。そもそもこれは人生なのかとくだらないことを考える。


誰よりも信じてる、君は僕のことを忘れているかな。

変わった僕の事なんて気づいていないかもしれない。

気づいていてもあの約束なんてとっくに忘れているだろう。


ー私たち、ずっと親友だよ!


昔、僕が発した言葉がやまびこの様に僕の頭の中で反響する。

きっと君には聞こえているんだろうが、小さな声で呟く。




ーーー




 20XX/3/2

 ■■■へ

 はなれてもずっと元気でいてね。

 でもはなれてもだいじょうぶだよね。だって私たち■■だもん☆

 ・・・もしかしたらもっと大事な人ができるかもしれない。やさしいもんね。

 きっとたくさんの人■■■■るんじゃないかな、なんて。

 ちょっとやきもちやいちゃうなぁ。好かれる人が■■■■しい。

 最後にこれだけはおぼえといてね。

 私ははなれても、ず■■■友だと思ってるからね?

 じゃあま■■■■!ばいばい!




ーーー




棚の奥に置いてあった手紙は君からのもので、それはきっと二年生の時のこと。

読んでいくうちに涙で滲んでしまった文字は、もう読めなくなってしまった。

お返しに、と私もスマホを開き、メッセージを送ろうとする。


昔の約束って、まだ覚え|

昔の約束って、ま|

昔の約|


やっぱり無理。そんな事送れるわけがない。

どれだけ好きでも伝えれない。なんだか少し悔しくて軽く下唇を噛む。

タイムスリップできたら、絶対二年生の頃に戻って、なんとかして親友のままいれるようにするのに。なんて馬鹿な妄想をする。


そんなことができたら、苦しい思いなんてしなくていいのに。


そんな妄想をしてる暇はない。今日も塾がある。

急いで行かなければならないのだが、時間が無いため、急いで手紙を机に置く。


ー妄想はいつでもできるから。



ーーー



(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ)

ここ数時間君のことしか考えられない。


僕を昔蔑んでたあの子。親友と一緒になって僕を陥れたあの子。見て見ぬふりをして何もしてくれなかったあの子。何で何で何で彼奴らなんかが君と一緒にっ・・・!


考えてる間に手は勝手に動く。腕、足、顔・・・。順番に己の爪で引っ掻いていく。赤く腫れ、ぷっくりと腫れ上がったそれはヒリヒリするが、気にしない。気にする余裕なんてない。


気づけば僕は自分の首に手を添えていて。

首を絞める力を強くしていく。少しづつ、少しづつ。


しばらくそんなことを続けていると、ふいに凸凹としたものに手が当たった。

どうやら頸動脈だけでなく喉仏まで絞めてしまったようで、呼吸がしづらい。


(苦しっ・・・あ、でも・・・)


ーこれで僕が倒れたら、君は僕を心配してくれるのかな。優しいもんね。きっとそうだよ。

 僕が倒れたら君は僕を見てくれる?

 見てくれるよね?


だって、優しいもんね。



ーーー



君が自室で倒れていた。そんな事を顧問が言っていた。

命に別状はなく、意識も戻っているらしい。

でも君は家のベットで呆けたように窓の外を見続けている様で、顧問は

「そろそろ精神病院に入れられる可能性がある」と神妙な顔で言っていた。


ただ窓の外を見続けていただけで精神病院になんか普通は入れられないだろう。

何故倒れたかは聞いていない。聞かされていない。


もしかしたら・・・


私の頭に浮かぶ最悪な妄想を何とか振り払う。

そんなはずない。君がそんなこと・・・するはずないよね?


その日吹いたクラリネットは、何だか弱々しい音色を奏でていた。


部活終わり、家に帰るよりも前に、君の家へと向かう。

この時間帯には私の親は帰ってこないし、何なら三日間出張である。


(空を飛べたらもっと君の家に早く行けるのに。)


悔しく思っている暇なんてない。一刻も早く君の家に向かうべく、僕は久しぶりに全力で走った。


ーーー


今日、窓の外には二人の小学生が写っていた。

ニコニコと屈託無く笑う様は、ほとんどの人には微笑ましく映るだろうが、今の僕にとっては完全に目の毒になっている。


目を伏せてカーテンを閉めると、電気のついてない部屋は夕方のように暗くなる。

外は晴天で、蝉がうるさく鳴いているって言うのに。


今この家には親が居ない。兄弟も居ないため、完全にひとりぼっちだ。

ひとりぼっちなんて今更気にするほど僕は弱くない。


ーピンポーン


宅急便かな。と服を軽く整え、ドアスコープをのぞき込む。不審者だったらいけない。


ーえっ・・・


と僕が息をのんだ瞬間、君は不思議そうにドアスコープをのぞき込んでくる。

向こう側からは見えないはずなのに、なんとなく君と見つめ合っている気がして、僕はふいっと顔をそらした。頬が少し赤くなっているのが自分でもわかる。玄関にある鏡を見るまでもないだろう。


君が僕を心配してくれているのは表情でわかった。それは、単に部活の仲間と言う理由で心配してくれているのか。それとも、昔の約束を覚えてくれているからなのか、僕にはわからない。


心配してくれているのに、そんな事を考えてしまって申し訳ないと思う一方、後者だったらいいなと勝手に淡い期待をしてしまっている僕自身に嫌気が差す。


軽く深呼吸をしてから、ドアを開ける。

そのドアは毎日のように開けているはずなのに、今日はいつもより重く感じた。


「大丈夫?なんか困ってることない?部活来なくて心配で来ちゃった。」


申し訳なさそうに言う君の頬は少し赤らんでいて、息も少し弾んでいる。それに制服姿のまま。

僕を心配して走ってきてくれたのか。と嬉しい反面、申し訳なさが募る。


「ご、ごめん。心配させちゃって。」

「なんで謝るの?私が勝手にしたことなのに。」

「だって・・・」


好きだからなんて言えない。そんなこと言えるはずがない。大切な親友だったのはとっくの昔。


「ごめん、何でもないよ。どーぞ、家上がって。」

「あ、ごめん、ありがとう。お邪魔します。」


僕の部屋ではなく、リビングに連れて行く。そうして君と向かい合って座る。


「部活以外で会うことなんてないから、変な感じ。」


僕がそう言ったときに少しだけ君の顔が曇った気がしたのはきっと気のせいだろう。


他愛ない雑談をしていく。そうするうちに時間はどんどん過ぎていく。

気づけばもう辺りは暗くなり始めていて、君は家に帰っていった。

君の姿が見えなくなってから僕は手を一人振って、少しだけ寂しくなった。


僕の思いが伝わることはきっと無いのだろう。


これまでも。これからも。


そんな思いを抱えながら、振った左手を優しく握りしめた。

小説って難しいです・・・

誤字脱字等あればすみません<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ