第18章、小さなご褒美
朝、蒼の家にはすでに6人全員が集合していた。
リビングには、プリントやノート、教科書が一面に広がり、カリカリと鉛筆の音が静かに響いていた。
「えーと、この問題って……あっ、わかった!」
結愛が嬉しそうに手を打つと、美音が「それ解けたの!? わかんない~!」と隣で騒ぐ。
「美音、そこは公式を入れ替えて……はい、これ」
こはくがすかさずメモに式を書いて渡す。
「さすがこはく先生……!」と感嘆の声があがる。
そして、午前10時を回った頃――
「よしっ……とりあえず、午前の部はここまでにしようか」
蒼が時計を見ながら声をかけると、みんなが一斉に鉛筆を置いた。
「ふぇぇぇぇ、つ、疲れた……」
結愛が倒れこむようにソファに沈み、美音もぐったりと寄りかかる。
「ねえ、これだけ頑張ったんだし……なんか甘いものとか食べたくない?」
美音がポツリと提案すると、全員が食いついた。
「お菓子パーティー!?」 「それ、いいじゃん!」 「もう勉強だけじゃやってられないしね」
「じゃあさ、昼までに買い出し行って、午後はパーティーしようよ!」
結愛が両手を上げてテンション高く叫ぶ。
「決まりだな。……ジャンケンで買い出し組、決めよっか」
蒼がニヤリと笑い、全員でジャンケン大会が始まる。
結果――
買い出し組:美音・理玖・結愛
留守番組:蒼・こはく・凪
「やった~! スーパー行ってくる! お菓子いっぱい買ってくるからねー!」
美音たちは元気に玄関を飛び出し、残された3人は一瞬だけ静寂に包まれた。
「……さて。私たちは準備だね」
こはくがにこやかに言い、蒼も「だな」と頷く。
キッチンでは、紙皿やコップ、コースターなどを探しながら、静かに会話が始まった。
「……ねえ、蒼くん」
「ん?」
「今日、すごく頑張ってたね。ちゃんと予習してきたんだね」
「まあ……昨日は寝る前にこはくの顔が浮かんで、勉強も捗ったってだけ」
「またそういうこと言うー」
こはくが少し赤くなって、照れ笑いを浮かべた。
その横では、凪が無言でお菓子用の皿を並べていた。
2人のやりとりに気づいているのか、いないのか……その表情からは読み取れない。
そして――買い出し組が帰宅。
テーブルの上には、大量のお菓子が並び始めた。
「じゃ~ん! チョコにポテチにグミに、プリンまで買ってきたよ!」
「甘いのとしょっぱいののバランス、完璧っしょ」
「美音、また自分の好きなものばっかり……」
「うっ、それは否定できない……!」
和気あいあいとした雰囲気の中、テーブルには色とりどりのスナックが並び、
ペットボトルのジュースもキンキンに冷えていた。
「じゃあ、午後の部――
お菓子パーティー、スタートーっ!!」
みんなの歓声が、蒼の家に広がっていった。
こはくは、ふと蒼の隣に座りながら、小さな声で言った。
「こういう時間、幸せだね」
「うん……俺も、そう思う」
そっと、テーブルの下で手が触れ合いそうになったけど――
誰にも気づかれないように、そっと引っ込めた。
二人だけの秘密は、甘いお菓子の香りと一緒に、静かに部屋に溶けていった。
第18章でした。勉強終わって、お菓子パーティーが始まった!みんなでお疲れ様会だな