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恋の白狐  作者: にゃふ
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第11章、夜の海辺

次の日、朝から晴れ渡った空の下、蒼たちは海で遊ぶことになった。


美音は「さあ、みんなで泳ごう!」と声をかけ、みんな一斉に水着に着替えて浜辺に集まった。


 


「うわ、すごい暑い!」

こはくが笑いながら水辺に足を踏み入れると、冷たい海水が足元を包んでいった。

みんなも次々に海に入っていき、賑やかな声が響く。


 


蒼は少し躊躇しながらも、波に足を取られながら歩いていった。

水に慣れると、体がリラックスしてきた。


 


「こはく、大丈夫か?」

蒼が声をかけると、こはくはうれしそうに顔を上げて答える。


 


「うん、大丈夫!むしろ、気持ちいい!」

こはくは波と戯れながら、楽しそうに笑った。

その笑顔に、蒼は少し心が温かくなる。


 


でも、すぐにみんながやってきて、「こっちに来て!」と呼ばれてしまった。

賑やかな騒ぎに、会話を続ける暇もなく、蒼とこはくはそれぞれ他のメンバーと一緒に遊び始めた。


 


昼間はみんなで海のアクティビティを楽しみ、昼食を挟んで再びビーチで遊ぶ時間が続いた。

美音と理玖は貝殻を集めて遊んでいたり、凪は少し離れたところで本を読んでいる。


 


そんな中で、蒼はふとこはくを探していた。

だが、どこにもこはくの姿は見当たらない。

焦って辺りを見渡すと、少し離れた岩場のところでこはくが一人で波を見つめているのを見つけた。


 


「こはく……?」

蒼が声をかけると、こはくは驚いた顔をして振り返る。


 


「蒼くん……!」


 


その表情に、蒼は一瞬だけドキリとした。

こはくの目が、何かを伝えようとしているようにも見えたが、すぐにこはくは視線を下に向け、軽く頭を振った。


 


「何かあったか?」

蒼が少し不安そうに尋ねると、こはくは首を振って答える。

「ううん、なんでもない。ただ、ちょっと海を見たくなって」


 


「……そうか」

蒼はそれに少し安心して、こはくの隣に並んだ。

しばらく無言で海の音を聞きながら立っていたが、こはくがぽつりと口を開く。


 


「蒼くん、あの時、私、どう思ってたんだろうね」

こはくは少し顔を赤らめながら、遠くを見つめて言った。


 


その言葉に、蒼は驚き、思わずこはくに顔を向ける。


 


「どうって……?」


 


こはくは少し考えるように口を閉じ、また海を見つめた。

「なんて言ったらいいのかな、私も蒼くんに言いたかったことがあるけど、うまく言葉にできなかったから」


 


その瞬間、蒼の胸が高鳴る。

こはくの言葉に、少し期待しながらも、気持ちをうまく言葉にできない自分がもどかしく感じた。


 


「こはく……」

思わず声をかけると、こはくは微笑んで言った。


 


「でも、今はこうやって、ちょっとだけ一緒にいられてうれしい。ありがとう」


 


その言葉に、蒼は心の中で少し安心した。

でも、同時に心のどこかで、もっと言いたいことがあった。


 


その時、遠くから「蒼くーん、こはくーん、こっちに来て!」と美音の声が響いてきた。


 


「また、呼ばれてるな」

蒼が微笑むと、こはくも頷きながら立ち上がった。


 


「うん、行こうか」


 


二人は歩き始めたが、その背中を見送るように、海の波音が静かに響いていた。


 


***


 


夕方が近づく頃、再びみんなで集まって、夜の海辺へと足を運ぶことになった。

波の音が静かに広がり、夜の空気が涼しくなってきた。


 


美音が言った。


 


「じゃあ、今度はみんなで海辺で話そう!ちょっとだけ、静かな時間を楽しんでみよう!」


 


みんなが集まり、波の音だけが聞こえる静かな夜の海。

その中で、蒼とこはくは少し離れた場所で、また何かを話すことになった。


 


今度こそ、ちゃんと話す時間を取れるだろうか――そんなことを考えながら、蒼はこはくを見つめた。


波の音が静かに響く夜の海辺。

夕日が海に沈みかける頃、蒼とこはくは二人だけの時間を持つことができた。


 


しばらく黙って海を見つめていた蒼は、やがて静かに口を開いた。


 


「こはく、前のこと、覚えてる?」

蒼がそう言うと、こはくは驚いた顔をして蒼を見つめた。

その表情に、蒼は一瞬だけ自分の心臓が高鳴るのを感じた。


 


「うん、覚えてる……」

こはくの声は少し震えていた。

何か言いたいことがあるような気がしたが、どうしてもその言葉が出せない。

蒼も、同じような気持ちを抱えていた。


 


「前、俺……あの時、こはくに告白したんだよな」

蒼が少し恥ずかしそうに言うと、こはくは目を伏せて少しだけ笑った。


 


「うん、覚えてる。あの時、私も正直どうしていいかわからなくて……」

こはくの言葉に、蒼は深く息を吸った。

そして、少し照れくさそうに言葉を続けた。


 


「でも、あの告白の気持ち……今も変わらないんだ。むしろ、あの時よりもっと強くなってるって思う」

蒼の言葉に、こはくは目を見開いた。


 


「蒼くん……」

こはくは少しだけ驚きの表情を浮かべながらも、すぐにその視線を蒼に合わせた。


 


「だから、もう一度言わせてほしい。俺、こはくのことが好きだ。今も、これからもずっと」

その言葉を聞いた瞬間、こはくの胸が大きく高鳴った。

まるで時間が止まったかのように、言葉の重みが心に染み込んでいく。


 


「私も……蒼くんが好き」

こはくは静かに答えた。

その声は、心の奥底から湧き上がってきた本当の気持ちだった。


 


蒼はその言葉に、少し涙が滲みそうになるのを感じた。

自分の気持ちを伝えた時、やっとその答えが返ってきたのだと実感できた。

こはくの目を見つめながら、蒼は穏やかな笑みを浮かべた。


 


「じゃあ……俺たち、付き合ってるってことだな?」

少し照れながら言うと、こはくは頬を赤らめながら小さく頷いた。


 


「うん、付き合ってる。でも……」

こはくは少し躊躇してから、続けた。

「でも、まだみんなには内緒だよね?今は二人だけの秘密で」


 


その言葉に、蒼は軽く笑って頷いた。


 


「そうだな。今は、少しだけ二人だけの時間を楽しもう。でも、きっとそのうち、みんなにも伝えなきゃいけない時が来るだろうけど……今は、こはくとの時間を大切にしたいから」

蒼の言葉に、こはくは静かに頷いた。


 


「私も、今はこうして二人でいるのが幸せだよ。だから、しばらくは秘密にしておこうね」 

こはくの言葉に、蒼は満足そうに微笑んだ。


 


「うん、ありがとう。こはくがそう言ってくれてうれしい」

蒼はしばらくこはくの手を握りながら、その温もりを感じていた。


 


「でも、ちょっとだけ気になることがあるんだ」

こはくが顔を上げて、少し困ったように言うと、蒼は不安そうに彼女を見つめた。


 


「何だ?」

蒼が心配そうに尋ねると、こはくは少し照れたように言った。


 


「蒼くん、私たちって、どうやってみんなに伝えるのかなって思って……」

その言葉に、蒼は少し笑って答えた。


 


「それは、ちょっとだけ時間が必要かもしれないけど、みんなに伝える方法も考えなきゃな。でも、焦ることはないよ」

蒼は優しくこはくの頭を軽く撫でながら言った。


 


「うん、焦らない。私たちのペースで、少しずつ進んでいけばいいんだよね」

こはくはそう言って、蒼の肩に寄り添うように寄ってきた。


 


二人はしばらく、静かな海の音を聞きながら並んで座っていた。

海の波が静かに寄せては返し、その音が心地よく二人の心を包み込んでいった。


 


――これから先、二人で歩んでいく道が、どんなものになるのかはわからないけれど、今この瞬間だけは、二人だけの時間が永遠に続いてほしいと、蒼は心の中で願った。


 


そして、やがて夜空に星が輝き始め、静かな海辺に二人の笑い声が響いた。

第11章でした。ついに二人は付き合うことはできたが、まだ周りには内緒!まだまだ続けて書いていきますよ!そして今日は長めです

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