第1章、変わらない朝、変わっていく心
はじめて小説書きました。っといっても少しサポーターも入ってるけど、楽しんでもらえたらうれしいです
春の風が、窓の隙間から吹き込んでくる。
肌寒さがわずかに残る朝。
黒川蒼は、カーテン越しに差し込む光をまぶたに感じながら、ベッドから体を起こした。
高校2年生になって数日が経つ。
クラス替えもあったけど、目立って変わったことはない。
淡々と、去年と同じような日常が始まる──はずだった。
だけど、どこかが、少しだけ違う。
「……あと2分、か」
蒼は時計に目をやり、呟いた。
彼の家のチャイムが鳴るのは、いつも午前7時30分。
それは、何年も変わらない決まりごとのようなものだった。
ピンポーン。
その音に導かれるように、蒼は無言で玄関へ向かう。
ドアを開けると、そこには——
「おはよう、蒼くん!」
笑顔。
まぶしいくらいに明るい声。
紡績こはく。
蒼の幼なじみで、隣の家に住んでいる。
昔から髪が白く、周りからは白狐と呼ばれている。
小学校から今まで、ずっと一緒だった。
クラスも同じ。帰る方向も同じ。
「…おはよう」
短く挨拶を返すと、こはくはにこにこと笑って言った。
「今日も無事に迎えに来てあげました。感謝してね」
「……いつから“義務”になったんだ、それ」
「むぅ〜、義務じゃないけど! 蒼くん、ほっといたら時間ギリギリまで家にいそうなんだもん」
蒼は言い返さず、肩をすくめるようにして歩き出す。
こはくはその隣にぴったりと寄り添って、何でもない話を弾ませていた。
——それが、いつも通りの朝。
でも、今日は少しだけ違った。
「ねえ、蒼くん」
「ん?」
「……私ね、好きな人ができたかもしれない」
こはくは、ふわっと笑っていた。
けれど、その言葉だけが、蒼の胸に引っかかって離れなかった。
学校に着くと、こはくはすぐに他のクラスメイトに囲まれていた。
「こはく〜!今日の髪型かわいい〜!」
「生徒会の資料、ありがとね!」
そんな声が飛び交う中、彼女はにこにこしながら、誰に対しても分け隔てなく応えていた。
蒼は、その光景を教室の隅の席から静かに見ていた。
隣に誰かいるわけでもなく、特に話しかけられることもなく、いつものように。
……ただ、今日は、少しだけ違う感情が胸の奥にあった。
(好きな人、か……)
こはくが言った、たった一言。
それが、頭の中で何度もリピートされていた。
誰だ。
どんなヤツだ。
どうして、それを俺に言ったんだ。
(いや、関係ないだろ。俺には……)
「黒川くーん? 今日もまた“こはくウォッチャー”してるの?」
隣の席の女子に茶化されて、蒼は軽く眉を動かした。
「……見てたわけじゃない」
「ふーん、でも目線、完全にそっち向いてたよ?」
女子はクスクスと笑って席に戻っていった。
蒼は窓の外に視線を逸らしながら、心の中で深く息を吐いた。
(……何なんだよ、)
放課後。
チャイムが鳴って、クラスのざわめきが一気に廊下へと流れていく。
蒼は荷物をまとめながら、ちらりと隣の席を見る。
こはくは、誰かと何か話していた。
男子。昨日同じ班になったとか言っていた、柔らかい雰囲気のやつだ。
楽しそうに笑うこはくの声が、やけに耳に残った。
(ああいうの、なのか?)
何が“ああいうの”なのか、自分でもよく分からない。
けど、胸の奥がきゅっと締め付けられる感覚だけは、確かにあった。
「蒼くん、帰ろ!」
いつの間にか隣にいたこはくが、明るい声で言った。
それに対して、蒼はわずかに頷くだけだった。
二人並んで、校門を出る。
まだ太陽が傾き始めたくらいの時間。
春の風がやわらかく吹き抜けていく。
「ねぇねぇ、今日の数学のプリント、ちょっとむずかしくなかった?」
「……お前が難しいって思うなら、俺はもう諦めた方がいいかもな」
「それ褒めてる? けなしてる?」
笑いながら、こはくは蒼の肩を軽く小突く。
その何気ない仕草に、蒼はほんの少しだけ、心が落ち着くのを感じた。
けれど、次の瞬間。
「ね、さっきの話……」
「……好きな人ができたってやつか」
「うん、そう。それ」
こはくは前を向いたまま、風に髪を揺らしながら続けた。
「なんだろうな。ちゃんと『好き』って言えるほど、まだはっきりしてないんだけど……その人のこと考えると、ちょっとだけ胸が苦しくなるっていうか」
「……」
「でも、それが何なのか、自分でもよく分からなくてさ。変だよね、私」
蒼は立ち止まり、ほんのわずかに視線を落とした。
その横顔を、こはくは気づかずに前を歩き続ける。
「本気なのか、それ」
自分でも、なぜその言葉が口をついて出たのか分からなかった。
聞くつもりなんてなかったのに。
でも、こはくは一歩前で、ふわりと微笑んだ。
「……うん。たぶんね」
こはくのその言葉が、夕焼けよりも胸に焼き付いた。
見てくれてありがとうございます!サポーターとしてchatGPTにも手伝ってもらったので、chatGPTと自分は一つです。最初は頼っていくけど、これからは自分の力で進めていきたいと思いますので、温かい目で見てくれると嬉しいです。