第四話 とんだ無感動の再会
「千晴坊ちゃま... ...大きくなられて... ...」執事老人は涙を流していた。
そしてその横で、
「ちーちゃん!お帰り!ユキの事また見えるようになったのねぇ!」
とこれまた泣きじゃくっている探偵風幼女。
他の二人とは対照的に、黙ったま千晴をじっと見ているゴスロリ少女。
このような特殊な恰好をした三人に出迎えられて、千晴はすっかり放心状態であった。
状況を察した執事老人が、
「覚えていないのも無理はありませんね。我々と一緒に過ごしたのは坊ちゃまが三才まででしたので。改めて、私は瀬尾と言います。瀬尾という名前は晴一朗様に付けて頂いたのです。こちらの少女はユキ、その後ろにいるのがリズ。皆、この探偵社で晴一朗様と晴司様のお手伝いをしておりました」
と自分たちの自己紹介をした。
全く彼らの言っていることが頭に入ってこず、今すぐにこの変態巣窟から出ていきたかった千晴だったが、戸口付近には縁珠がいるので出来ない。
もうこうなったら怒らせないようになんとかやり過ごして、隙ができたら後々逃げることに決めた。
話を合わせて妄想に付き合うふりをしようと彼らの設定を理解することから始めた。
「祖父と父と一緒に。お手伝いってどんな?」
この千晴の問いにユキが待ってましたといった感じで、
「あのね、妖とか霊とか生霊とか、人間じゃない奴らが関わってる依頼を解決するのをお手伝いしてたの。すっごく楽しかったよ!ユキが探偵のお手伝いしてたのは、ちょっとの間だったから残念だったけど、一回だけ解決したんだよ、美少女探偵ミラクみたいに!」と得意げに言う。
すかさず瀬尾という老人も、
「ええ、ええ、あの頃は本当に楽しかったですね。私も愛読書の執事 セオドール・クレイトンの事件簿の主人公セオドールさながら、私の溢れ出る知識の泉が依頼解決の糸口になったことも多々ありました」と続け、話が止まりそうにない。
(設定が細かすぎる... ... いや、こいつらにとっては設定じゃなくて妄想が真実になっているんだろうな。これはやばいぞ... ...)
千晴は悟られないように、そろそろ警察へ電話しようかと、スマホに手をかけようと試みるが、ゴスロリ少女リズの「設定でも妄想でもないわよ。本当のことだから」という言葉に遮られた。
「え?...」千晴の驚きに間髪入れずリズは続ける。
「私、人の心が読めるのよね。随分うちらのことぼろくそに言ってくれて。コスプレ、妄想、変態の巣窟とか。信じてないみたいだから、試してみる?何か心の中で言ってみてよ。想像でもいいわよ。気が済むまで全部言い当ててあげるから」
というリズの挑発に、
「そこまで言うなら。じゃ、もしお前が全部当てられなかったら、俺はここを出ていくから、危害を加えないことを約束してくれ」と千晴が提案する。
「いいわよ、それで」
影山は、変態なんてひどい!とピギャーと泣いているユキをなだめ、「では始めますか。坊ちゃん、そしてリズの順で。スタート!」と言う。
千晴 (ツインテールの青髭のおじさんがハート柄のビキニを着て高さ50センチはあるパフェの大食いチャレンジをするが失敗して泣いている)
リズ「ツインテールの青髭のおじさんがハート柄のビキニを着て高さ50センチはあるパフェの大食いチャレンジをするが失敗して泣いている」
千晴 (猫耳のサンタが買い物でスタンプカードが全部埋まったので猫サンタのマスコットが貰えるとウキウキして店員に言ったらスタンプカードが期限切れで貰えず膝を突いて泣き崩れた)
リズ「猫耳のサンタが買い物でスタンプカードが全部埋まったので猫サンタのマスコットが貰えるとウキウキして店員に言ったらスタンプカードが期限切れで貰えず膝を突いて泣き崩れた」
千晴 (サラリーマンが帰宅中UFOが目の前で着陸し中から鉢巻と腹巻姿のおじさんが出てきてラーメン屋台の準備を始めて旦那食べていくかい?と言われ、なんだラーメン屋かと折角なので食べたら美味しかったのでリピーターになることに決めた)
リズ「サラリーマンが帰宅中UFOが目の前で着陸し中から鉢巻と腹巻姿のおじさんが出てきてラーメン屋台の準備を始めて旦那食べていくかい?と言われ、なんだラーメン屋かと折角なので食べたら美味しかったのでリピーターになることに決めた。ってちょっと!!長いわよ!それに何!?おじさん率高いし、シュール過ぎるのよ!こう、りんご、ゴリラとかもっと短いのでも十分でしょ!」
とリズは腰に手を当て息を切らしながら怒りを露わにした。
「マジか...」と頭を抱える千晴。
「さすがに信じてくれたわよね?」
「超能力が使える変態集団なのか... ...」
「Noーーーーーー!!!」
妖三人はムンクの叫びのような表情で最上級の絶望感を表し、雄たけびを上げた。
「仕方ないですね。我々は瞬時に姿を変えられるのですよ。人間には出来ない事です」
そう言って縁珠は三人に目くばせをして、
縁珠は狐の妖狐姿に、影山は杖を持った仙人のような姿に、ユキは白い着物を着た姿に、リズは大正時代の袴姿にそれぞれ一瞬で変化した。
「へーーんしん!ユキたち凄いでしょ!」
それを見て、朝から情報量が多く、脳内での処理が追いつかず疲れた千晴は、
「お前たちが人間じゃないのかもしれないし、ただ自分が幻覚を見ているのかもしれない。でももう... ... どっちでもいい」とうつろな目で言った。
「まぁ無理もありませんね。一つ一つ依頼を解決していく中で、あなたも少しずつ受け入れて行くでしょう。実は依頼が一つ来そうなのですよ」
と言う縁珠の言葉に、影山とゆきは紙吹雪でも撒き始めるんじゃないか、というほど歓喜していた。




