タッグ戦
タッグマッチの部、ルールは単純メンバー二人が一本判定を受けたら負け。
個人戦と違うのは人数だけの試合である。
「対モンスターを想定するなら複数人での試合も重要だな」
アキトはタッグという点を除けば正しい考え方と語りハジメが不思議そうにする。
「人数の差が出ないように考慮されたんじゃ無いんですか?」
「ま、そうなんだろうがな」
実際は知っての通り集団戦になるとアキトが言うと全員は戦いに辟易とした様子で苦笑いする。
アスカとススムペアは総勢16ペアの内何位になれるかと緊張した様子で語り合う。
「個人戦と違って目立って戦績残してる人いないし大丈夫だよね?」
ススムの不安そうな言葉にアスカは油断大敵と熱血漢をチラ見せする。
「皆鍛えてる、早々に負けて恥は晒したくないだろ?」
「それは…そうだね」
当然今回もF班は注目株の一つとして見られていて周囲から睨まれていてススムはビビっている。
個人の部で見せたハジメの動きを既に学習されてしまうある程度の肉弾戦も予期されている中でアスカ達はどう立ち回れるかが勝負の決め手になるとアキトも分析する。
第一試合から出番がある対戦カードを見せられてアスカ達は怯むが決まった以上は仕方ないと前に出る。
対するはB班、二人と同じ構成の剣と槍、地力の見せつけ合いとなる。
アスカは熱くなるがススムは緊張した様子で槍を握る。
試合が始まると同時に二人は左右に広がり相手も釣られて左右に展開、完全に一対一の構図に持ち込み同じ武器同士技量の差を見せつけ合う事になる。
「そりゃ!」
アスカが素早く斬りかかり木剣で受ける相手はその威力に思わずよろける。アキトからの受け売りの言葉を投げ掛ける。
「体幹がなってないぜ!」
そのまま激しく乱打して相手を転倒させて一本勝ち。
ススムも負けられないと槍を素早く連続で突く。
「五月雨突き!」
その速さに相手はついていけず牽制しようとするが槍が弾かれて無防備を晒した所で喉元に槍を突き付けられてススムの一本勝ちとなる。
「やった!勝った!」
技を見せたのは頂けないがとアスカに注意されるものの勝てて良かったと二人ともストレート勝ちな事を喜び合う。
二人はその後の試合をちゃんとチェックして次の戦いに備えようとする。
次の対戦カードはE班とH班の剣と剣がぶつかり合う戦い。ススムは相手が剣ならとニヤリとするがH班が二人で一人を潰しに掛かる動きを見せてヒヤッとする。
タッグならではの二人で一人を狙い撃ちにする策略にアスカも目を凝らして隙は無いかと窺う。あれよあれよという間にE班は二人とも討ち取られ勝負が決着する。
「対策する時間は少ないぞ…どうする?」
「け、剣が相手なら守りを固めれば何とかなるんじゃないかな?」
対策不足ではあるが付け焼き刃でもやらないよりはマシな案を立てる。
横から上手くちょっかいを出せるかが決め手になると狙われたら守り、ガラ空きになった一人が背後から攻めると挟み撃ちにする策を練るのだった。
試合は二回戦になりアスカ達は前に出る。対するH班も前に出て両者緊張した面持ちになる。
試合開始と同時にアスカ達は左右に広がり相手の動きを探る。狙われたのは槍のススム、待っていたとススムは牽制で守りを固めその間にアスカが敵の背後を取る。
「行くぜ!」
わざと声を上げて相手のチームワークを乱す。
ススムが想定より耐えた為にどちらがどちらの相手をするか決めていなかったH班は咄嗟にアスカに向き直りススムに背中を晒してしまう。
「貰った!」
反転して攻勢に出るススムは一気に二人の背を突いて一本取る。打ち合わせ不足だった相手の隙を見事に突くことに成功したアスカ達の勝利となる。
続く試合を注視する二人、剣と槍のJ班に対し双剣二人のD班、ポピュラーなJ班に対してスピード勝負を仕掛けるD班。
ススムが思わず自分だったらと実況する。
「ウソ?!もう槍の間合い外に入られた」
手元がガラ空きになる槍に対して素早く懐に潜り込む敵の手腕と手際の良さに目を丸くする。
手数も多い双剣にアスカも手に汗握る。自分だったらとどう防ぐかどう攻めるかで苦心する。
そして決着を見てススムは一言呟く。
「正攻法じゃ駄目だ…」
「…貰うか、技を」
二人は顔を見合わせて頷くのだった。
三回戦、アスカ達と双剣D班の戦いが始まる。
二人は一人にターゲットを合わせて飛び込む。直前にやられた戦術をブラッシュアップした戦い方を見せる。
直前までタイマン勝負の左右展開であったが急な方針転換に敵も呆気にとられる。パクリだのなんだのと言われる前に手数で勝てないなら手数を増やすを地で行く事にした二人の戦略はガッチリ決まり各個撃破を実現することに成功する。
「イェーイ」
「土壇場で行けるもんだね」
歓喜する二人だったが次が決勝戦と気付いて急に緊張した表情になる。
「え、あ…もうか…」
「トーナメントだから早いね…」
決勝戦の相手はA班、直前の戦闘ではタイマン式を選んだ刀と薙刀の和風ペア。
アスカとススムは勝負は一瞬の判断次第と喝を入れ合って決勝戦に望む。
初手は互いに左右に展開、剣と刀、長物は長物同士の打ち合いになる。
ここまでは戦術だけで戦ってきたアスカも技を見せる時と息巻いて剣を高く構える。その動きに相手も技が来ると気付いて受けの姿勢を素早く取る。
「受けてみろ!兜割り!」
人に対してやっていい威力じゃないとバチィっと激しい音が響き渡る。
一同ポカンとするがアスカの追撃の乱打が入る。圧倒的なゴリ押しに相手の木刀を持つ手が痺れてくる。
「オララララーッ!」
余りの激しさに遂に防御が弾け木剣が首元に当てられて一本勝ちとなる。
その向こうではススムも自己流で編み出した槍の技が炸裂していた。
五月雨突きから始まり槍を回転させて振り回し踊るように接近し薙刀の尖端に叩きつけて相手の姿勢を崩させようとする。
相手は苦しそうに声を漏らすが負けられないと何とか堪える。
「まだまだー!」
槍を短く構えて手を引いてアキトの見せた螺旋突きの技を少し真似る。
回転は流石に出来なかったがリーチを瞬間的に伸ばす技を見せる。
「伸びろ!延伸突き!」
技の性質上寸止めが効かずにそのまま相手をドスッと訓練用の綿が胸部を突く。
「ゴホッゴホッ」
「あ!す、すみません!」
一本勝ちにはなるが危険過ぎたとススムはペコペコと謝るのだった。
最終戦は隠していた技が炸裂する各班の意識を大きく変える試合となるのであった。
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勝利報告をする二人をアキトは軽くチョップして迎える。
「人に向かって技を使うんじゃない!危ないだろ!」
「「す、すみません…」」
少しやり過ぎだと注意するアキトだったがルールの整備の甘さは考えものだなと今後の事を憂う。
F班としては競技は全て終わったがまだ対抗戦は続く。他の競技が始まり運動会の様相を強めていく。
F班は純粋に出たかったなと羨むが人数や体力の問題があると言われてしょんぼりするのだった。
観戦を続けていたがアキトは学長から呼び出しを受けて生徒達に後は任せて移動する。
「何かありましたか?」
直前の試合のことで怒られるのかとおっかなびっくりしながら顔を出すと悪くない笑顔で迎えられる。
「評判通りしっかり勝ってくれて私共は感謝している。お疲れ様だ」
「いやぁ…指導が行き届かなくてあんな危険な技を使わせてしまって…こっちは申し訳ない気持ちで…」
「いや、あれで良い。今後モンスターと対面したら技が必要になるだろう。皆の意識を変革させる為には必要な事だ」
意識の変革とまで言わしめた今回の対抗戦、その真意にアキトは薄々気付いていたが取り敢えず今は結果を残せて安堵するのであった。




