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個人戦

的あての技術の高さを見せつけることが出来たF班、しかし当のカスミは早撃ちで負けた事を珍しく悔しがっていた。


「あとコンマ数秒…私が矢を複数構えられなかったから…」


アキトはそんなカスミを激励する。


「物理的な限界だ。よくやった」


「物理的…あ、魔法の矢を使えば時短出来たんですね…しまった…」


実質私の勝ちとカスミは拳をグッとする。

まだ伸び代があるのかとアキトは乾いた笑いをするのだった。


次は個人戦、ハジメが緊張した面持ちで選手陣に混じり整列する。参加人数は三十二人、順当に行けば五回の戦いで終わる。

注目株は前回準優勝のB班のオウミと優勝C班の森 義政(もり よしまさ)名前を聞いてアキトは「戦国武将かよ」と内心ツッコミを入れる。

お膳立てされた対戦カードでオウミとモリは左右のブロックに別れていた。

ハジメはオウミと同じ右側のブロックで準優勝で当たる好位置にいた。


「F班もそれなりに見られてるって訳だな」


アキトが腕組して呟くとエツコは厳し目の評価を出す。


「強敵と連戦…ハジメの体力が()つかしら?」


「気力の方が心配だな…真面目で息抜きするタイミングがあるかどうか…」


一戦目から出てくるオウミ、対するはA班の選手、勝負は一瞬、両者礼をしてA班の選手が打ち込んだ瞬間にオウミも動きカウンターで胴に深々と一撃入れてダウンさせてまさしく一本勝ち。

勝負は短くアキトの言う通りハジメが緊張を(ほぐ)す時間をくれそうにない雰囲気であった。そしてもう次の試合に入りハジメは一瞬で決まる勝負の世界に手足が震える。


(こ、これは武者震い…ビビってなんかないぞ!)


言い訳を自分にしつつまた一つの試合が終わる。

だんだん近付いてくる自分の出番に震えが最高潮に達した時ピタリと震えが止まり悟りを開く。


(俺にも(とき)が見える…!)


緊張で頭のネジが飛び時間の流れがゆっくりに感じられて何か勘違いしているが見ている試合の敵の動きが実際じっくり見れて自分ならこうするとシミュレートする余裕すら生まれる。

しかし覚醒も長い時間保つことはできず試合の呼び出しを食らって意識が現実に引き戻される。


「F班、升田一歩!…升田ァ!」


「は、はいぃ!」


対戦相手はG班の斧使い、両者礼をして武器を構える。相手は木斧を手にリズムを取るように上下に身体を揺らしている。ハジメも釣られて身体が揺れながら盾をガッチリ構える。挑発のように見えたのか相手は怒り叫ぶ。


「ナメんなテメェ!」


盾でしっかり受け止めて弾き返す。姿勢が崩れてハジメは悠々と首元に木剣を軽く当てて一本勝ちを取る。


「勝者、升田!」


(か、勝っちゃった!)


体幹トレーニングの差が大きく出てアキトの指導に感謝するハジメであった。

その後も一回戦は続き大番狂わせもなく前評判通りの流れであった。


観戦していたアキトは前回優勝者のモリの実力を分析する。


「武器は薙刀、リーチ差を活かした立ち回りで相手を翻弄するテクニック型か…ハジメのガードからの崩しが通り難い相手だな」


アスカが準備運動をしながら同感と頷いて呟く。


「正直当たりたくないですね…」


「とはいえ。決勝は固そうだな…一つ頭抜けてる。オウミってやつもだ、ハジメがどこまで食らいつけるか楽しみではある」


準決勝と決勝は厳しいものになるとアキト達はハジメの健闘を祈るしか出来なかった。


二回戦、オウミの試合から始まりまたもや瞬殺、柔の動きにまたもや対戦相手は翻弄されるのであった。

ハジメの相手はA班の槍使い。槍の相手はススムと何度も練習をやって来たハジメにとっては楽勝で突きを盾の角度調整で受け流し相手をよろけさせてそのまま一本取る。


(よし!ススムよりも弱い!自分でも勝てる!余裕余裕!)


身内よりも弱い相手だと段々緊張の糸も解れてきて顔に余裕が浮かんでくる。

それをアキトは良くない兆候だと険しい顔で分析する。


「あの調子だと油断して命取りになりかねない…」


「悪い癖ってやつですか…」


仲間達からも呆れられるのであった。

モリも順当に勝ち上がりベスト8が出揃う。


三回戦になり勝ち上がって来た選手達の面持ちも険しくなっていてオウミは既に次の敵を無視してハジメを睨み付けていた。


(元同班とはいえここまで成長しているとはダンジョン攻略がそこまで人を変えるものか…?)


オウミは対面の相手を瞬殺してハジメを一瞥してそう考える。

対するハジメは眼の前の相手で精一杯といった様子でH班の双剣使いと相対していた。


(双剣…隙が少ない立ち回りをされると苦しいな…弾き返せたらいいんだけど…)


振り下ろされる剣にパリィを試みるがもう片方の剣で防御姿勢を取られて攻めあぐねる事になる。

均衡している戦況にハジメは技を使う事を決める。


(まだ隠していたかったが仕方ないな…行くぜ!)


軽く腰を落として盾を突き出し突進する。シールドバッシュである。眼前に迫る盾に双剣使いは守りを選択するがそのまま突き倒されてハジメに剣を突き立てられ一本と相成る。

技を見せた事で観客の盛り上がりを見せるが他の選手達からはそういうのもあるかと学習されてしまう。諸刃の剣と知っていたが仕方ないとハジメは深呼吸して精神を落ち着かせるのであった。


残ったのはオウミとハジメ、E班の藤代 平治(ふじしろ へいじ)とモリ

殆ど前評判通りでヘイジは前回のベスト4らしい。


四回戦、準決勝となりオウミとハジメの戦いが始まろうとしていた。


「B班から逃げてF班に入り…成長したようだな」


オウミから語り掛けてきてハジメは逃げた後ろめたさに苦々しい顔をする。


「だが所詮は付け焼き刃、俺が勝つ!」


オウミが初めて先に動く。ハジメは受けて立つと盾をガッチリ構えるが容赦無い激しい一撃に後ろに軽く地に足ついているのにジリジリと地面を擦ってふっ飛ばされる。


「剛で来たか!」


今までの流れる流水の様な技ではなく相手を打ちのめし叩き潰す激流のような所作にアキトは舌を巻く。

直に受け止めてハジメも冷や汗を垂らす。


(こ、こんなに強いのか…モンスターの一撃より重い!)


雑魚のモンスターとは比較にならないパワーにどう対処すればと無い頭をフル回転させる。

そこから導き出された戦術を編み出す。


「そっちがその気なら!」


激流に抗おうとするハジメ、アキトを始めとする全員がマズいと顔を上げる。


「それを待っていた!貴様の全力を!」


オウミは柔に切り替えてカウンターの構えを取る。


「剛を制するは柔、柔を制するは…卑!」


攻撃の構えから足払いの構えに入りオウミの姿勢を一気に崩しに掛かる。想定外の動きにカウンターのタイミングを失いオウミはそのままよろける。しかし踏ん張る。倒れる訳にはいかないと耐えるオウミ。

その踏ん張りに気を取られて空いた顔面にハジメの盾によるぶん殴りが炸裂し張り倒され一本となる。

誰もが一連の流れに理解が及ばず目を見張る。勝利宣言も数秒遅れてコールされるのであった。


「し、勝者!升田!」


ヘイジとモリは大番狂わせを見て顔を強張らせる。

足下を(すく)われるとはまさにこの事、次は自分達と熱くなる。

ヘイジの剣がモリの薙刀を弾くも距離を詰めれないという状況が続きやっと距離を詰めた所で武器の持ち手を短くして棒術を合わせた戦術に切り替えるモリに意表を突かれてヘイジは首元に刃が当たり敗北する。


決勝戦、ハジメとモリが相対する。

二人は会話する事なく一礼して武器を構え合う。互いに持てる戦術は殆ど見せあった。盾を構えてどっしりとするハジメにモリも攻め手が少ない。

先に動いたのはハジメ、シールドバッシュの要領で突進、足下を切るように薙刀を振るうモリだったがハジメは待っていたと前に大きくジャンプ。着地を狩る構えに移るモリの顔面にハジメの飛び蹴りが炸裂する。

両者地面に落ちるが先に立ち上がったハジメが剣を向けて勝利を得るのであった。

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