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浮気じゃないって!

次の休みの出撃に向けて各自が燃え上がる。

やる事は単調でも必ず役に立つとアキトは皆を鼓舞しながら他の班の様子を確認する。


(どこもかしこも攻略の報を受けても燃えることは無いか…やはり生徒として攻略しなければ焚き付けることは叶わない…か)


一応躍起になっている班はあったが目ぼしい活躍はしそうにないとアキトは無駄死にさせない為にも接触を試みる。


「見学してもいいですか?」


丁寧な物腰でF班の先生だと説明するとその班の女性の先生が挨拶してくる。


「G班のコンドウです。F班の努力の噂は…」


社交辞令のような会話をしつつ生徒の数が約二十人と多くアキトはFの次の番号でなんで数に差があるのかと微妙な顔をする。


「F班は犠牲者が多くて曰く付きで所属希望が少ないんですよ」


「少数精鋭もいいが大隊を育てるのも楽しそうだなぁ…ちょっとチャンバラが多いですね…」


「近接志望が多いんですよねウチの班…交流戦の潰し合いが多くなりそうで…」


交流戦と聞いて苦々しい顔をするアキト、せっかく生徒達が熱心になっていても目指す先がそこでは意味は無いとアキトは口にしてしまう。


「え?!」


「ダンジョン攻略こそ人々の目標、交流戦なんてその足掛かりにもなりませんよ。ダンジョンの奥地のボス見たことありますか?」


アキトは自分の戦ってきた相手が対人なんかでは測れない大きさと強さだと語り目指す目標の矮小さを嘆く。


「せっかく生徒達に熱意があるならちょっとした強敵とも戦う事を知ったほうがいい…さて、汗を流してみるとするか」


アキトが木刀を掲げて誰か相手してくれと声を上げるとコンドウ先生はまた驚くが生徒達は面白そうだと寄って来る。


「近接が多いようだがチームワークで俺から一本取ってみろ」


たかが先生一人楽勝だと自信に満ち溢れた一人が竹刀片手に飛び掛かってきてアキトは軽々と受け流して首筋に木刀を当てる。

ヒヤリと汗を垂らして生徒は謝りつつ一歩下がる。


「個人戦じゃない、チームワークだ。じゃないと俺には勝てないぞ?」


生徒達は今まで個人でやって来て急にチームワークを要求されて困惑しながらも散開してアキトを取り囲む。


「それでいい、遠距離使えるやつも参加していいぞ?さーて、遊ぼうか」


まばらに攻めてくる生徒達を順々に受け流し背後からの攻撃もまるで背中に目があるのかと驚かれるくらいあっさり回避する。

援護するように飛んでくる魔法の矢すらも軽々と木刀で弾き生徒達は化け物じみた相手に戦々恐々とする。


「終業時間までまだあるぞ?その程度じゃゴブリン共は倒せてもキマイラやヌエには勝てないぞ?」


攻めることはせずジッと立ち続けるアキトに生徒達は何とか食らいついて一本取ろうと躍起になる。

どうやったら勝てるのか、それはアキトが最初に答えを与えているチームワーク。それに生徒達が気付く前にコンドウ先生が声を張り上げる。


「サトウ!タナカ!左右から!チカモト!正面から同時に攻撃!」


「「「はい!」」」


やっとかとアキトは三人での連携攻撃を人間離れした動きでカウンターしていく。


「なんて速さッ!…魔法援護!急いで!」


生徒を離脱させる為に魔法での援護を行いアキトも口角が上がり高揚してくる。


「いいぞ、その調子だ!」


先生まで熱くなってきて必死に作戦を立ててアキトを追い詰めていく。アキトも大型モンスター程度の力量で生徒達の相手をしていく。


(人数の優位で生き残れはするだろうがボスはそんなもんじゃ勝てない!…っと、そろそろ勝たせてやるか)


熱くなりすぎて怪我人が出る前にアキトは次の連携攻撃でブレーキを掛けて一本貰うことにする。狙い通り前後からの挟み撃ち、前の攻撃を受け止めつつ背後からの一撃を避ける感覚で背中で受ける。


「ああ、クソ!いってぇ!一本取られた!」


バシッと中途半端な入り方をして痛みに悶えるアキト。生徒達はやっと一本取れたと歓喜する。

アキトは叩かれた所を気にしつついい運動になったと額の汗を軽く(ぬぐ)う。

コンドウ先生からは生徒達の疲労に比べてアキトが息一つ上がっていないのを見て怪訝そうに見られてアキトはわざとらしく深呼吸をする。


「ちょっと熱くなりすぎちゃいました」


アキトは謝るが先生は自分も熱くなって参加してしまったと言われてアキトはアドバイスする。


「大事なのはチームワーク、先生もその一人です。ちゃんと指導者するなら一人一人に合ったトレーニングしないとですね」


「一人一人に合った…」


アキトはいい運動になったとその場を去っていくがアキトの残した言葉と行動はG班に大きな転換期を与えたのであった。


ーーーーー


「で、先生はまた浮気したんですね」


放課後、カスミの冷たい言葉がアキトに突き刺さる。

既にアキトが他の班で特訓してきたと知れ渡っていてその化け物じみた強さも話題に上がっていた。


「浮気じゃない、熱くなる内容だっただけだ」


「コンドウ先生綺麗ですもんね!」


エツコまで乗っかってきて話がややこしくなりそうになりアキトは男子生徒達に救いを求めるが俺達も先生と組手しようと目を輝かせていた。


「お前らはもう俺と組手しなくて強いだろうよ、チームワークもバッチリだし」


「じゃあ一本と言わず先生討伐しましょう!」


エツコが他の班の力になるくらいならいっそ倒してしまおうと発言してそれもいいと狂気じみた内容になっていきアキトは深々と頭を下げて勘弁してくれと嘆くのであった。


ーーーーー


それでも許されずグラウンドに移動して五人を相手にアキトは木刀で指導という名のリンチが始まろうとしていた。

怪我しないように訓練用の武装だが魔法はガチな為アキトも気は抜けないと前衛三人の攻撃を受け止めつつエツコの魔法に気を張る。

G班の生徒とは違い自分が指導しただけあって受け流しも回避も防御も余り隙を作ってくれない生徒達。それどころかちゃんとサポートし合ってせっかく見える光明も援護で掻き消される。


「合格点やるから許してくれー」


アキトは泣き言をなんだかんだ言いつつしっかり一本は取られないように立ち回る。

いつの間にかギャラリーも増えてきてアキトの動きだけでなく生徒達の動きも参考にしようと観察される。


しばらくそんな特訓をやっていると放送でアキトが呼び出されてアキトはピタッと止まり額にアスカの竹刀がバシッと命中し「痛ぇ!」(うずくま)る。


「こういう時はお前らも止まれ!…ったく。呼び出されたから行ってくる。ちゃんとメニューこなすんだぞ!」


額を真っ赤にさせつつアキトは五人をそれぞれ指差して呼び出し先の職員室へ向かうのであった。


すれ違う相手に真っ赤な額を笑われつつ職員室に到着するとそのまま学長室に案内され入室する。

学長はアキトの顔を見るなり軽く吹き出し顔を背け咳払いして真面目な表情になって机の上の武器を見せる。

近未来的な蛍光色のラインの入ったデザインの片刃のブレードにアキトは「ほう」と目を輝かせる。


「キミの木刀のサイズに合わせたブレードだ。探索の時に使いたまえ」


アキトはブレードを手に取りその重さまで木刀にそっくりで目を丸くするに。


「重量は木刀より少しだけ重くなったが材質の都合だ、許してくれ」


「最高だな、愛刀と同じだ…」


愛刀、木刀ではなく氷雨の事だがそちらと殆ど同じで使用制限を掛けられて呼べない今最高の一品だとブレードを褒めちぎる。


「デザインがちょっと近未来的だな、個人的には古風な刀が好きなんだが…」


「鍛造する技術が失われてな…それで我慢して欲しい」


「贅沢だったか…これで十二分。最良だよ」


アキトは腰に早速差してみてテンションが上がるのであった。

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