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最後の闘い

立ち上がった魔王、巨大な剣を手に取り禍々しいオーラを纏う。対するアキトは相棒の氷雨を手に闘気を放つ。

先に動いたのは魔王、大きく縦振りの一撃を見舞い地面を(えぐ)る。動きを見切っていたアキトは軽く避けて牽制の氷柱の弾丸を放つ。しかしバリアのようなオーラに阻まれ霧散させられる。


『小細工など通じぬわ!』


「バリアか?小心者だな」


どの程度の耐久性か試してやると氷柱を何発か放つ。全てバリアの前に霧散させられそれなりの強度だと理解させられる。

魔王は大剣を構え直し横薙ぎに振るう。ピョンと跳ねてそれをアキトは回避する。


『いつまで逃げ続けられるかな…?』


「そっちが死ぬまで」


軽口で返して物理ならばと手裏剣を投擲する。バリアには阻まれなかったものの刺さりは浅くダメージとは言えなかった。


『何かしたか?』


(身体がデカすぎて暗器が通らねえ…こりゃ毒も周りが遅くて治癒力に負けるな…)


魔王は笑いながら刺さった手裏剣を指で摘みペキッと砕く。傷はもう塞がっていて先代と同じ性質だとアキトは阻害薬を持ってきておいて良かったと嫁に感謝する。

魔王は大剣を下げて掌を(かざ)して紫色の炎の球を放つ。

アキトは回避するのではなく氷の壁を作り出して炎を受け止める。熱気を前に氷は少し溶けて水蒸気を放つ。球は遅くなりアキトは悠々と位置を変える。


(しっかり遠距離も備えてるか…面倒だな)


魔王はアキトの苦々しい顔を見て高笑いし次々に炎の球を放つ。周囲は熱気を帯びてアキトは舌打ちしながら氷の壁で防ぎ続ける。

その壁を鬱陶しそうに魔王は見つめて剣を振って破壊する。


「馬鹿力がよぉ!」


『フハハハ!舞え!踊れ!我を(たの)しませろ!』


水蒸気と炎の熱気で空間はまるでサウナのようであった。まだ動く時じゃないとアキトは魔王が(よろこ)ぶように踊るように舞うように攻撃を避け続ける。

呼吸を整えるアキト、その隙を与えまいと剣を振るう魔王。


『どうした!攻撃しないのか!?』


「どうせ回復するクセによく言うぜ」


ありったけとアキトは麻痺毒を塗っている投擲物を放ち魔法を放つ片腕だけでも動きを鈍らせようとする。

効かぬと強がる魔王だが違和感はあるのか眉間にシワが寄る。


『毒か?!…小賢(こざか)しい!この治癒力を前に無駄だ!』


(知ってるわい!っく…もう少し、あと少し…)


水蒸気でバリアの範囲が少しずつ浮き彫りになりアキトは攻撃の有効範囲を見極める。

魔王はそろそろトドメだとグッと腰を落として禍々しいオーラを強める。そして咆哮と共に衝撃波を放つ。


(まずい!間に合え!)


アキトは全力で氷のバリアを周りに展開、時間の圧縮で魔力をめいいっぱい流し込む。分厚い氷がアキトを囲い衝撃波にビリビリと震えヒビが入る。

衝撃波を最後まで受け止め氷が砕け散る。


『ほう、耐えたか』


魔王は嬉しそうに口角を上げて大剣をまた振るい始める。下手に近寄れない状況だがアキトは準備は整ったと前に走り始める。


『ムッ!来るか!』


(衝撃波がもう一度来るぞ!頼むぞ氷雨!)


魔王のバリアのオーラが震えて今一度衝撃波が放たれる。アキトは予期して氷を展開、先程よりは弱い衝撃波に氷は砕けず解除と同時にアキトはバリア内に侵入する。


『っ!』


魔王も身構えるがアキトが放ったのは薬瓶、魔王は小細工に怒りの声を上げる。


『まだ小細工に頼るか!』


「終わりだ!」


アキトは納刀、居合いの姿勢で空中に留まり本気の一撃を魔王に叩き込む。治癒力に自信があった魔王は軽いガードで受け止めようとする。


「絶空ッ!」


奥義が眼前で炸裂し魔王は神速の居合い抜きをモロに受けて全身に自身が放っていた衝撃波並みの一撃を受ける事になる。

アキトの渾身(こんしん)の斬撃により魔王の手足が千切れ飛びその首も飛ばされる。


『ばっ、馬鹿な?!』


治癒力を超えたのかと魔王は叫ぶ。周囲との魔力から切り離され治癒力を失った魔王はバラバラになる。

アキトはそれでも復活すると読み今一度完全に粉微塵にするつもりで二発目を構える。


「消え失せろ!魔王!」


弐撃決殺、アキトの二発目の絶空で魔王は完全に消滅させられるのであった。


ーーーーー


闘いが終わり周囲の熱気にアキトは滝のように汗を流し髪型も垂れて左目が隠れる様になっていた。


「熱いな…」


ありったけ使い軽くなった黒コートを脱いで肩に乗せる。


「神様よぉ、終わったぞ?満足したか?」


『ちょっとあっさりしてたわね』


幻影の様に現れた金髪碧眼の赤い着物の少女にアキトは深い溜息をつく。

あっさりと言われてアキトはいっぱいいっぱいだったんだぞとキレる。


『皆の協力ありきの勝利ね』


「当たり前だ!無茶振りが過ぎるんだよお前は!」


本来は勇者があの手この手で治癒力を封じてチームを組んでやっと勝てる相手だとアキトは座り込みながら文句を言う。


『罰ゲームは終わったけどどうする?』


「世話になった人と別れを言ってから去りたいものだな」


『そう、あんまり長く待たせると…』


奥様方は既にブチギレしてるのは知ってるとアキトは苦笑いしつつ礼節は守ると立ち上がる。

幻影は旅行鞄に姿を戻して氷雨を吸い取る。


「あ、持って帰るのかよ?もう少し語り合いたかったんだが?」


『知らなーい、早く全部済ませてきてよねー』


鞄も消えてからアキトは悪態をつく。


「神鳴め…好き勝手言うよな…」


アキトは来た道を戻りドラゴンと合流する。一時間も経たない程の最終決戦にドラゴンも『終わったのか』と不思議そうにする。

疲れ切っているアキトは髪の毛を元に戻しつつ「終わった」と軽く返すのであった。


ーーーーー


心配して待っていたレインはドラゴンが戻ってきたのを見てホッと一息つく。

アキトが村に入ってくるとハグをしようとするが汗でビシャビシャの格好にドン引きする。


「な、なんでそんなずぶ濡れ…汗臭っ!」


「ちょっとサウナに…」


「さ、さうな?」


大衆浴場はあってもサウナは無いらしい。取り敢えずアキトは早く着替えたいとレインに話すと洗濯しないとと大慌てでアキトに濡れタオルと着替えを用意しさっさと着替える様に言うのであった。


「終わったんですよね…?」


「ああ…」


魔族との戦いは終わったとアキトは告げるとレインは憂鬱気な表情を見せる。


「もう帰るのですか?」


「まだもう少し…ケインズに別れを告げないとな」


別れの挨拶は大事だとアキトは語りレインはこの拠点はどうなるのかと不安そうにする。


「さあ、どうなるだろうな?ま、タロスが上手くやるだろう」


呑気そうにアキトはそう答えるのであった。


ーーーーー


「アキト、キミを開拓組から追放する」


後日、船が到着した日に合わせて魔王討伐の報告をしたアキトに対してタロスがそう告げる。


「キミは王国を騙してドラゴン討伐を虚偽報告した。冒険者組合としては看過できないと判断させてもらう。そうお達しが届いた」


「そうか、丁度いい、俺も一線を退(しりぞ)くつもりだ。後は頼んだぜ?」


「キミに言われる筋合いはない」


冷たい態度だが本心は勿体ないとタロスは考えていて何かフォローしようとする。


「キミが望めば開拓民として…」


「いや、去る予定が少し早まっただけだ」


アキトは幹部会から去ろうとする。レックスが止めようとするがアキトは「これで良かったんだ」と答えて部屋を後にして外で荷物を持っていたレインと合流する。


「散々ですね。平和の立役者は追放ですか」


「罪状が違うからな。さて帰りの船は手配出来たよな?」


「はい!頼み込んで二人分空けてもらいました」


帝国へ帰ろうと二人は惜しまれつつも新大陸を後にするのであった。

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