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越える、荒れる

全て終わり翌朝、アキトの奮闘により被害は最小限に魔族からの奇襲を防ぐ事に成功する。

敵の内の一人が四天王を名乗る存在と知られレインとアキトの株がまた上がるのであった。


しかし、病み上がりのレインは浮かない顔をしていた。アキトの憎まれ口が心に刻まれてしまい足手まといだと認識し自身を卑下していた。


「私はアキトさまの足手まとい…(かせ)でしかないんです…」


「気にする必要はない。お前はよく頑張っている」


アキトはそんな落ち込むレインの肩に手をやりあの時は言い過ぎたと謝罪し励ます。それでも気分がドン底なレインは生返事で俯いたままであった。


「口移しでキスまでしたのに何にも反応しないんだもんなぁ」


アキトはジョークで空気を良くしようとする。


「あんまり覚えてない…キスしたんですか?」


反応の薄さにアキトはアチャーと自身の額を叩く。


「したんですか?本当に?!」


少しずつ現実を理解してレインが目を見開く。乗ってきたなとアキトは大きく頷いて生々しい話をしてやろうか等とおちょくる。


「いりません!」


いつもの調子が戻ってきたのかレインは声を大にする。

アキトは話を戻してこれからの警備について語る。


「これからは更に警備強化だ。二人一組で行動」


「分かりました。異論はありません」


寧ろその方が気楽だとレインは日頃の鬱憤からか溜め息をつく。アキトも一人で色々とやらせてしまって申し訳ないと謝りつつそれでも仕事を全うしていたと褒めちぎる。


「そ、そんな凄いこと…してませんから…」


「ちゃんと助けになっている足枷なんかじゃないぞ」


落ち込む原因のフォローをすると自分は戦いだけじゃないと思い直す。在り方というものを自覚したらそこからは早かった。


「アキトさま?ちゃんと責任取って下さいね?」


「…責…任?」


急な発言に呆気にとられる。


「キスしたんです!したんですよ!?ファースト!」


「…ああ、乙女過ぎるだろ」


流石にロマンチスト過ぎると既婚者目線の冷めた反応をしてしまいレインは軽くショックを受ける。


「なんですか?!その反応は!傷付きますよ!?」


「いや、そういうのは済ませていると思ってた」


「…表はパーフェクトでもそっちは…ビギナーです…はい」


反応に困るとアキトは悶絶しながら恋愛には(うと)すぎるレインを何とか落ち着かせようとする。


「世の中全部ビギナーから始まるものだ。気に病むなよ?」


「大丈夫です。すぐにプロになってみます」


レインの前向きな台詞にアキトは頭を痛めるのであった。


ーーーーー


諸事情により二人の蜜月な話は書けないということで天の声が変わってお送り致します。


大変実況席は大荒れとなってます!

物を投げないで下さい!コラッ私のせいじゃない!アキトが悪い!ダーティーな別れ方でいいじゃない!私は悪くない!

浮気かどうかでいうとアウト寄りのセーフでいいんじゃないんでしょうか?あー、やめて!暴力反対!焚き付けたというか引くに引けない状況にしたのは謝るから!

ハッピーエンドの為なら仕方の無い仕事なのよ!アキト頑張ってるし我慢に我慢を重ねて限界なのよきっと!私は悪くない!

姉さんが特に憤慨してます戦争だなんてそんな!あー正妻も乗ってきた!駄目だって!帰ってきたらタコ殴りに…え?アキトじゃなくて相手が憎い?甘い空気が許せない?不可抗力!私は…アーッ!引っ張らないで!


メイドとして許せません!滅多刺しにします!


戦争よ!魔法で全部焼け野原にしてやるわ!


ふひひ、二人とも落ち着かないとお腹の子に悪いよ?


なんや、あんさんらちゃっかり(こさ)えとるやないか。


あーもう!天の声奪わないで!私の出番が減るから!皆も出番欲しい?それは…そうかも?でも駄目だから!ここ場外だから!

い、以上!場外乱闘の様子でし…私は悪くないって!


ーーーーー


一線超えて翌日の朝チュン。

レインは一言「凄かった」と呟きアキトは苦笑いする。


「今日は休め、俺は他の奴と仕事する」


「は、はい…すみません」


アキトが他の冒険者とペアで仕事をすると冒険者はニヤニヤしながら語り掛けてくる。


「ダンナもお盛んだねぇ」


防音もしっかりしていない小屋だから多少音が漏れる事は覚悟していたが言われると恥ずかしくなる。


「仕方なくだ。勘違いするなって」


「いやー恋人となら毎日しててもおかしくないのに我慢してますよ」


「恋人じゃねぇ…仕事仲間だ」


冒険者は気の抜けた驚きの声を漏らし信じられないと言いたげな目を向ける。


「あんな美人を恋人にしてねぇンスか!?胸もたわわで羨ましいってのにぃ!」


「俺、一応既婚者なんだよ…」


「ああ、そういう…なんつーか役得だって思えばいいですって」


嫁達からは監視されてるなんて言えず苦笑いして遊び人気質な冒険者の言葉に半分同意する様に生返事するしかなかった。


「一応ダンナは皆の生命の恩人だから多少の振る舞いは許されてるンスよ?」


先日の襲撃の活躍者としてアキトは周りから一目置かれて夜がお盛んでも怒りはしないと言われてそれでも今後は控えようと思うのであった。


ーーーーー


しかし、くっついたという噂はすぐに広まり会議に参加した時にタロスから言及される。


「夜に盛る声がすると苦情が入っていてな…連れ込み宿の作成を考えている」


マックスがゲラゲラ笑い仕方ないだろと小屋の出来が悪いと語る。


煉瓦(レンガ)造りの家がそこら中に出来るわけじゃないからな!丸太小屋じゃあ仕方ねぇよ」


「だから作るかどうかの議題をだな…」


レックスが挙手して連れ込み宿とはと疑問を口にして尊い物を見るような目線を向けられる。


「ピュアっピュア!」


「やめないか!」


マックスがまた大笑いしてタロスにツッコミを入れられる。アキトが隣で優しく説明する。


「恋人同士がゆったり時間を過ごす場所みたいなもんだ」


「ああ、なるほど!アキトさん達がくっついたっていう噂からタロスさんが気を利かせてるんですね?」


「ぐはっ!」


何故か悪意の無い攻撃によりアキトが傷付いてタロスは微妙な顔をして半分正解と語りマックスはお腹痛いと腹を抱えて笑う。


「取り敢えず苦情というかそういう話が上がっている。キミだけじゃないぞ?開拓民も子孫を作ろうとしている訳だしな」


「タロスさんやマックスさんは?恋人と時間を過ごせてますか?必要じゃないんですか?」


キレッキレなレックスの言葉に二人もダメージを受けて早急な対応が必要だなとなる。


「鋭い言葉のナイフを振り回すのはやめたまえ!」


「え?!僕何か悪い事言っちゃいました?!」


「無自覚に人のプライベートを踏み荒らすなと言っているのだ!」


タロスは咳払いしてアキトに一度目を向ける。


「資金はキミ達にも出してもらうからな?」


「うげぇ…分かったよ」


仕方の無い出費だとアキトも賛同し議題の一つが完結する。次に今後の警備の仕方についてが議題に上がる。


「森がまた襲撃にあったそうだな。人数足りていないか?」


「大丈夫だ、俺がいる限り今の人数で事足りる」


アキトの言葉にマックスが口笛を吹く。


「ヒュー、カッコいいね、じゃあ本部と平野の強化をしようぜ?」


「奴らは空から来る事もある。確かに本部もしっかり警備を付ける必要があるな…そうしよう」


また探索が遅れそうになる議題だったがアキトは既に奥の手を打っていて今更探索の遅れがどうだとか考える事も無いなと思う。


「取り敢えず宿作るから致すならそこでしてくれ」


「致すって何をですか?」


「お前分かっててわざとボケてないか?」


タロスとレックスの漫才で会議の幕が下りるのであった。

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