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墓穴掘り

アキトが山へ行ったというありえない報告に頭を痛める面々。しかし証拠の飛竜を見てしまい混乱をする。


「で、どうやって…?」


当然の反応にアキトは影の協力者の存在を(ほの)めかしながらどうやって山まで行ったのか説明する。


「異世界の仲間から貰った高速移動薬を使った」


「い、異世界…」


受け入れ(がた)い情報の数々に会議室は混沌を極めようとしてアキトは今一度外の話が必要かと尋ねる。

分かりやすく旅行鞄を呼び出しコレを使ったと説明を続ける。


「気まぐれな神様から許可降りて貰った訳だな」


薬の効能や諸々の支度(したく)についても説明を開始する。


「転送用の魔法陣を作っていつでも行けるように…」


「待て待て待て!まだ前の話を整理中だろ!」


情報の洪水は止めろとタロスが流石にキレる。


「まず、なんで山まで行ったんだ?」


「魔族の憂いを取り除こうと思って…」


魔族の拠点があると言われて転送陣なるものを用意したのも問題あるのではないかと当然の帰結、アキトは平然と嘘で乗り切ろうと過去の仕様を語る。


「転送陣使うには薬が必要で勝手には使えない仕様だ」


「そ、そうなのか?それなら…」


半信半疑だが転送陣そのものを理解してない面々は仕方ないと受け入れる。アキトは後ろめたさを覚えつつもしっかり管理するか消しちゃえばいいかと楽観的に考えるのであった。


ーーーーー


解放されて食堂に行くと『本日飛竜入荷』という看板にマジで加工出来たのかと期待しながら料理を注文してみることにする。

先に食べていたレインは翼膜フライと可食部のサイコロステーキを食べていた。


「パリパリのフライにチキンに似たステーキで美味しいですよ」


「成る程チキンか…確か爬虫類は鳥類の近縁だとかいう論もあったっけか…」


パンに挟んで食べるサンドイッチスタイルが美味そうでアキトはライスで頼んだ事を少し悔やむ。

ステーキ定食の様相のプレートにレインはそれはそれで美味しそうと目を輝かせる。

肉汁とタレを受け止め染み込んだ米、それを肉や野菜と一緒にかっ込み噛み締める。


「思っていたより悪くない」


「狩った私に感謝して下さいね?」


討ち取ったのは自分だとニコニコするレイン。アキトはその幸せそうな顔を見て微笑み感謝するのであった。


食後、森の転送陣をどうするかアキトは悩みながらレインに相談する。


「小屋を上に建てられないか?」


「どうでしょう?お願いしてみますか」


「不用意に触れられたら困るからな」


そのアキトの言葉に数時間放置してて大丈夫か不安になった二人は冷や汗を額に少し足早になるのであった。


ーーーーー


アキトが山に人が行ってないか確認しに後をレインに任せて向こうへ行く。


「特に…人は来てないな」


転送陣から離れて周囲を確認しているとアキトの前に獣型の魔物を引き連れた魔族が現れる。


「き、貴様どこから!?」


「徒歩で来た」


取り敢えず嘘で挨拶しつつ木刀を抜く。魔物が反応してアキトに襲い掛かり飛び掛かってくる魔物を木刀で打ち落とす。

まだ生きて藻掻いている魔物をアキトは追撃して一匹ずつ丁寧に倒す。流石の魔族もアキトの手際に強敵を悟り身構えつつ黒い靄を吐き出す。


「これでも食らえや!」


「馬鹿の一つ覚えだな!」


素早くアキトは懐から身代わり人形を投げ付けて変異ガスを妨害し変異中の人形をズバッと引き裂き魔族の首に激しい一撃を当てる。

首の骨をポッキリやられて間抜けな声を漏らして魔族は絶命する。


(しまった、こんなとこで倒してしまったら死体が目立つ!…埋めるか)


旅行鞄から穴掘りする道具を用意してもらいアキトは加速モードを使い魔物諸共埋める。


(掘り返し目立ってバレるか…まあいいや、兎に角埋めよう)


アキトが必死に頑張っているのに魔族が新たに現れて目が合ってしまう。


「見られちゃった、見られちゃったらもう…お前も埋めるしかないよな…」


多機能シャベルを担いだアキトから向けられた殺気に魔族は「ヒェ」っと恐怖に身を震わせる。

アキトは超加速して背後に周りスパッとシャベルで切り裂き何をさせることもなく仕留めて一緒に埋める。


「良くないな、精神衛生上良くない」


悪い事している気分にアキトはブツブツと呟きながら穴を埋めて踏み固める。


(頼む!見つからないでくれ!)


祈りながら帰還するのであった。


ーーーーー


戻ってくると魔法陣に踏み入れないように簡素な小屋が建っていて仕事の速さに舌を巻く。


「おかえりなさい。大丈夫でしたか?」


「ああ、でも…敵と…遭遇して、ちょっと掃除してた」


言い難そうに目を逸らすアキト、レインはアキトの持っているシャベルを見て色々と察して苦笑いするしかなかった。


「まぁその装備を見たら大体予想は付きます…」


「多機能シャベルだ」


「スコップでしょう?」


二人の間に緊張が走る。シャベルとスコップの名称の問題である。


尚シャベルは英語、スコップはオランダ語が語源で意味は同じなのだがサイズの違いで関東と関西で逆になっているのである(天の声)。


「オーケー、落ち着こう。余計な論争だ」


「論争…?」


「多機能スコップだ。穴掘りだけじゃなく缶切りやサバイバルに使える機構が組み込まれた便利グッズだ」


なんだか良くわからない無駄機能とレインは口走りそうになり口を塞ぐ。しかし冷たい視線は隠せなかった。


「な、なんだよその目は…!確かに、十徳ナイフの方がポケットに入って便利といえば便利だが!穴掘りは出来ないぞ!」


「土が付いて汚いのに?じゅっとく?ナイフも意味わかりませんが」


アキトはショックを隠せなかった。男の浪漫を軽く蹴散らされて多機能の欠点をボロクソに言われて心が痛くなった。思わず胸を押さえて「うぐっ」とダメージを受ける。


「耐久力にも難ありそうですし…なんというか…子供っぽい」


「グハッ!」


更に追い打ち、アキトはスコップを地に突き立て杖代わりにする。多機能!未来的!超性能!そんな謳い文句を子供っぽいの一言で説明されて血反吐が出そうになる。


「ご、剛性もあるし実際頑丈なんだぞ!魔族も切り裂いたし」


「え?なんで?!武器にしてる!?」


「そう!武器にもなる!」


レインは真顔で「するな」とツッコミを入れる。


「木刀よりは切れるからさ…つい」


「あー、はい。確かにそうかもしれませんね」


微妙な空気になる二人、レインはハッとしてそんな事よりも仕事しないとと言われてアキトはもうそんな時間かとコントやら痴話喧嘩やらしている場合では無いと交代しに向かうのであった。


ーーーーー


夕刻から夜通しの警備、観察眼と寛容さを少しは身につけたレインなら安心して監視は任せられるとアキトは周囲の警戒に従事し物思いに(ふけ)る。


(山に登らずとも敵を(おび)き出して叩きのめせたらなぁ…だがタロスが以前言っていた通りそんな事したら警戒が強くなって攻め方が変わるだけ…都合良く馬鹿みたいに真っ直ぐ来てくれるわけないんだよなぁ)


ふと足を止めて自分が作った転送陣を見つめる。

今まさに向こうではどうなっているのか、もしかして埋めた奴を見付けて転送陣も見つかってしまっているのではないか等と脳内でグルグルと嫌な可能性を思い浮かべる。


(こっちの情報が伝わらず向こうから来てくれるポータルだが…果たして気付いたら乗ってくれるか…いや、消すよな…罠にしか見えないもんな。俺でも消す)


好奇心旺盛でも警戒するレベルの代物だとアキトはムリムリと苦笑いする。

定期的に今日みたいにちょっかい出してタイミングを見て山登りしに行くしかないかとアキトは肩を(すく)めるのであった。

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