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外と内

事後報告で色々と申し訳ない感じになってしまうアキトは四天王を名乗る敵の出現と被害について報告した。


「犠牲者が出たのは残念だが無事撃破した事は大変喜ばしい。で、その四天王とは?」


強敵なんだろうなあとニュアンスだけ理解してくれた研究者達にアキトは多分と前置きしてから答える。


「俺も向こうの内情に詳しい訳じゃないが…四人組の強敵集団?ボス格という意味合いで捉えてくれればいい」


「成る程、残り三体という…ん?減ったら補充されるものなのか?もしかして」


減ったら補充される四天王とか嫌だなとアキトは考えつつそこもよく分かっていないと苦い顔をする。肩書き持ちの実力者と言うことだけ伝わればいいやと割り切る。

(ちな)みに四天王とは元々仏教用語で四方の方角を守る神々の事である。つまり異世界には無い言葉だと思われる。(天の声)


(だよな…無いよなって!普通に天の声解説するな!)


ーーーーー


四天王という強敵の出現についての周知は人々を恐怖の(うず)に包んだ。

油断してたとはいえ冒険者の見張り役を気付かれずに暗殺して回る等と知れば皆震えて当然だろう。中には油断するのが悪いと強気な態度の戦士もいるがごく一部である。

強い奴と戦いたいと思うのもいるのは理解していたが一般の開拓民にとっては脅威でしかないとアキトも考える。


(あっちこっちすぐに防衛出来る体裁じゃないからな…)


自分は本当に森の拠点に集中していていいものなのかと自問自答する。

監視役中、思い悩んでいる中でクシャミしてしまい、洗濯してもらっていていつもの黒コート無しのYシャツ姿に少し肌寒さを覚える。


(貧乏そうな青年、今日は二回目の水汲みだな…)


アキトは人を観察しながら注意するか考えて声を掛ける。


「君、二度目だな?理由は?」


「ち、父が熱を出してしまい…」


「わかった。今回は大目に見よう。次は事前に監視役に言いに来い」


甘いと言われようがアキトは何だかんだで許して通す事にする。世の中助け合いの精神とアキトは内心微笑むが単純にルールを破る場合は許さないとレインに見せてやりたい姿勢を取り続ける。


(異世界にも大岡裁きとかあるのかねぇ…ちょっと気になるアレコレ)


義理人情というものを大事にしたいと思うアキトであった。


夕刻、休みを満喫(?)したのか変えのパリッとしたメイド服のレインがアキトにこれまたバッチリ決まった洗濯したて、アイロン掛けたての黒コートを持って来る。


「家庭的な一面見せれましたか!?どうですか!」


「こいつはいいな、俺の普段着全部やってもらおうかな?」


洗剤と太陽の香りに包まれてアキトは懐かしさを覚える。

そうでしょうそうでしょうとレインは鼻を鳴らし胸を張る。


「心持ちも晴れやかに!お掃除とお洗濯は心に余裕を作ります!」


「そ、そうだな…」


ちょっと誇張し過ぎじゃないかとアキトは微妙な顔をするがレインは大真面目にお洒落(しゃれ)は心からとモットーを語る。

その勢いに飲まれるアキトは芯を通す辺りは嫁達に似ているなと微笑ましく思う。


「あ!今ちょっと馬鹿にしましたねー?」


「してないしてない!ちょっと似てるなって…」


「似てる?誰にですか?」


言ったら面倒事になるとアキトは苦笑いで誤魔化し逃げようとするが答えろとしつこいレインなのであった。


ーーーーー


その日は森の中は静かな夜で警備小屋はフローラルな香りに包まれて心地良い眠りに付けた。

翌朝、冒険者からのタレコミで平野の拠点が魔族に襲われてレックス達が撃退したと報が入る。遂に平野側でもと波紋が広がるが荒野で既に一人見掛けていたアキトは今更かと少しポカンとする。

すぐに幹部会の招集が入りアキトは拠点へ向かう事になる。監視役は不安だがレインに任せてアキトは港へ向かうのであった。


「アキトに続いて若手のレックスがか…これは我々も負けていられない…か?」


タロスは多少挑発的な発言をするが相手は魔族、危険なものには変わりないとアキトは注意する。しかし、レックスが倒したという相手についての言及は本人からあまりされず何かあったのではと話が逸れる。

レックスは申し訳無さそうに頬を掻いて理由を述べる。


「じょ、女性型だったもので…その…誇るべきか…」


アキトは呆れつつちゃんと補足してやる。


「レックス、男女の差で脅威はあまり変わらない。人を怪物に変える力はある」


「そ…そうですよね!ちゃんと人形で避けましたよ」


「じゃあ他に何か問題があったな?」


レックスの様子から察しが良いアキトが突っ込んだ事を言ってレックスは身振り手振りして違うとアピールする。


「倒す前に恨み言を言われて…人と何が違うんだろうって…少し思っちゃいまして…」


全員が沈黙する。確かに肌の色は違えど種族の違いのように感じるかもしれないがアキトはハッキリと『敵』と断言する。


「侵略者、インベーダー。奴等は本来この世界には存在しない…この世界の『敵』だ」


自分自身の事は置いておいてアキトはそう言って惑わされるなと注意する。


「この世界に存在しない…」


復唱されてアキトは軽く溜め息混じりにちゃんと説明しておかなくてはと図に示す。


「これは侵略戦争でもある。この丸がお前らの世界。この丸の外には無数に丸があってその内の一つが悪意を持って攻めてきている。それが俺の言う魔族だ」


倒し追い払うべき『敵』であると再度強調する。


「あの…質問良いですか?」


一人の研究者はそれよりも何故アキトがそんな事を知っているのかという話題に移す。

アキトは目を細めてまた軽い溜め息をついて自分の存在をちゃんと説明する。


「俺は…魔族と同じ『外』から来た」


どこか適当な丸から矢印を引っ張ってくる。周りから『敵』かと言われる前に弁明する。


「厄介な事に神様から世界を一つ救う契約をして現在その契約の履行(りこう)中って訳だ」


「だから救世主だなんて自称を…」


レックスがアキトの言いたいことを言ってくれて全員から冷たい目を向けられる。


「頭がオカシイって?まぁそうだよな。今の話全部忘れて構わないが魔族と戦う時は『敵』とちゃんと理解しておいてほしい。同情は自分の首を締めるだけだ」


説明はしたぞと何度も念押しするアキトに研究者達はざわざわしつつ新たに質問をする。


「この世界の壁を超える手段をあなたや魔族は持っている…という認識でいいのですか?」


「俺は…持ってない。あくまでも神様の(こま)だからな…魔族は一部が持っている」


そんな危険な存在がこの世界に来ていると知って本国は大丈夫なのかと不安になる面々。


「さあな、あの山以外に次元の穴を開けているなら危険かもな」


今の所全ての魔族は遠くに見える山から来ているとアキトが説明すると一応の納得を得られて幹部会は結論として(しばら)く警備の強化に一念するという結論に至る。

実績あるアキトやレックス以外のチームは特に人数を増やしシフトを細かくして疲労度を減らす。等の工夫をすることこになり外の探索よりも内の守りを優先する事になる。


「逆に実績ある二組を今後は調査部隊にするのは?」


マックスの意見にタロスはアリだと頷いてシフトの無い時は探索もするようにと結構な無理難題を突き付けられる二人は顔を見合わせてムリムリと手を振るのであった。


ーーーーー


「はい、無理ですね」


レインも報告を聞いて森の奥の調査なんて仕事終わりに残業持ってこられるレベルの反応をする。


「だよなぁ。暫くは梟からの報告待ちだな」


「別に私達がする必要ないですものね」


魔族捜索は梟に任せちゃおうとレインはノリノリで待ちの案に賛成するのであった。

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