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復讐鬼

魔族の襲撃から中一日、人が森の拠点に入り始めて警備も別の仕事で忙しくなる。


「こらー、取水は一人一桶!二つ使わない!」


レインが水の汲み取りの監視をして笛吹きしていた。

個人利用の範囲では桶一杯、グループでの汲み取りは事前に報告必須のルールを(もう)けている。


「アナタ、それ個人利用でしょう?一杯までです」


「ち、違いますよー!食堂の依頼で…」


「依頼書を出しなさーい!」


厳しい取り締まりにアキトは呆れているがルールはルールとレインは頑固な面を見せる。


「そんな調子じゃ人から恨まれちまうぞ?」


「ルールを守るよう言って恨まれるなんておかしいです!法と秩序は何のためにあるんですか!?」


「それはルールが不公平だからさ」


レインはムスッとしつつも不公平と言われて険しい顔をする。


「でも決めたのはアキトさま達ですよね?!」


「取水に制限を課すのは理解している。だが例外があっちゃならないと思う」


湯浴み屋もそうだとアキトは腕組みする。そこを使ったレインは「うぐっ」とダメージを受ける様な仕草をする。

寛大(かんだい)な処置も時には必要とアキトは笑うがやっぱり納得いかないレインは例外も締め出そうと言い出してアキトは頭を抱える。


「んなこと出来るから馬鹿たれ!海水からの精製が大変なの知ってるだろ。お前は極端過ぎるな」


何を持って寛大に扱うのかとレインはアキトに疑いの目を向ける。アキトは経験と微笑むが余計信用ならないとレインに怒られる。

目を養えとアキトは言うがそんな単純な話ではないとレインは唸る。


「まぁ見てろ。…はいそこー、二杯目だよね?」


「な、何を根拠に!」


「顔覚えてるよ?先刻も来てたよね?」


男にアキトはニコニコしながら近寄り注意すると男は言葉に詰まりながら謝り大人しく引き下がる。


「ちゃんと人を見ないとな?」


「アキトさまも制限掛けてるじゃないですか…」


「ルールを守らないのを注意している…っと次の人は…」


年寄りの開拓民がやって来て水汲みを始める。アキトはゆっくり近寄り手紙を手渡す。


「じいさん、アンタみたいなのは湯浴み屋から水もらえ、拠点まで運ぶの大変だろ」


「コレは?」


「幹部会からの許可証みたいなもんだ。腰は(いたわ)れ」


戻って来たアキトにレインは何を渡したのかと首を(かし)げる。

アキトはニヤついて色々書いてあると説明をはぶく。


「い、一体何が…!」


「簡単な注意喚起だよ。簡単な…ね」


少し背筋がヒヤッとする言い方にレインは何か起こす気なんだなと思うのであった。


夕刻になりこの後の夜も盗みが無いように監視しなければならないのかとレインは愚痴を呟く。


「交代来るからそれまで監視は続行だ」


「そうですか。はぁ…敵が来るかよりも味方を疑うなんて嫌ですよねぇ」


「人間相手の商売なんてみんなこうさ。騙し騙されってやつ」


世知辛いとレインは人の(いとな)みを憂鬱げに語る。それを通常だとアキトは笑うが苦い顔するレイン。そんな会話をする二人は監視を後から来た冒険者と交代する。


疲れたとベッドに大の字になるレイン、明日は休みが欲しいと訴える。アキトは休んでもやる事ないだろと苦笑いする。


「ありますよー、お洗濯にお掃除!」


「あー、確かに」


「アキトさまの黒コートも洗ってあげますよ?」


アキトは自分で臭いを嗅いでまさかと思いつつ質問する。


「く、臭い…のか…?」


「さあ、えーっと…クンクン…うっ」


「うっ…って何だよ!?…何か言ってくれ!」


レインは気絶するフリをしてそのまま眠りについてしまった。アキトは自分では気付かない臭いがあるのかと戦慄した表情をして明日休んでいいから洗ってくれとねがうのであった。


ーーーーー


人々が寝静まった時刻、アキトは強い殺気を感じ取り目を覚まし小屋を出る。監視役の冒険者が対応しているはずと思いつつ一歩踏み出すと強烈な危を感じ身を屈め影からの敵からの一撃を回避する。


「あらーやるじゃない」


「殺気ダダ漏れだぜ?」


オネエ口調の魔族が空を切った手刀を残念そうに下げてクスクスと笑う。


「間違いないわ…あなたがワタクシの部下達を(ほふ)った戦士…ね」


「だったら…?」


オカマ魔族はビシッとポーズを決めて名乗る。


「ワタクシはヨンギ、魔族の現四天王の一人よ!仲間の仇!覚悟なさい!」


「見張り番はどうした?」


「背中ががら空きだったから殺しちゃったわぁ。手駒にするにはワタクシの趣味趣向とは違うのよねぇ。人間って変化させても不細工になるのよねぇ」


アキトは自然と木刀の柄を握る手に力が入る。

ヨンギと名乗った魔族は体術に自信があるようで構えもしっかり決めてスラッとした体躯(たいく)を見せ付けてくる。


「ワタクシの拳…早々に見切れると思わない事ね!」


甲高い掛け声と共に繰り出される拳と足技の数々、アキトは体(さば)きだけで回避しさながら踊りを踊るかのようであった。


「まさか…!ワタクシの技が…!」


「悪いな、止まって見えるぜ」


時の圧縮により全て紙一重で避けることが出来るとアキトは豪語し最後の一撃を回避した所で反撃の姿勢に入る。


「ちっとばかし骨に響くぜ!」


骨盤目掛けて高速居合抜きを披露してヨンギは弾き飛ばされる。


「モーレツ!受けで勢い殺してなければ砕けてたわ!」


流石四天王を名乗るだけあって今までの魔族と違いピンピンした様子でまた構えを取る。

負けを認める訳にはいかないとまるでアキト側が悪かの様に言い出してアキトも呆れ返る。


生命(いのち)のやり取りする上で正義や悪は無いだろう?」


「そうね、勝った方が正義…ワタクシは仲間の仇を討つ!」


「俺もお前に殺された仲間の為に復讐鬼になるぜ?」


納刀ポジションに木刀を戻してアキトは集中する。何か大技をされると判断し妨害に動くヨンギ。地を蹴って土埃を勢い良くアキトの顔面に飛ばす。

視界が潰されても気は辿れるとアキトは目を瞑り敵の気配を探る。


(攻撃の構え…来る!)


スッと顔面狙いの右ストレートを首を傾けて避けてカウンターを土手っ腹に叩き込む。


(浅い!?)


「ぬおぁ…腹筋ガード!…ぬっふっふ、やるじゃない」


「マジカルフィジカルかよ…」


思い切り叩き込んだはずだが耐えきったヨンギは苦悶の表情を浮かべつつしてやった感を出す。


「目も使い物にならないならコレでフィナーレよ!」


アキトに目潰しが効いている今が最大のチャンスと大きく踏み込み乱舞を打ち込む。

気の探知と時間操作に全神経を集中させてアキトは敵の乱舞を全力で回避する。


「ええい!ちょこまかとぉ!」


(奥義で仕留めるには乱舞がウザいな…もう一回動きを止められれば…!)


暴れまわる敵にアキトは今一度カウンターの殴打を繰り出す。それを受け止めるつもり満々な敵は二度目の腹筋ガードを決めて耐えきってみせる。


「流石に二度目は痛いじゃない!」


「二回耐えてるのがおかしいんだよ」


「逆境のオカマは無敵なのよぉ!」


めいいっぱい大声でアピールされて周囲の民家に火が灯る。


「うるっせぇ!今何時だと思ってんだよ!」


ただの喧嘩と思われていて失笑しつつアキトはグッと力を込める。敵もこれで最後だとアキトの動きが止まっているのをチャンスと思い強く拳を握る。

決着の(とき)、アキトの必殺の一撃が炸裂し魔族の腹に風穴が空く。


「流石に三回目は防げなかったな…」


「ぜ、ぜんぜん違う技じゃない…ウソつき」


「よく言われる」


ドサッと力尽き倒れるヨンギにアキトは軽く武人として黙祷を捧げつつ仲間の仇を取る。


翌朝になって全てが明るみになって大騒ぎになり立役者として休んでいたアキトは面倒臭くなりレインに丸投げしようとする。


「休みくれるんじゃないんですかぁ!?…うわ、なんかアキトさま血生臭っ!」


「あー、もう分かったよ…コートの洗濯頼むわ…ふぁー」


結局後処理もアキトがするのであった。

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