リーダーは?
アキトはお腹の音を鳴らしながらレックス達を探す。
先に昼休み休息を取っていたレインとレックス達を見てアキトは頭を痛める。
「レインさーん?何でお先に食べてるんですかねぇ」
「あ…アキトさま。これはレックスさま達が先に食べるというのでご一緒しただけで…」
アキトは「そうか」と元気のない返事をしつつ自分も食べようと空腹を訴える腹を擦る。
雑穀飯とスープと干し肉、野菜が足りないとアキトはスープに浮くちょっとした野菜を突付いて愚痴るが我慢して食べる。
襲撃で畑にも被害が出て食料に制限を掛けているとレックスから聞いて大きな溜め息が出る。
「俺が居たらなぁ…こんな事にはしなかったんだが…」
「アキトさん一人で止められる事態じゃありませんでしたから…気に病まないでください」
「別に病んでる訳じゃないさ」
食への愚痴は厨房に立った者としての正当な苦言だと笑いガツガツと全て平らげる。
後から来たのにそのペースに唖然とされる。
「で、死傷者は?」
ご飯時にする話しじゃないのにアキトは尋ねてきてシシーは不機嫌そうに答える。
「倒壊した家屋の開拓民一人が犠牲、他は冒険者に怪我人多数」
「そうか…家屋の配置は変えるべきか?」
冒険者を外に配置するべきかとアキトが語りレックスも同意する。
「出撃しやすくなりますし!その通りですね」
「今のままなら犠牲になる人が変わるだけよ!」
襲撃対策なんて簡単には出来ないとシシーはレックスの能天気さを怒る。
アリスは警備をするようにすれば良いと今後の役割を増やす事で回避できると語る。
「外の探索遅くなるけど…冒険者を警備に当てればいい」
「頭いい!」
ノリノリのシシーに全員それは考えたと微妙な顔をするのであった。
ーーーーー
昼食後、荒野の詳細を聞きたいと呼び出されるアキト、報告書は出したんだがと他に話すことあったかなと頭を掻きながら研究棟に顔を出す。
「アキトさんの調べた通りの情報だとこの火虫と牛鬼というモンスターが厄介ですね…」
「だな、拠点を近くにすると破壊されかねない…」
「何か気付いたことは?」
報告書に記載していない情報は?と尋ねられてアキトは頬を掻く。
「遠くからも見えたから回避は出来そうだな…あとは…大岩を避けてたな」
自分達のキャンプした大岩にぶつからないように火虫が回避したと答えると成る程とメモ書きを付け足す。
どちらにしてもよる眠れなくなる程の騒音だとアキトは笑って答える。
「他に何か気付いたことはありますか?」
「そうだな、荒野ってだけあって食料は皆無か、あ!」
アキトは魔族が来ていた事を思い出して話す。
「襲撃犯かどうか知らないが朝方に魔族を見かけたな、すぐに飛竜に乗って山の方角へ飛んでいっちまった」
「山…やはりあの山麓に魔族の住処が…」
「かもな。ま、もしかしたらその向こう側って事もあるが」
どちらにしても越えるべき山が遠いとアキトは語り今は拠点の規模を広げることに注力する事とするのであった。
ーーーーー
数日後、新大陸に着いて二度目の船が来航する。
新規の開拓民と冒険者が多数やって来て早速冒険者側が問題を起こす。
「王国出身の冒険者、マックスだ!ここの大将はどいつだぁ!?」
光るハゲ頭をさらに光らせ叫ぶとタロスが面倒臭そうに紳士的な対応する。
「どうもマックスさん、帝国というのは些か大見得ですが…代表のタロスです」
「おう!力比べしようや」
喧嘩っ早いマックスにタロスはやれやれと頭を振る。
「大将が力自慢というのは安直過ぎませんか?」
「バッキャロー!力無くして人は束ねられねぇ」
「チカラと言うものを勘違いなさっていますね…」
タロスは指を鳴らすと冒険者が集まってくる。
マックスは鼻を鳴らしてそれがどうしたと意気がる。
指揮能力もまたチカラであるとタロスは腕自慢のマックスを説得するがとにかく力試しがしたいマックスはタロスと試合したいと願う。
「戦闘狂じゃあないか…」
「ちげぇやい!俺はアンタの実力が見てぇんだよ!」
マックスの願いに仕方ないとタロスは木剣を用意させる。対するマックスは木斧を要求、二人が武器を手にして試合という名の喧嘩が始まる。
先手を打ったのはマックス、力に任せた重い一撃をタロスに遠慮なく放つ。
タロスはその一撃を流し受けしようと剣で向きを逸らそうとする。しかしパワーが勝り両手に衝撃が伝わりタロスは苦悶の表情を浮かべる。
「やるじゃないか」
マックスは余裕の表情でタロスの健闘を褒める。
「っぐ、馬鹿力が…!」
甘い仮面が剥がれかけているタロス、こんな脳筋をリーダーにするのは自分が許さないと奮起する。
今度はこっちの番だとタロスは剣を構え直し素早く連撃を浴びせる。
速度で上回るタロス、攻撃をガードしきれず身で受けるマックス。
「浅いぞ!」
「そりゃ木剣だからな!」
剣だったら勝ってるとタロスは言うがマックスの初撃に剣が耐えられたかどうか怪しく勝負は一進一退となる。
次で決着と二人が睨み合っているとアキトが大工の手伝いがてら現れる。
「何やってんだオメェら!仕事しろ!新人沢山で住居足りねえってのによぉ!」
マックスがアキトを見て身構える。
「テメェは!…まだレベル1なのかよ」
久しぶりのレベル1煽りにアキトは顔を顰める。誰だよと思いつつ記憶を辿ると一人のツルッパゲガ脳裏を過ぎる。
「ハ…じゃなかったスキンヘッドの…ま…まー」
「マックスだ!貴様舐めたことしてくれたな!?」
タロスは呆れ顔でアキトを見つめる。
「何やらかしたんだ君は…」
「何も?飯奢られて…奢り返しただけだって」
腕相撲でコテンパンにされてプライドズタズタなマックスはその言葉に憤慨する。
「ステーキ美味かったか?」
「覚えてねぇよクソがっ!」
タロスとの喧嘩よりもアキトに狙いを定めて木斧を振り回してくる。それを「アブねッ」とひらりとかわすアキト。
喧嘩はしたくないがこの場を治めるには相手する必要があると理解しアキトは木刀を抜いてタロスよりも素早くガンガン斧を叩いてマックスの手から弾き飛ばす。
「満足したか!?チャンバラなんざ子供の遊びだろうが!」
「「っ!」」
負けたマックスも熱くなっていたタロスも子供と言われて恥ずかしそうに顔を赤くする。
「ほら筋肉ハゲ!仕事だ!大工しろお前」
マックスは自分の名前を何度も主張するがアキトに言いくるめられて仕事に従事させられるのであった。
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拠点は更に大きくなり丘の手前まで加護は広がる。
帰りの船に教会のメンバーが乗り次回来る時は次の拠点が作られる時と聖女を連れて去っていってしまう。
「聖女さまぁー」
レックスは情けない声を漏らし周りの女子からポコポコと殴られる。
「あー、情けない!しっかりしなさいよ!」
「憧れの聖女様がー」
今日はダメそうなレックス、タロス組も数名ファンが居たのか同じ様な空気感でありアイドルの重要性を考えさせられるアキト。
(リーダーだけじゃなくそういうシンボルって必要なんだな…深く考えたこと無かったな)
人をまとめるというのは力だけじゃないと再認識させられる夕刻の話。
結局この拠点のリーダーは誰なのか等と考えるアキト、能力も実績もあるタロスなのか腕っぷしのマックスなのか自分は無関係だしと考えるのをやめてさっさと夕食にしようと大衆酒場に入る。
人が増えて盛況さは増していて配給飯も心做しか少なくなっていてショックを受ける。
(こう食が減ると気も滅入るって奴だな…狩りしようかな…)
大量に牛肉が取れる牛鬼の群れをどうにか出来ないものかとアキトは減ったご飯を前にして考えるのであった。




