魔族との確執
何とか持ち帰った木材と熊、当然全員がドン引きするがモンスターを食おうとするアキトの行動に流石にストップが入る。
それ食えるのかとレインはアキトに尋ねる。
「肉は肉だろ?加熱すれば基本大丈夫だろ?」
「毒は?」
「内蔵食わなきゃ大丈夫だろ。内蔵は流石に危なそうだ」
表面の肉は食えるはずというアキトの言葉にじゃあお前だけ食えとジェレミーを始めとするアキトを快く思わない面々にツッコまれアキトは勿論と研究者と共に調理に当たる事にする。
「モンスター肉なんて…普通興味持たないだろう?」
と研究者に言われてアキトは毛皮を指差す。
「毛皮だけでも剛性強いし使えるぞ?まぁ食ってみようぜ?獣型なら忌避感少ないだろ?」
「そ、そうか?そうなのか?」
冒険者は皆こんな感じなのかと偏見を持たれそうになり調理場に立つレインは「んなわけあるか!」と憤慨しツッコむ。
「アキトさまが特殊過ぎるんですよ!」
「モンスターだろうが生き物だ。自然に感謝しろ」
まだ食べてもいないのに「そんな事言って…」と呆れられるのであった。
血抜きし皮を剥ぎ塩を塗り込み筋に沿って切り手頃なサイズに切って焼肉にしてみる。
ジュージューと良い音を立てて肉を焼くアキト、まずは一欠片口に入れて堪能し「悪くない」と口角を上げる。
隣のレインは信じられないと言いたげな目を向けるが焼肉の香りに負けて自分も一口とアキトから受け取り口に含む。
「こ、これは…!?塩と織り成すほのかな脂身の甘味…歯ごたえのしっかりとした赤み肉…嘘でしょ…」
研究者達もそんな馬鹿なとアキトから受け取り口に含み目を丸くする。
「熊肉の特徴だな、牛肉に近い歯ごたえだな…うん、モンスターもその動物に近いものなんだな」
これならいくらでも食えるとつまみ食いをまたしようとするがレインに止められる。
「皆に振る舞うんでしょ?」
「え?俺が一人で食うんだろ?ジェレミーだっけ?教会は肉食タブーなんだなー」
「ち、違うと思いますけど…」
結局研究者のお墨付きで熊肉を振る舞われて皆その味に舌鼓を打ちアキトの悪食の意味を多少理解するのであった。
ーーーーー
翌日、皆肉食に目覚めたのかあれも食えるのかこれも食えるのかと平野側も盛り上がっていた。
「何でも食えるわけじゃねぇんだがなぁ…」
アキトは毛皮は防寒具、内蔵は堆肥作りに使われた熊の素材を考えて適材適所と笑う。
無理にたくさん狩っても保存出来ずに食えないぞと注意だけしておく。
保存と聞いてレインは塩漬けについて言及する。
「塩なら一杯手に入りますし?作るなら出来ますよ?」
「確かにその通りだが…それだと水の確保も必要だろう?」
「エールならあるのに…」
お酒なら樽で一杯持ってきたのにと資材に並ぶ樽の山を指差す。アキトはお酒は飲めないと苦笑いする。
「勿体ない」
「アルコールは感覚鈍るからな…」
言い訳ではあったが納得されてこの話は一旦区切って今日の探索は何処へ行くのかと尋ねるが木材伐採はまだ必要だと小屋の数を確認して答える。
またかと溜め息をつくレインに森に入るかと語り合い木材の枝葉落としよりも一緒に行くと答えるのであった。
二人で森に入り伐採の人間に危害が及ばないように警戒に当たる。
どうせなら水源も探したいとアキトは耳を澄ませて水の流れる音を探る。
「聞こえますか…?」
「いや、木々のざわめきしか聞こえないな…鳥の鳴き声すら無い」
鳥などが居ないのは伐採の影響じゃないかとレインは話しアキトもそうだなと頷く。
森林浴を楽しむレイン、アキトは警戒してピリピリした気迫を放ち続ける。
(なぜそんなにピリピリしているのでしょうか…)
レインのそんな視線を受けてアキトは軽く深呼吸して自分語りを始める。
「警戒心強いのは自分の癖…というのは建前だ。正直魔族への怒りがそうさせている」
「怒り…?」
語られていないアキトの過去に何があったのかとレインはその過去を知りたいと聞こうとする。
「魔族と昔何か…?」
「俺が故郷の探偵時代の弟子を一人…まぁ、復讐にしてはショボいが悲劇を繰り返したくなくてな…向こうからしたら俺は仇なんだが」
「か、仇ぃ?」
飛躍してきた話しにレインはまた凄いことしてたのかと疑いの目を向ける。
「連中の王を一度仕留めてるからな…二代目とかいるだろうがな」
「作り話ですか…もうなんか後から付いてくる情報が壮大過ぎますよ?」
魔族の王つまり魔王を一度倒していると話すも信用されず笑い話にされてアキトはそれでもいいやと苦笑いして補足で魔王についても語る。
「魔王は魔力で自動治癒して結局特殊な倒し方するしか無かったし…そんな奴がコッチにも来てる可能性あるからなぁ」
「どうやって倒したんですか…ウソっぽい」
「魔力の無い世界へ連れ込んでぶっころ」
地球へ隔離してそこで決戦したとアキトは語り若い自分が敵対した神にやった作戦の原点はそこにあるとゲラゲラ笑うが船の上で話した事は殆ど寝てて聞いてなかったとレインは申し訳なさそうに謝るのだった。
「別に知らなくても良いことさ、その時になったら考える。やり方は幾らでもある」
「無茶な事…無茶苦茶なやり方するんですよね…皆心配しますよ?」
「心配してくれるのか、そりゃ本懐だな。勇者冥利に尽きる」
自分を勇者だなんてちょっと傲慢ですとツッコミを入れられるアキト、確かに恥ずかしい事を言ったと苦い顔をすると背後でパキッと枝を踏み付ける音がして一気に緊張感が高まる。
「何か居ます!」
「ああ、分かってる」
今日は木刀で昨日のようなウルフベアが出たら困るなと冷や汗を垂らす。
その嫌な予感は当たり二匹目の熊さんの登場にアキト達は渋い顔をする。
「生きてるのを見ると…デカいですね…」
「いや、昨日のより確実にデケェ!」
急ぎ旅行鞄を呼び出すもこれくらい一人でやれといった態度で武器は出してくれず応援だけされる。
「ッチ、来るぞレイン!」
舌打ち混じりに散開の指示を出して飛び掛かりを回避する。
レインはカウンターで顔面に棒を叩きつけるが怯みはするがダメージは少なくウルフベアに狙いを付けられて息を呑む。
アキトがそうはさせないとウルフベアの後ろ足を思い切りぶん殴り狙いを逸らさせる。
ズレた狙い、地面に大きく爪痕を残しレインは過呼吸気味になりながら棒を振り回し手を攻撃する。
「効いてない!」
「硬いからな!俺がやる!離れろ!」
攻撃の通りが悪くレインがやられる前にアキトがレインの前に立ち振り下ろされる手を激しく打ち付けウルフベアの姿勢を崩すのがやっとでレインは昨日はどうやって倒したのかとアキトに叫びながら確認する。
「昨日は精霊付きの斧があったからな!」
「精霊!そうだ!私にだって!」
レインは精霊と聞いて自分が以前アキトからプレゼントされたカフスに手を当てる。
「お願い!力を貸して!」
ピカッとレインの手元が輝いて妖精のような姿の小さな精霊が呼び出される。
「シルフ!ウィンドカッター!」
ズバッと妖精から何かが放たれウルフベアに命中し切り傷を作り出す。
攻撃が効いたと喜ぶレインだったが傷は浅く逆に怒りを買うだけで逆上したウルフベアの攻撃を再びアキトが何とか弾く。
「っ!狙いを定めろ!効果的な場所を探せ!」
アキトのアドバイスにレインは頷いてすぐに弱点を探そうとする。
しかし何処も硬い毛皮で覆われていて分からないとパニックになる。
グワッと口を大きく開きアキトの木刀を噛み砕こうとするウルフベアにレインはハッとしてその口に再びウィンドカッターを放ち顔面を横に二分割する。
今度こそウルフベアは地に伏してレインは自分で掴み取った勝利に歓喜するのであった。




