新たな大地
船旅を始めて早二日、船の進み具合は順調とは言えずアキトは予想通りと食料多くして良かったと安堵しながら釣りをしていた。
(まぁ無風で船が止まってる間はこうして少しでも…っとキタキタ!)
竿を引く反応にアキトは喜びながらグイッと引いて一匹魚を釣り上げる。
早速船員に見せるアキト、外道(本命、食えない魚)じゃない事を祈る。
問題なしと出て本日の夕食に焼き魚が追加される事が決まる。
隣では海水から少しでも生活水の生成を試みるシシー達。魔法の力で簡単精錬水を作り出す。
得意気になるがコップ一杯の水を作るのにかなりの時間と魔力を消費していて魔法の水を作ったほうがマシだと嘆き始める。
身体を洗う濡れタオル程度なら魔法の水で良いだろうが飲水には向かないだろと真水の危険性をアキトは説く。
「ミネラルや何やかんや入ってない水は飲水には適さないの!」
「知らないわよ!水は水でしょー!?」
化学とか知るかと喚く魔法使いの卵たち。アキトは頬を掻きながらこのままだとコイツら本当に真水を飲みかねないと危惧するのであった。
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動きがあったのはその日の夕方。
「見えたぞー!新大陸だ!」
マストから聞こえた声に全員が歓喜し新大陸に胸高鳴る者、期待と不安入り混じった顔をする者、やっと船から降りれると喜ぶ者と様々だったが船長が上陸にストップを掛ける。
「もう夕刻、今からだと接岸しても日も落ちて危険だ!上陸は明朝に合わせる!異論は認めねぇ!コイツぁ俺の船だ!」
アキトやタロスも同意し面々は渋々今夜も船に揺られる事が確定したのであった。
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明日の上陸作戦に合わせて船長、アキト、タロス、研究者の代表でジェレミーが打ち合わせをする。
「羅針盤を確認した。間違いなく新大陸だ。明朝まず冒険者隊を下ろして周囲警戒、キャンプ設営と加護貼り。問題ないな?」
三人揃って異論無しと答えてアキトとタロスは今夜の守り番について語り合う。
明日に向けてしっかり守りを固めたいアキト、上陸作戦に人員を割きたいタロスで意見が割れる。
「本日の周囲警戒は必須、確実に相手にも此方の情報は伝わっている」
「ならばこそ上陸作戦の失敗は許されない。向こうもここを潰してくると読むべき」
どちらの言い分も相手次第と後手の対応になるアキト達、昂るアキトは夜通し可能だが他はどうかとタロスに確認するが答えはノー。
アキトは最悪自分一人でやると意気込みジェレミーから小馬鹿にされる。
「レベル1を見せつけるおバカに任せるか?ありえん!」
タロスはギロッとジェレミーを睨みつける。
「コイツはそこらの連中とはレベルが違う。見た目に騙されるなよ?」
「な、なんで味方してんだよ…こっちは命掛かってんだぞ…!」
「悪いがこの船でコイツは誰よりも強い、それは認めざるおえない」
帝国の中でも有力なタロスの言葉ならと渋々従うジェレミーであった。
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「なんで私までー」
アキトの話し相手としてレインが一緒に停泊中の甲板で警護に当たる。
愚痴を言いつつも「暇だろ」と言われると否定できない自分が苦々しい思いであった。
釣りをしながらアキトはレインに雑談を提案し月明かりの中でアキトは思い出話をする。
もう一人の若い自分の世界での話をしていると丁度異世界での旅について語りあったタイミングでレインがぐーすか眠ってしまっているのに気付く。
「やれやれ、もう寝たのか…まぁ俺が一方的に話したから仕方ないか…出てこいよ?」
アキトが反応しない釣りを諦めて立ち上がると飛竜に乗ってまた一人武装を固めた魔族が甲板に降り立つ。
「つまらん話だな。俺まで寝ちまいそうだったぞ」
「ひでぇな、俺が話すの下手だって言いたいのか?」
魔族の男は腰の剣を二本抜き出しそれに煙を吹き付けて空飛ぶ剣にする。
器用なものだとアキトは煙の勿体ない使い方に呆れる。
「話に我らの力が出てきたのでな…小細工無しだ!」
魔族の周囲に浮かび攻撃待機する二本の剣、アキトはどのように攻略するのかと思われたが木刀一本で十分と速攻を仕掛ける。
迎撃に動く剣達をアキトは剣の峰を殴りへし折る。
「太刀筋が見えるのか!?」
「丸見えだな!」
雑魚と思っていた相手が手練れと分かり魔族は口角を上げて背中の太刀を抜く。
「死合うて貰おうか…」
「武人か、言っとくが俺は汚いぞ?」
勝負は一瞬で決まると二人はジリジリと間合いを詰め合い睨み合う。余裕そうにするアキトに比べて実力差を肌で感じ取り焦る魔族。
一歩また一歩とすり足で遂に制空圏がぶつかる。
「かぁッ!」
威勢の良い声と共に打ち込む魔族、アキトは攻撃を見切り木刀でタイミングを合わせて相手の太刀を大きく弾き返しそのまま駆け抜け際に首に激しい一撃を打ち込み撃破する。
主が倒されて逃げていく飛竜にアキトはしまったと軽く溜め息をついてもう追い付けないと肩を落とす。
(ま、一人じゃ無理だわな。死体どうすっかなー、海に捨てるか?)
サハギン達と同じ様にアキトは名前も聞いていない敵を海に捨てて手を合わせる。
(武人らしく散っていったな…名前聞き忘れたが…悪かったな…)
追撃が来るかとアキトは静かに日の出まで甲板を死守する事にするのであった。
敵襲はもうなくアキトはじっと日の出と共に見えた新大陸の影にテンションを高める。
(今日、コレから真の冒険が始まる!気合いも入るってもんだ!)
陽の光に当てられてレインも目を覚まし自分が寝ていた事に慌てて周囲を見渡す。
「な、何も起きてませんよね!?よね?!」
乗り物を逃がしてしまった事から敵襲があった事は黙っておこうとアキトは背中で何も無かったと語るのであった。
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船が動き始め冒険者達もぞろぞろと上陸作戦の準備を始める。
接岸するまでも奇襲に備える一行であったが静かなもので緊張感だけが高まっていく。
船が接岸し橋がかけられて冒険者達が続々と降りていく。
初めの一歩は自分だと皆熱くなって全員走り出して危ないったら無いとアキトは甲板から静観していた。
魔族対策は用意している面々は平地を制圧しようとモンスターを退治しながら草刈りのように剣を振るっていく。
アキトは冒険者の最後に続いて降りて軽く伸びをする。
レインは不思議そうにアキトを見つめる。
「アキトさまも我先にと行くと思ってました」
「あー、まぁそういうのも有りかなって思いはしたけどわざわざ波風立てる事もないよなって」
嫉妬だの何だのを受ける理由は無いと笑って雑魚との戦いに夢中になっている面々を見て思っていたよりも平和だと感じる。
(昨日逃がしたので敵が来ると分かってて何も対策してない…妙だな…)
何も起きないに越したことは無いが平和ボケは困るとアキトは注意深く周囲を観察する。
砂浜から平地、遠くに見える山、その手前の丘の数々。平々凡々な土地で後ろの研究者達もコレなら移住は容易と安堵していた。
「君は行かないのかい?」
研究者達はアキトとレインは他の冒険者と一緒に行かないのかと言われる。
「ほらアキトさま!行きますよ!」
レインからは後に続く気満々な台詞が出るがアキトは冷静に周囲を見渡す。
「研究者の護衛が居ないじゃないか…予定と違う」
「あ、本当だ…」
皆飛び出してしまってアキトは残念と肩を竦めながら今は護衛しようと苦笑いする。
教会の人間からもそれが当然と鼻高く言われてアキト達は冒険者が切り拓いた場所へ荷物と共に移動開始する。
テントの設営等を手伝いながら暫くは動けない事を理解しアキトは逸る想いを押し殺すのであった。




