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初めての仕事

翌日、亜人の国入りの日。

宿場町で宿を出ながらレインは血涙を流しそうな勢いで悔しがる。


「何゛も゛無゛がっだ!」


「そりゃ俺は拒否するからな…ほら、御者がもう待機してる。行くぞ?」


馬車に乗り込みまた暫く揺られて昼前には国境という簡素な関門所で通行の理由を確認されてそのまま通される。


「すごくあっさりしてましたね…もっと緊張しているのかと思いました」


「街道にしか検問所的なのがない所を見るに殆どフリーパスだろう。お尋ね者の人相書き程度しか無かったしな」


「お尋ね者も街道から逸れたら簡単に入れちゃいますよね?」


何も無い草原を見渡してレインはのほほんと答える。

そういう意味でも検問する理由は薄いんだろうとアキトは答える。


「確かにとなるとやはり商人の積荷の確認か?」


問題となった奴隷貿易の件かと二人は顔を見合わせる。

最初に想定すべきだが抜けているなとアキトは頭を掻く。


「ま、無関係だし旅人は楽だからいいや」


「ええ、そうですね」


完全に観光気分な二人だったが国境を越えて早々に厄介事が襲い掛かる。


「そこの馬車!止まれ!商人ではないな?積荷を確認させてもらう!」


鎧を身に纏った半犬顔の亜人が馬車の前に立ち待ったを掛けてきた。

御者は大人しく従い馬車を止めて二人に一旦降りるよう告げる。

アキトとレインは帝国側とはエラい違いの検問の緊張感に思わず苦笑いする。


「要件は?」


「冒険者組合の依頼を…」


「そっちの女中は?」


鼻をクンクン鳴らして匂いを確認されてレインはアキトのお付だと答える。


「…本当にか?スンスン、その割にそっちの男と肉体関係が無さそうな匂いだが…」


「サイテー!」


ベシッとレインは思わず張り手してしまいハッとしてすぐに謝る。

フォローの為アキトも呆れながら答える。


「別に関係あるとかないとかそういう仕事の関係じゃない。というかメイド服はそいつの趣味だ」


「趣味?!…着替えようかな…」


「俺の呪い(コレ)と一緒だな。ハハハ」


張り手されたが二人の会話を聞いて変人な冒険者らしいと吐き捨てて「行って良し」と頬をさすりながら衛兵は宣言するのであった。


ーーーーー


亜人の国に入り最初の町、御者は案内出来るのはここまでと深々と頭を下げてアキトから報酬を受け取り帰りの準備を始める。

アキトとレインも御礼の言葉を送り早速冒険者組合を目指す。


流石組合、亜人だけでなくちゃんと人間も長耳もいて玉石混交(ぎょくさきこんこう)といったところであった。


「とりあえず私は到着の手紙を出します。アキトさまは適当な仕事受けて日銭稼ぎましょう」


「だよなぁ…足りない分は稼がなきゃな」


猫顔の受付嬢に挨拶すると眉間にシワを寄せられていつもの反応をされるが嘲笑混じりに簡単な仕事を見せられる。


「薬草採取か、まぁ日銭には丁度いいか?なにか討伐とかは?」


「討伐かにゃ?…スライムの核集めがあるにゃ」


「どれどれ…へー、じゃあ両方受けてちゃちゃっと稼ぐか」


初心者が受けそうな仕事でもいいやとアキトは依頼書2枚確認して受け取り早速仕事だと手紙を出そうとして男共に絡まれているレインを呼び付ける。


「仕事決まったぞー、手紙はまだか?」


「あの…助けてくれません?」


メイド服姿に欲情した飲んだくれ数人に囲まれているレイン、暴力沙汰はしたくないとアキトに助けを求めると男達はアキトをひと睨みして呪いを見て爆笑し始める。

またコレだとアキトは辟易(へきえき)とした様子でレインに近付く。


「手紙は出せたのか?」


「えーっと…はい。一応?」


宛名までは書ききったと答えてアキトはレインの手を引く。


「おう、あんちゃん先に俺らが目を付けたんだぜ?」


「コイツは俺のツレだ。手ぇ出すな」


「ナメんじゃねぇ!」


酔っ払いの攻撃、軽くアキトは素手で受け流しすっ転ばせる。

ガシャンと周囲を巻き込みアキトは深く溜め息をつく。


「おいおい、お代は払わないからな?」


あわや乱闘騒ぎに発展しそうになり猫顔の男が組合の方から顔を出してシャーと威嚇する。


「テメェら!昼間から飲んだくれてるくせに騒ぎ起こすんじゃねぇ!出禁にすっぞ!仕事受けろや!」


組合の偉い人には勝てないと全員尻込みしてアキトは感謝しつつ仕事に向かうのであった。


組合を出てからレインはアキトに依頼の内容をウキウキで尋ねてその簡単過ぎる内容に落胆する。


「何ですかその初心者が受けそうな依頼!」


「そう思うか?難しいぞコイツは…!」


そんな訳ないともう一度確認してただの薬草とスライムの核、ターゲットはどこにでもあってどこにでもいるとレインは声を大にする。

アキトはニヤリとして好きな方をやるとヒラヒラさせる。


「私、鍛えたいのでスライムで!」


「ほい、変えるのは禁止な?」


「アキトさまなんて中腰の姿勢で腰痛めてしまえ!」


割と的確な所を突いているとアキトは苦笑いしつつ二人は町から出て草原へ向かうのであった。


ーーーーー


草原に足を踏み入れてすぐにレインはニヤニヤしながらそこらをぴょんぴょん飛び跳ねるスライム群に楽勝と如意棒をピンと伸ばす。

アキトも居る居ると面白がってレインに激励を送る。


「よーし、やるぞー!」


特攻していくレインに対してありゃ駄目だなとアキトは呆れながら依頼書の薬草の特徴を確認して探し始める。


「えい!やー!」


バシッバシッと如意棒を叩きつけて勢いに任せてスライムを倒すレイン。

異変に気付いたのは十匹ほど倒してから。


「核が…落ちない!どうして!?」


戦い方に問題は無いはずとまた一匹始末するがやはり何も落ちない。

悔しそうに唸り遠くで中腰になっているアキトに理由を聞きたくなるが絶対笑われると意地でも自分で集めて見せると如意棒を必死に振り回す。


「ハァハァ…絶対におかしい!」


数十分激闘を繰り広げる息も絶え絶え、そろそろ休みたいと考えるレインはまたアキトをちらっと確認する。

鼻歌交じりに草(むし)りしているアキトにぐぬぬとなる。


(アキトさまもスライムに襲われちゃえばいいんです!)


丁度ぴょんぴょんとアキトに接近するスライム、アキトは無言で木刀を軽く振ってペシンッとスライムを爆散させて核をドロップさせている。

二つの仕事をこなしているアキトにレインは青筋を立てて叫ぶ。


「何でですかぁ!」


叫びが聞こえたアキトは無言で依頼書をヒラヒラさせる。

交換はしないと言っていた手前何かあるはずとレインは悔しそうに依頼書を確認する。

アキトがレインの苦戦を確信した理由がそこには(しる)されていた。


『尚、スライムの核はデリケートな為激しい攻撃を加えると駄目になってしまいます。細心の注意を払って下さい』


その文言が目に入り今までやってた討伐方法では絶対に入手出来ないと気付いて愕然とする。

軽く叩く、そんな意識したこともない戦い方を()いられるのかと注意しながら戦闘してみる。


「え、えいっ!」


ポコッと殴るとスライムは軽く弾けて核が残る。

やっと一つ手に入れたとレインはちょっと感極まってウルッとするが目標までまだまだ足りないと急いで次の敵を探すのだった。


先に戦って相当数を減らしていてアキトが仕事を終えるまでに目標数まで少し足りずしょんぼりした様子のレイン。

アキトはそんなレインを見てニヤニヤする。


「ちゃんと依頼は確認しないと駄目だろうに…ほら」


アキトは自分の取得した分の核をレインに手渡す。

数は十分足りたどころかアキト一人で目標数集めていてレインは悔しそうな顔をしてアキトを睨む。


「最初から私には期待してなかったって事ですかぁ!?」


「俺に聞かなきゃ一個も手に入らなかっただろうに…いいのか?金入らなきゃ今日の飯抜きだぞ?」


「〜ッ!」


飯抜きは絶対に嫌だと悔しそうに核を受け取るレインなのであった。

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