婚姻の儀
内密な式典となるとケインズから事前説明があったがそれでも緊張した様子で正装に袖を通して帝都へ向かう。
アキトが普段着なのは如何なものかとケインズに心配に心配されるが参列の際は端っこにいるからと武装モリモリな事は黙っている。
「参列か、そうだ。ラーナの護衛をしてくれた彼らも呼ぼう!勲章持ちなら問題無いだろうし皇帝も許してくれる。ラーナも喜ぶぞ!」
ケインズは良い人全開にニコニコ微笑みアキトの服装も誤魔化せると付け加える。
レインにもクスクス笑われ、主に気を使われてしまったとアキトは「面目ない」と頭を掻く。
「アキトさまも騎士としての自覚を持てば真っ黒な服ではなく鎧を身に纏うくらいして欲しいものですが…」
「鎧は嫌だな、重いし暗器が仕込めない」
「まぁ、騎士道精神のきの字もないのですね!最低ですよ?」
真反対にいるからなとアキトはゲラゲラ笑うが主の前だと気付いてハッとして口を手で塞ぐ。
ケインズは「それも戦い方」と容認してレインは理想を押し付けるのに失敗し軽く頬を膨らませるのであった。
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帝都、城門前に到着し馬車を降りる三人、このまま城に入るのだと気付いてアキトはハッとしてケインズを止める。
「どうせなら花束でも持っていけばいい!ちょっくら買ってきます」
「え?…ああ」
困惑するケインズ、城門の兵士に説明し少し待ってもらう事になる。
アキトは手早く花屋で適切な花言葉の花束を見繕ってもらい茶化す気持ちで本目の石鹸も購入する。
レインに渡してとんでもない勘違いをされたが夫婦になるなら多少は許されるだろうと面白半分だった。
すぐにアキトは戻って来て花束とレインに見えないように石鹸も皇女に渡す様に伝えて渡す。
温室育ちの皇女に伝わるかは分からないがそういう覚悟を伝えるなら丁度いいと主も煙に巻くアキトのお茶目であった。
城に入り謁見の間まで向かい皇帝とラーナフィーユと顔合わせする。
皇女の元気そうな姿にケインズもアキトも安堵する。ケインズはにこやかに石鹸入り花束を渡しラーナは歓喜し小躍りする様に受け取る。
「まあケインズ様、とっても綺麗な花束!」
アキトがそっと花言葉の歯が浮きそうな愛のメッセージをケインズに伝え言わせる。
「花言葉は『永遠』『愛の誓い』『貞節』です」
恥ずかしげもなく伝えて皇女は花束の中の石鹸を手に取り「此方は?」と疑問に思いレインは顔を真っ赤にしてアキトの脇腹に拳をねじ込む。
身悶えしながらもアキトはケインズに『覚悟』と伝えて民衆のお遊びの一つで何も知らないケインズはそのまま伝えてしまいまたレインから拳をねじ込まれる。
「ケインズ様も言葉遊びがお好きなのですね」
皇帝は『覚悟』の文言に大笑いして石鹸をそういう意味で捉えたかと知っている素振りで手を叩く。
「『覚悟』か!ハッハッハ。ケインズ卿も中々に冗談が分かる男のようだ。ますます気に入った」
「あ、ありがたき幸せ!」
ケインズはそう言われてちゃんとそっちも勉強しようと思うのであった。
話しやすい雰囲気にケインズは婚姻の儀にラーナの友人となるであろう護衛役を務めたレックス達の参列を希望し皇帝も許すのであった。
面会も一通り終えてアキトはレックス達に式典に参加要請を行いに向かう。返答は勿論快諾。
他の卿も参列の為に城に集結し始めて後日いよいよ式典が始まるのであった。
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緊張するレックス達の保護者ヅラで参列しているアキト。
「あの…やっぱり場違いじゃ…」
「大丈夫、堂々としていろ」
勲章持ちとして胸を張れと言われ冷や汗ダラダラで言われた通り身体をピンとさせるレックス。
卿達がそれぞれ皇帝、皇女、ケインズ卿へと挨拶を済ませていく。
アキトは卿達、特に友人として参列しているマサに対して目を光らせていた。
不審な動きがあればすぐにでも動けるように緊迫した様子を見せていてレックス達もつられて周囲警戒をしていた。
マサの番になり特に違和感もなく事が進む。
アキトが杞憂だったかと緊張の糸を緩めレックス達もまたホッとした様子であった。
「アキトさん分かりやすく警戒してましたよね?」
「まぁな、奴が一番の懸念点だったからな…」
それぐらい注意していたと語り安堵したのも束の間、卿達の挨拶が終わった直後式場内にガタイのいい悪魔が出現し奇襲を仕掛けてくる。
『主の命によりその生命頂戴する!』
指先から放たれたビームでケインズを狙撃する。
「ケインズ様!危ない!」
『なにィ!?』
ラーナがドンとケインズを突き飛ばし代わりに攻撃を受け胸を貫かれ倒れる。
突然の出来事にどよめきと困惑が広がり衛兵が呼ばれ騒がしくなりアキトはレックス達に悪魔を頼みラーナとケインズの元へと向かう。
「ラーナ!目を開けてくれ!ラーナ!」
「ご無事で…良かっ…」
アキトが懐からいざという時のエリクサーをサッと抜き出す。
(傷口が焼かれてない…実弾か!)
素早く傷口に薬を軽く掛けて残りをケインズに渡す。
「薬だ。まだ間に合う!経口摂取、口移ししてやれ」
「は、はい!」
残りを口に含みマウストゥマウスで薬を飲ませる。
(流し込めばいいがそっちの方が確実だしロマンスあるし…)
アキトはさっと悪魔の方を注視するが衛兵もレックス達も苦戦を強いられていた。
よく分からないが波動が悪魔から発せられそれにより身体が思うように動かないらしい。
『フハハ!貴様達の能力はレベル1並みに下げられ思ったように動けないだろう!?』
高笑いする悪魔にマサが剣を向ける。
「やめるんだ悪魔!」
『お前もだよ!黙れ!』
「あがっ…話が…違…」
何か喚くマサにも波動が向けられて片膝ついて思うように力が出ず剣を杖代わりに何とか立ち上がる。
『計画?命令?失敗した今どうでもいいんだよ!』
どうやら庇われ皇女に命中した事による自棄を起こしているらしい。
このままでは被害が広がるとアキトが木刀を抜いて悪魔に立ち向かう。
『何だお前!何平然と…』
「ほら?呪い見ろ」
『レベル…1ィ!?』
効かない理由を説明してアキトは覚悟はいいか?と木刀を平然と構える。
(元より世界のルールが通用しないから謎波動も受けないんだろうけどよ…つくづく便利な俺ルールだな)
『冗談じゃねぇ!レベル1に負けてたまるか!』
ビームの様な実弾を連射するがどれもアキトは涼しい顔して木刀でバシバシ弾き相手の脚に投擲物を投げつけ姿勢を崩す。
『馬鹿ナァ!』
「ほんと、馬鹿な話だよな。ほら消えろ悪魔!」
トドメだとアキトは飛び上がり兜割りするように縦振りで悪魔を一刀のもと床に叩きつける。
ガタイがいいだけあって耐久もありそれだけでは死に至れなかったのが運の尽き、すぐに波動も消えてお縄につくのだった。
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アキトの便利な呪いと活躍により皇女の生命も助かり負傷者も少なく済んだ。
勲章ものだのなんだのと卿達がざわつくが暗部の存在がマサを拘束しているのが見えてそれどころでは無い事態になっていた。
祖父のマイルスが深い溜め息をついて冷たくマサの名前を呼ぶ。
「マサ、やってしまったな?」
「な!?爺ちゃん…どういう…」
「お前はずっと監視されていたんだよ。今まで黙って見過ごして来たが遂に尻尾を見せてしまったな」
散々悪事を働いていたとマイルス卿は静かに言い放ち先の戦争の奴隷密輸の件にも関わっていたと言われマサは自己弁護をする。
「違う!そうしないと彼女達を救えなかった!俺は女のコ達を救おうとしてるだけだ!」
「救うか…愚かな孫よ。その結果がコレか!」
喝を入れられ自分で皇女を犠牲にしかけたと言われぐうの音も出ない程に言い負かされるのであった。




