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怪しい

昨日アキトが調査しなかったレックスの担当していたルート、そこをマサが選びアキトとレインは装備のまばらなマサの私兵と共に進む。


(統一感がないな…兵というには装備もちょっと心許無(こころもとな)いな)


アキトの考えを見抜いてかレインが小声でその理由を伝えてくる。


「殆どは奴隷身分かと…帝国では珍しい獣人も混ざってます」


「奴隷ねえ…何で連れてくる必要あるんだ?」


アキトがマサに聞こえるように尋ねるとマサは大笑いする。


「ハハハ、君やメイドよりは働くと思うよ?」


「そうか、肉壁にするとか言ったら殴る所だった」


アキトの言葉に私兵達はギロッと睨み付けてきて教育はよく行き届いているとアキトは褒める。

喧嘩するつもりはないとアキトは続けて軽く手を上げてアピールする。

街道の端から飛び出す雑魚はマサがしっかり対処していて口だけじゃない事が分かる。しかし、その度に黄色い声援に気疲れを感じる。


(成る程精神的なバフ要員か、俺はキャーキャー喚かれるの好きじゃないがそういう奴もいるよな…)


レインも少しドン引きしていてアキトを盾に少しでも声が小さくなるようにしていた。

微妙な空気感の中で遂に猪の集団が召喚されて怒涛(どとう)(ひづめ)の地鳴りが響いてくる。


「来るぞ!」


アキトが声を上げるとマサは余裕な表情で手を前に突き出し空中に円陣を作り出して炎の魔法で一蹴してしまう。

黄色い声援が響きアキトもレインも目を丸くする。


「な、何なんですか今の魔法…」


「無詠唱か…まさかな…」


アキトは薬を取り出しグイッと飲み干しマサ達を飛び越える。


「失礼、確認してくる」


「待て!」


マサは驚いた様子でアキトを呼び止めようとする。アキトは振り返った瞬間正面から来ていた悪魔と正面衝突し消し飛ばしてしまう。


「「あ…」」


気不味い空気が周囲に流れてアキトは「ヤッチャッタ」と何故か逃げずに立ち向かってきた敵を体当たり一つで殺してしまったと白目になる。

マサは額を抑えて予定が狂うと言いたげに「あーもう」と小言を呟きアキトを指差す。


「俺の部隊で好き勝手するな!」


「いやぁ、召喚士が逃げると思ってさ…何か体当たりしてきてぶつかっちゃって消し飛ばしちゃった」


悪態つきそうになりながらマサは言葉を我慢して「帰る」と機嫌を露骨に悪くする。


「他のとこに協力は?」


「召喚士は君が倒した、もう要らないだろ?」


「三つ部隊があるのに?」


アキトはカマかけする様に当然の疑問を口にしてマサは「知らない」と鼻を鳴らして街へ帰ってしまう。


「まだいるかもしれないのに?」


レインに監視を頼みアキトは他の部隊を確認しに行くのであった。


ーーーーー


他の部隊ではマサの言う通り召喚士不在で敵も殆ど存在せず全部隊調査終了で状況終了で報告となる。


結局アキトの暗躍のせいで召喚士の正体は掴めず表向きは原因は不明のまま大発生は幕を閉じる。

冒険者の努力よりも後から来たマサのお陰で何とかなったという空気感にされて不満は端々から漏れていたがそれが円滑に事が進むとして納得を得られたがケインズからの増援扱いでアキトが呼びつけられる。


「ほら、ケインズからのも居たろう?」


見世物扱いして笑いものにされるとレインが止める中でアキトはわざわざ目立つ人の頭を越えて舞台に降り立つ事で只者じゃない感を(かも)し出す。


「召喚士3体とも仕留めさせてもらったアキトです」


「っち」


マサが目立つなと小さく舌打ちしてアキトに忠告する。

依頼を出していたサイクス領の領主はアキトの頭の上を凝視して(いぶか)しげに目を細める。


「ケインズから御足労してもらったのが…レベル1?滑られているのか…?」


「お?やります?これ呪いでずっとこの表記なんですよね。喧嘩します?」


流石に無礼とアキトの態度をマサが咎めアキトも引き下がる。

領主は便宜上の感謝の言葉を述べて今回の件は完全に幕引きとされるのであった。


解散され人目が減った中でマサはアキトを呼び止める。


「おいお前、俺の計画台無しにしてくれて…」


「計画?知らんな」


マサは悔しそうに地団駄してアキトを強く睨みつける。


「俺が気持ち良くなるための世界なんだぞ!お前みたいな異分子!必ず消してやる!」


「ん?あー、そいつは済まなかったな。でも世の中全て思い通りにいかないからいいんじゃないか。イレギュラーを楽しめ」


自分は今そのイレギュラーを前にし楽しんでいるとアキトはゲラゲラ笑いマサはまた悔しそうに唸るのだった。


舞台を降りたアキトはレインに怒鳴られる。


「何でケインズさまの株を落としかねない行動するんですか!」


「呪いって言えば分かってもらえるだろ?」


「じゃあなんで喧嘩しますとか言うんですかね?不機嫌なの丸分かりです!」


実力示すのなら見せつけてもいいとアキトは大笑いしてストレスの捌け口にしてやったのにと目は笑っていない顔をする。

呆れられながらも二人は領に帰り支度を始めようとして今度はレックス達が声を掛けてくる。


「お疲れ様でした。召喚士…僕らは見てないのですがそんなのが居たんですね…」


「まぁ追い付くには苦労したし逃げる奴だったからな。最後の一人はよく分からないまま体当たりで始末しちまったが」


体当たりと聞いて大した事ないとシシーが笑うがレインはあの速度の体当たりをマトモに受けてたら身体がどうなるかと想像してブルッと身震いする。

シシーは続けて必ずアキトの精霊術をものにしてみせると所信表明をして再会の約束をして屋敷へ戻って行くのであった。


荷物を纏めて宿を出て馬車を手配していると今度はタロスが一人でアキトの前に現れる。


「よお、お前には良い人ヅラするのはやめだ。とんだ狐野郎だな」


「化かし合いなら狸の方が好きだな俺は」


「そういう話をしに来たんじゃねぇ」


タロスに軽く胸ぐらを掴まれてイライラした様子で睨み付けられる。


「数日で片付いて飯のタネが減っちまったじゃねぇか」


アキトが来る前から数回仕事をしていた様子でタロスは報酬がしょっぱかったと愚痴る。

そんな事知らないし興味もないとアキトはタロスの言葉を一蹴する。


「お前には大家族養う気持ちは分からねぇだろうな!」


「大家族ねぇ…俺は嫁が四人に子供は…」


「だからそういう…は?何?嫁?子供?」


大家族と出されて自分もある種大家族だと笑うアキトだったが養ってないと言われてハッとさせられる。


「もしかして俺ってダメ男か!?」


「今更気づいたんですか?」


レインに後ろからチクチク言葉で刺される。アキトは身悶えして家族サービス頑張ってたのにと嘆く。

相手してられないとタロスは大きく溜め息をついて邪魔するなよと釘を刺される。


「テメェとは同じ仕事したくねぇ!二度と俺達と関わるなよ?」


「お、おぅ…済まなかったな」


相手した自分が馬鹿だったとタロスは頭を掻きながら去っていき、アキトはダメ男のダメージを無駄に引きずるのであった。


ーーーーー


「ご苦労、サイクス領も無事守られ帝国の危機は去った」


ケインズはにこやかに報を受けてアキト達を手放しに褒めちぎる。

アキトは怪しい動きと怪しい人物について話す。


「敵は悪魔の召喚士、そしてその悪魔を裏で操る人物が居たようだが口は割らなかったな…それとマイルスの次期当主とやらが出張ってきたな」


ケインズは成る程と唸りつつ調査は深入りするつもりはないようであった。


「そこは報告入れておく、マサ殿に関しては今は放っておいてやってほしい父親が戦地での傷を元に死したばかりだ」


「戦地…戦争してたのか?」


「既に帝国の勝利で終結済みだ。気にすることではない」


それだとまた少し怪しい所が増えちまったとアキトは調べるなと言われているが気になって仕方が無かったのであった。

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