外来種
翌日、冒険者達に招集が掛かっているとレインから報告がありアキトは伸びをしながら「聞いてない」と真顔になり頭の上を指差す。
「コレか!?呪いのせいなのか!?」
「無駄な犠牲と思われたんですねー」
レインの冷めた口振りに思わずツッコミが飛ぶ。
「他人事!物凄く他人事!」
レインの目がある中でアキトは素早く着替えていつもの黒コート姿になって「行くぞ」とキメ顔する。
着替えの早さにポカンとするレインだったがすぐに「はい!」と気合いの入った返事をするのだった。
冒険者組合の前には整列させられた冒険者達がいて隊長らしき装備が一回り立派な兵士が作戦の概要を語っていた。
「街道を直進すると猪のようなモンスターの出現が確認された。奴等は真っ直ぐ街へ猛進する。それをお前達の力で捻じ曲げるのだ!」
シンプル故に混乱が生じる説明に皆「どうやって!?」と不安が広がる。
「壁を作るなりして道を反らせ!」
列の最後方に黙って加わったアキトとレイン、隊長の説明を聞いてレインが要約する。
「つまり肉壁になって街を守れ…って事ですかね…」
「だろうな…」
小声で話し合い昨日の様に誰しもが超次元な対応が出来るわけが無いとアキトの重要性を説く必要があるとレインは力む。
しかし協力はするが全力は出せないとアキトも面倒臭そうに鼻を掻く。
「何でですか…!」
「ルールがあるんだよ…」
全力は出せないが手段が無いわけじゃないとアキトは複雑そうな表情で悩んでいるアピールをする。
少し考えている間に作戦会議にもならない演説が終わり無茶苦茶だと冒険者達は喚きながら仕事に向かう。
「律儀だねぇ、逃げてもいいのに」
「危険さは把握していないのかもしれませんね…」
成る程とアキトは頷いて尚更守護ってやらなくてはとちょっと作戦タイムと旅行鞄を呼び出し神鳴と相談を開始する。
「高速移動薬と精霊複数召喚の許可寄越せ」
どっちかだけと旅行鞄は左右に跳ねて二択を迫る。
アキトは薬を選択、薬師特製の高速移動薬を嫁からのメッセージ付きで鞄が吐き出す。
「やれやれお節介な…」
「メッセージカード?なんて書いてあるんですか?」
「『浮気禁止』、やっぱり見てるじゃないか」
内容なんて本当は見ないでアキトは答えてポケットにしまう。
冒険者達がある程度作戦に出発して人も減りアキト達の目立つ格好に参加していたレックス達が声を掛けてくる。
「アキトさん!参加してたんですね!」
「お前らか、来てたんだな」
「行けって言ったのアキトさんでしょう!?」
素っ気ないと言われてアキトは空笑いして誤魔化しまた悩む姿勢に入る。
「おっさん?メイドさん、コイツどうしちゃったの?」
シシーがレインにアキトの様子を聞くがさっきからずっとこの様子だと言われて全員首を傾ける。
外の世界の力を持ち込むのはとアキトは一人悩みながらレインに渡していたカフスにアキトは触れる。
(精霊術を施して護身用にするのも一手か…だが許されるか?)
自分自身だけなら居なくなれば影響は無くなるが力を残していくのは絶対悪影響が残ると許可を求めるかとまた旅行鞄と相談を始める。
精霊術の先生的には興味津々だが危険だとNGを受けてアキトは貸し出しならと指を鳴らして旅行鞄から武器を呼び出す。
「おおー」
レックスはアキトの手品のような動きに感嘆する。
槍、剣、杖、弓とそれぞれに合わせた武器が出るが一人だけ貰えてないとミラベルが文句を言う。
「武器は?」
「えーっと…」
幽霊を操るだけで武器という武器を扱った事が無いと言うミラベルにアキトはまた指を鳴らして腕輪を呼び出す。
「貸し出しの特製武器だ。お前達が俺に言う召喚術が仕込まれてる。危険が迫ったら呼び出せ」
「「どうやって?!」」
レックスとシシーが同時にツッコミを入れる。アキトは頬を掻いて契約させるのはマズいと考えて「自動で」と訂正する。
(これは俺が召喚した訳じゃないもんな?セーフだよな?)
旅行鞄のクシャッと、ジトッとした姿勢にアキトは言い訳を考えながら出発するのであった。
ーーーーー
レックス達とは違う担当箇所へ向かい街の外の街道の一つを進む。
前方ではモンスターを軽く蹴散らし笑って余裕そうな若者達がいてレインは昨日の自分達はあんな感じだったとフラグのような発言をする。
直後に地鳴り、やはり来たかとアキトが冒険者達の頭を跳び越えて身構える。
昨日と同じ猪型のモンスター集団が猛進してくる。
「な、なんだぁ!?」
突然前に出てきたレベル1のアキトと正面のモンスター、どちらにも困惑している冒険者達だがアキトが木刀一本で薬をゴクリと飲み干し目にも止まらぬ早さで猪達を軽々と迎撃して現れた敵を撃破する。
鮮やかというには些か早すぎたようで背後の冒険者達は唖然呆然としていた。
レインがアキトを呼び止めようとするがアキトは何か見つけたのか止まること無く俊足で駆け出してしまう。
「あーもう!アキトさま!?」
返事などある訳もなくレインは大きく肩を落とすが次の猪が別方向からやって来てアキトに渡された槍を手に取るのであった。
何かを見つけたアキトはそれを追い掛けていた。
声を置き去りにする速度でその人物に追いついたアキトは思わず口角が上がる。
「しつこい奴だ…人間じゃ追い付けないはずだが?何だお前」
青肌の人型の悪魔のような男はぶっきらぼうに言い放ちアキトを睨む。
「不気味な奴め、ここで死ね!」
「喧嘩する前に聞きたい、お前…外来種か?」
「ナニ?」
聞き慣れない言葉に困惑しつつも戦闘態勢は変えず殺気を放つ。
アキトは余裕そうにニヤけながら別の質問をする。
「お前さんにこの馬鹿騒ぎを指示した奴とかいる?居たらオジさんに教えて欲しいな」
「フザケた顔しやがって!死ね!」
悪魔の怒りが限界に達したのか怒りの言葉と共に黒く燃える火をアキトに向けて手から放ち更に爪を伸ばし引き裂き攻撃も重ねてくる。
火に姿を隠しての渾身の一撃、のはずが空を切ってアキトが残念そうに悪魔の背後に立つ。
「この程度か?」
「ック!つくづく舐めた態度しやがって!」
連続引っ掻きをヒョイヒョイと避けながらアキトは質問を続ける。
「あの猪出したのお前だろ?違うか?」
「ちぃ!俺一人だと…?」
(あ、コイツ馬鹿だ。もっと喋らせよ)
少なくとも複数の悪魔らしき奴等が関係していると理解しアキトは木刀を振って敵の自慢の爪を折る。
すぐに新しく爪を伸ばして舌舐めずりする敵にアキトは会話を続ける。
「修復するのか、どの程度の傷まで耐えるか試してやるぜ」
「そんな棒っきれ!」
バチィっと激しく腕を叩き骨まで響く一撃を与える。
「がぁッ!」
実力差は明確でもはや実験である。傷の治りは遅いとアキトはジッと相手が立ち上がるのを待つ。
黒い炎を口から吹いてアキトの視界を遮って逃げようとするが次の瞬間にはアキトに肩を叩かれ弄ばれ悪魔は飛び退く。
「君達どこの何?誰の命令?教えてくれたら逃がしてやってもいいぞ?」
嘘だが返答次第では期限よくして見逃しかねない笑顔のアキトに恐怖を覚え震える悪魔。
「な、何なんだよ…?こんな人間いるなんて…!聞いてないぞ!」
「誰も知らねえからな…呪いのせいで、言っても信じないし。で?答えは?」
「あ、悪魔は召喚士に絶対忠節、答えられるか!」
最期の抗いと爪を突き出しアキトに突進するも軽くいなされて後頭部に強打を食らい死体も残さずに消滅していく。
「あら消えた。拷問でもしてやろうかと思ったのに…にしても召喚士か…いや、それより他の悪魔だな、探さねぇと!」
アキトは踵を返し冒険者達の元へ戻るのであった。




