妬み怨みの買い方
ヴィランを一人捕縛したアキト。
外ではゴエモンの部下とヒーロー達が争い全員捕縛するのに苦闘していたが無事一人も逃がす事なく気絶させる事に成功していたようだった。
『ヴィラン確保お疲れ様。さっさと本気出しちゃえば良かったのに』
サード・アイこと三井からのメッセージにアキトは苦笑いして殺しかねないからなと答えるのであった。
「あ!絶景かな、絶景かな」
意識を戻したゴエモンが縛られてる事に気付いて声を発する。
「よぉ、お目覚めか?悪いことはしないもんだな」
「あな驚きや、大捕物されてしまうとは」
「知り合いに眼が良い奴がいるんだよ。悪しき事はすぐにみつかるものさ」
ゴエモンは大笑いして「悪が悪をせずして何をする」と大見得を切って連行されていく。
「悪が悪だけするなら正義として悪を滅し続けるだけだ…」
アキトが銀行から出るとマスコミが出ていてアキトは困らされる。
(こういうの苦手なんだよなぁ…)
「ヴィランを一人退治したとのことで、何か一言!」
「このブラックコートがいつだって相手してやる!掛かってこいや!」
喧嘩上等の態度にマスコミ達は湧き立つ。
アキトも取り敢えずこれで良いんだよな?と自問自答しつつその場を去っていく。ボランティアでそれなりに顔が売れているアキトはこの調子に乗ってると思われても仕方ない発言を元に外と内、色々と敵を作るのであった。
ーーーーー
ボランティアを再開したアキト、顔や名前が売れ始めて周囲からも視線を集めるようになる。
慣れない視線を集めてアキトは気恥ずかしさすら覚える。
(下手に注目を集めるのは苦手だな…)
そう思う中で人々からヒーロー名を呼ばれるようになって知名度上がってきたなと活動数日で躍進していると実感するアキト。
(目立ち過ぎるのは敵を作りやすいから注意しないとな…)
気にはしているが既にやらかしている事に気付いていないアキトなのであった。
街行く人々とは違う存在がアキトの前に現れる。
「おい、オメェがブラックコートで間違いねぇか?」
渋めの番長スタイルの男にアキトは目を丸くする。
「えーっとどちら様?」
アキトはすっとぼけるような態度に番長はアキトの胸ぐらを掴む。
「ちょっとツラ貸せや」
「は、はぁ…」
アキトはボランティアを切り上げて番長に付いて行くのだった。
近くの自然公園まで連れてこられて番長は指と首をほぐしポキポキ鳴らす。
「手合わせしろや」
「へ?」
「俺はヒーロー『ツッパリ番長』。夜露死苦」
アキトはヒーロー同士の戦いに何の意味があるんだと呆れるがツッパリ番長は「ナメんじゃねえ」と怒りに震える。
「オメェの調子乗った発言を正してやろうってんだ」
「調子乗った発言…?」
「雑魚を俺らに押し付けて『まとめて掛かってこいや』だと!?」
アキトは少し前を振り返り『まとめて』とまでは言っていないと違う違うと身ぶり手ぶりする。
「あれは場の空気の勢いっていうか…ヴィランに向けて言ったのであってヒーロー同士の喧嘩をしたくて言ったんじゃない!」
「うるせぇ!覚悟しろや!そのナメた根性叩き直してやる!」
番長は拳を振るってアキトに殴り掛かる。アキトは仕方なくガードする。ガードの上からも感じる衝撃にアキトは地面を擦って後ろへ押される。
番長はアキトが耐えた事に少し驚く。
「俺の一撃を耐えたか」
「マジな喧嘩したいのか?アンタ…」
「手合わせしろって言ったろ。逃げるなよ?」
アキトはやれやれと溜め息をついて構えを取る。
「ヒーロー相手には本気は出さない。そっちに合わせて拳で相手してやる」
「オ、オメェ!ナメんじゃねえぞ!」
刀は使わないという言葉にブチ切れた番長が能力を使う。
「番長オーラ!」
番長の威圧感が増して拳が肥大化したような感覚をアキトは受ける。
(オーラだけなら変わらない!)
余裕を持って再びガードをする。しかし予測を超える衝撃にアキトは軽く宙に浮いて吹っ飛ぶ。
(見た目だけじゃねぇ…見た目以上に身体強化してやがる)
すくっと立ち上がりアキトは服の土埃を払って拳を構え走る。番長の直前でスッとアキトは刀の柄に触れ能力を使う。
「やはり刀を使…」
(崩打!)
「うグッ!…な、なんだぁ?!」
腹に衝撃を受けてよろめく番長はアキトが刀を使ったのかと睨みつける。
「刀使ったなぁ!?」
「抜いてねぇよ…崩打!」
今度は顔面に衝撃波を放ち番長は能力が途切れて元のサイズ感に戻る。
「能力か…!」
「一部だがな。まだやるか?」
すっかり能力が切れている番長にアキトは余裕の表情をする。
「まだだ!まだやれる!ウオオオ!」
また番長オーラで力を解放する。アキトはやれやれと呆れて崩打をやめて拳を振るう。番長も拳を振るいアキトの拳に合わせる。
「ステゴロで負けるものかぁ!」
「甘い!能力なんて無くたってなぁ!」
拳同士がぶち当たり二人は雄叫びを上げる。暑苦しいぶつかり合い、先に弾けたのは番長だった。
「馬鹿なっ!この俺がぁ!」
「ハァハァ…鍛え方が違うんだよ!」
膂力でゴリ押したアキトは肩で息をして番長に勝利するのであった。
番長は悔しそうに地面を殴り吠える。
「おのれぇ!こんなナメた奴に負けるとは!」
「面倒臭い奴だな…」
負けて怨まれるなんて嫌な話だとアキトは溜め息をつく。
「ヒーローがヒーローを妬み怨むなんてアホの極みだな…」
「五月蝿い!オメェに日陰者の何がわかる!」
「ボランティアしろよ。俺みたいに、顔と名前が売れるぞ」
アキトの言葉に番長は歯軋りして悔しがる。話にならないなとアキトは放って置く事にしてボランティアに戻ろうとする。
「もう邪魔するなよ?」
アキトはそう言い残して公園を去るのであった。
ーーーーー
ボランティアをし直しながらアキトは日陰者と言っていた番長の言葉を思い返す。
(どこにでも卑屈になっちまう奴はいるんだな…)
少し同情しながらお昼の事を考えつつ交通安全運動をしているとサード・アイからメッセージが入る。
『ヒーロー同士の小競り合いお疲れ様』
『何とかならないかな…何人も来られたら困る』
『仕方ない、下剋上狙いの人だっている。ヒーロー同士の戦いってそういうものだ』
下剋上、今回もランク4のツッパリ番長がそれを狙っていたのかもしれないと言われてアキトは微妙な顔をしてしまう。
『これからも増えるのかそういうヤカラ…』
『手の届く範囲の人の宿命だ。ランク8とかになってしまえばそういうのは寄ってこなくなるさ』
『ランク8か…遠いな』
アキトは言葉通り遠くを眺めて呆ける。
『アナタならすぐだと思うんですけどね。僕がサポートするよ』
『いち早く駆け付けてたら他のヒーローから妬みしか買わないのがジレンマだな』
『ハッハッハ』
サード・アイは爆笑するような反応をしてアキトは難しい顔をしてしまうのであった。
時間も時間だし昼メシにするかとアキトはサード・アイとメッセージを続ける。
『どっか美味い飯屋しらないか?』
『僕は外にあまり出ないからな…あ!出前で頼むお店なら紹介するよ』
サード・アイのオススメの店としてトンカツ屋を訪れる。
サクサクの衣のソーストンカツをアキトは堪能する。
(ヒョロそうだったのにアイツこういうの食べるのか。いやー意外だったな。うん、美味い。他も試したくなるな)
今度はカツ丼を頼んでみたいなと思うお店でリピーターになる気持ちが分かるのであった。
食後またボランティアに戻り一日中努力をする。アキトの話もあってその日はサード・アイは通報はするもののアキトに優先的に教える事は無かった。




