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財宝の使い道

スカイタワーの魔窟の制圧後以降、大きな魔窟の発生は無く日常が戻りつつあった。


「相変わらず魔窟は湧いてますけどね」


ミクがアキトのモノローグに首を突っ込んでくる。


「一人語りに割って入ってくるなよ」


「いいじゃないですか。ほら今日も一つ潰しに行くんでしょう?」


それでも日課は行う訳で、アキトは疲れた顔をしながらもミクが目星つけた魔窟まで付いて行くのだった。


ーーーーー


金銀財宝を持ち帰った神鳴は一人で大儲けだとどうやって扱うかニヤニヤしながら考えていた。


(ウヘヘ、これだけ金銀あれば換金して…何でも買えちゃうもんねー)


しかしそれを許さない存在がいた。神楽であった。


「神鳴?ダメよ?世間を騒がせちゃ」


「げぇ、姉さん!」


「異世界で得た金や銀なんかの貴金属を放出するのは御法度よ?」


世界のバランスの為と神楽は説明するが神鳴は口を尖らせる。


「じゃあこの大漁に得た財宝は!?」


「コレクションね。換金しちゃダメよ?勿論地球でも玉ちゃんの世界でも」


「そ、そんなぁ!」


頑張って得たのにと肩を落とす神鳴はそれでも数枚ならとポケットから取り出して姉に許しを請う。


「ちょっとだけ、ちょっとだけなら!」


「そう言って歯止め効かなくなるでしょ!?お小遣いならちゃんと渡してるでしょう?」


「ぐぬぬぬぬー…」


ダメなものはダメと厳しめの注意を受ける神鳴であった。


ーーーーー


草加は白亜に呼び出される。

白亜は草加が取ってきた金貨を眺めつつ草加を詰めていた。


「動画、見たわよ。大ボスを黒コートに持ってかれた上にお宝の殆どは神様が押収したようね」


「そ、それは…流石に持ち帰れませんでしたので…」


「そこはちゃんと折半の交渉しなさいよ!」


白亜は不機嫌そうに金貨を机に乗せて回転させる。


「ハザマの研究機関に持っていったけど普通の24金、まぁそれがあの映像全てだったら…流出次第では金の相場は落ちるわね」


「さ、流石に市場を破壊するような事はないかと…」


「あっちゃいけないの!可能性の話するなら悪い方向に考えなさい。常に最悪のケースを想定するのよ」


白亜は神鳴達がいつ財宝をバラ撒くのかと戦々恐々とする。


「なんとかして回収しなさい、半分でも!」


「は、はい…」


無茶振りに困惑しつつ白亜から命令を受けて草加は協会を目指すのであった。


ーーーーー


夕刻、また魔窟を一つ攻略してきたアキトの前に草加が現れる。


「やぁ、神様と少し話出来るかい?」


「神鳴と…?ああ、呼んでみようか」


休憩室に入りアキトは神鳴を呼び出す。旅行鞄からいそいそと出てきて小さく溜め息をつく。


「はあ、何の用?」


「取得した財宝についてハザマが引き取りたいと…」


「引き取り!?本当!?」


神鳴はパァと顔が明るくなる。

アキトはきな臭いと神鳴に何があったのか確認する。


「何で神鳴も元気になってるんだ…?何があった?」


「姉さんにお宝を売るなって言われて持ち腐れだから引き取りでお金に変えれるなら…」


「それは売るのと同じだろう…」


草加は苦笑いしてハザマが保管し門外不出にすると話す。


「にわかには信じられないな…どのみち金の総数は増える…それも一気にな」


「そこは厳しく管理する」


「だから…いや、やめとこう。もともとこの世界の金だ。神鳴…報酬を折半の形で渡してやれ」


無報酬なのかと神鳴は愕然とするが少しでも報酬が欲しいと駄々をこねる。


「…交渉しろ」


「分かった!」


置いてけぼりのミクは宝飾品にしといて良かったと思うのであった。


ーーーーー


ハザマのビルに赴いたアキトと神鳴の二人は白亜と会っていた。


「金銀財宝の報酬について話し合いに来たわ!」


神鳴は上から目線に手も足を組んで鼻を鳴らす。


「手放せなくて困ってる癖に…」


「翔は黙ってて!立派な交渉よ交渉!」


「わかったよ」


アキトは何も言わない事にして白亜と神鳴の交渉を見つめる事にする。


「金銀の買い取りって話だけど…」


神鳴は買い取りで話を始めるが白亜は扇子で口元を隠しながら否定する。


「いえ、貰い受けという話になっているはずよ?草加からも折半の形と聞いているわ」


「買い取って貰うわよ!私は便利なアイテムボックスじゃないわよ」


「…なるほど、『輸送費』が欲しいと」


神鳴は輸送費と首を捻る。


「欲しいのは輸送費…でしょう?」


「…はっ!なるほどそうね!輸送費!」


アキトは二人のやり取りを見てやれやれ顔になる。


(金銀の買い取りによる金銭は計上したら外部にバレるハザマは研究資料の輸送費で計上したい。神鳴は財宝の販売でお金を受け取ったら神楽から怒られる…つまり『輸送費』で互いに合意する…と。神鳴もよく気づいたな)


白亜が不敵な笑みを浮かべて交渉を始める。


「で、幾らにしましょうか?移動させるガソリンなども掛からないでしょうし…」


「そうね…重量で決めましょうか?」


「では…」


生々しい金銭の話をする横でアキトはいつ神楽に告げ口しようかと考えていると神鳴は待ったを掛けてアキトを部屋から追い出すのであった。


部屋から追い出されたアキトはこの後どうするか考える。


(幾らになるか分からないが神鳴が現金を持って何をする気なのか…暴走しなきゃいいんだが…)


アキトの心配をよそに十数分後、交渉を終えた神鳴がホクホク顔でドヤっていた。


「上手く行ったようだな?」


「フヘヘへ、儲け儲け…」


「お前なぁ…何にお金使うんだよ?」


神鳴は少し考えてハッとする。


「そっか、お金使い道考えてなかった…他の世界じゃ使えないし…」


「だろ?お前でもスイーツ食べ放題でもするくらいしかないだろ。それでも相当余るだろうしな」


神鳴は指折して考えているのを見てアキトは使い方考えておけと神鳴の頭をぐしゃぐしゃとする。


「むぅ、安請負しとけばよかった」


「まぁいい、決まったなら約束通り金貨銀貨を大漁に出してやれ」


「はーい」


ーーーーー


技術研究所にやってきた二人は白亜に案内されて厳重な扉の先へやってくる。


「保管庫です、ここなら好きなだけ…いえ、限度はありますけれど」


「わかった。ちょっと下がってて」


パチンと指を鳴らし旅行鞄を出現させて口を開かせる。


「行くわよー吐き出せー!」


大漁の金貨と銀貨が部屋一杯に吐き出され白亜は目を輝かせる。


「す、凄い…凄いわ」


「どーよ!」


胸を張って自慢気に笑う神鳴の手を白亜が握りブンブン振る。


「貴金属は本当に貴重だからこれで研究が捗るわ!」


「本当に研究に使うのか?」


「当たり前です。私自身の私腹を肥やす理由が無いからね」


白亜の考え方にアキトは感心する。

神鳴は金一封を受け取り微妙な顔をしてアキトをチラ見する。


「どーしよ…」


「…あ!俺欲しいものあったんだ」


「欲しいもの?」


取り敢えず帰ってからなと技研を後にするのであった。


日付を跨いで探索者の為の武器屋にやってきた二人、色々と武器が並ぶ中を歩く。


「へぇ、色々あるわね」


神鳴は壁の剣や斧を見て関心する。


「ああ、だが残念だが精霊はいない…」


「あらま残念…」


ちょっと興味を失いつつアキトは一本の刀を前に足を止める。


「これ古めかしくてさ、ちょっと気になってたんだよな」


「人の想いが籠もったものほど精霊が宿る…ね」


値段が値段ゆえに手が出なかったとアキトは笑い神鳴はこめかみを押さえて微妙な顔をする。


「これ役に立つかしら…」


「ショーケースの中で触れないからな」


「まぁ翔が必要と言うなら買いましょう、店長ー?」


こうして購入した刀をアキトは手にして精神集中し武具の中の精霊を呼び醒まそうとする。


「これは…いい感じだ」


持ち手などの布地も手入れをすれば何とかなるし精霊もいるとアキトは微笑み神鳴も喜ぶ。


「これなら姉さんにもう怒られずに済むわ」


「怒られたのか…」

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