帝都スカイタワー
「いいコラボ先は見つかったか?」
「アキトさんの情報載せたら皆来たいって言うから精査させてー」
ミクははにかみ答える。アキトは仕方ないなと呆れつつも自分の注目度の高さに自然と鼻が高くなる。
(あー、天狗は良くないな…集中集中)
心頭滅却すべしと煩悩死すべしとアキトは念じるのであった。
夜、解散前に飯でも食うかとなりミクの要望を聞いて小洒落たレストランを選ぶ。
「珍しいですねアキトさんが私の要望聞くなんて」
「煩悩を潰すため私財を投げ出す。大事な事だ」
「煩悩…?ははーん、私に惚れたかぁ?」
アキトはツンとして「たわけ」と答えて説明する。
「天狗になりつつある己の鼻っ柱を折るためだ。勘違いするな」
「ガーン、容姿には自信あるのに…」
ミクは軽くショックを受けるのだった。
ご飯は美味しかったそうな…
ーーーーー
解散後、明日は休みじゃないからと午前中は好きにしていいと言われてアキトは朝から活動することにする。その為に早寝しておくのであった。
早朝、携帯が鳴り響き目を覚ましたアキトは目覚ましかと確認する。通話でミクからだった。
「なんだこんな朝っぱらに…」
『ニュース!ニュース見てください!』
ミクに促されるようにアキトは携帯を操作してニュース欄を確認する。
「どれ?」
『寝惚けてます?スカイタワーですよ!』
スカイタワーとは?とアキトは寝惚けてなどいなく真面目に頭を捻る。
帝都スカイタワー、都心部にある超高層タワーである。
調べたのはいいがニュースについても見なくてはとアキトは指を動かす。
『悠長ですね!魔窟ですよダンジョンですよ!』
「いつもの事じゃないか」
『タワーそのものが魔窟化しちゃったんですよ!ニュース見てください!』
それを聞いてアキトは「ほう」と興味を引く。ミクはアキトに早く予約入れてきてと喚くがアキトは耳を穿って落ち着けと諭す。
「こういうのは財閥が真っ先に押さえちまってるに決まってる。ニュースにしたのも今からやるっていう宣言みたいなもんだろ」
『そ、そんなぁ…』
「それよりもそのモノが魔窟化したとは気になるな」
普段は近くだったり私有地内の端っこだが今回はエラくアグレッシブだなとアキトは思うのだがミクはそんな事微塵も考えず学校が魔窟化して休校になったらなぁ等と呑気な事を呟くのであった。
『休みになったなら今すぐにでも魔窟行くのに…』
「多分だがそもそも入れないだろ」
封鎖されて管理されているに違いないとアキトは溜め息をつく。ミクも受話器の向こうで溜め息をついて今日は午後から様子見に行こうと言われて約束を取り付けてアキトは再びごろ寝をするのであった。
ーーーーー
早朝から起こされて結局二度寝した結果、郊外に行くにも時間が掛かるし午前中は動く事を諦めて取り敢えず協会で情報を集めようと考える。
着替え移動を開始しながら情報収集を進める。
どうやらスカイタワーの攻略は予想通りハザマ財閥の精鋭メンバーが向かったようで現在攻略中とのこと。アキトはそれを聞いて攻略されるのも時間の問題だなと楽観的に見ながら他の魔窟の様子をチェックする。
(どうやらスカイタワーとやら以外は普通の魔窟のようだな…)
通常の魔窟も出現していて自分達に出来ることはまだあるんだなと認識する。
協会に到着し現在の状況を整理する。
(出現数は…少し減ってるか?)
受け付けと会話して出現数の低下について言及すると確実に総数は減っていると返答が入りアキトは険しい顔をする。
「スカイタワーは?」
「現在ハザマ財閥のチームが優先で対応しています。続報は夕方ぐらいを予定してます」
「建物が魔窟になるなんて…規模も大きそうだな…」
アキトの予測はハザマ側もすでに行っていると言われて気恥ずかしさから苦笑いするアキトであった。
予約は行わず午後まで待機する事にして携帯を操作しニュースなど見て情報収集を続けていると阿良川が現れて挨拶してくる。
「黒コートさんこんにちは。情報収集ですか?」
「阿良川さん。ええ、一応」
横に座ってニュースを見ているのを確認して阿良川は足をパタパタさせて愚痴をこぼす。
「ズルいですよねぇスカイタワー…きっといい絵が撮れると思うんですけど」
「皆そう思っているみたいですね…個人的には弛んでるって喝を入れたいですけど」
喝と言われて阿良川は不思議そうな顔をする。
「そんなに怒られる事ですか?」
「警戒心が足りない…規模が大きければ中身も当然十階層とかありえますからね」
アキトの言葉に阿良川はそこまで気にしてなかったと目を丸くする。
「撮影に命賭けてるの忘れてますよ…」
「そうかも、ちょっと楽をし過ぎて感覚ズレちゃってた…」
阿良川はアキトに軽く感謝しつつもスカイタワーの挑戦を諦めきれずにいた。
「高難易度なら尚の事、覚醒者として挑みたいかも」
「無茶なこと考えますね…一人でやろうなんて」
「あ、黒コートさん心配してくれてます?ミクさんが許すなら一緒に来て欲しかったりしてー」
アキトは別にミクの許可は不要と答える。
「え?シドミクさんの専属覚醒者じゃないんですか?」
「進藤さんとは腐れ縁でバディ組んでるだけですよ。よく考えたら義理だとかは…特に無い…かな」
「ええー、そうだったんですか!?じゃあ私や他の投稿者の所に乗り換えってのは…?」
アキトは頬を掻いて「そもそも」と始めにつけて答える。
「俺は魔窟を閉じるのが仕事、動画がどうとか関係はないです。まぁ腐れ縁でも縁だからなぁ、裏切る気は無いかな」
「引き抜きは出来ないかぁ…残念」
「縁は阿良川さんともあるからな、そっちが危険なトコに行く時は一声くれれば助けますよ」
阿良川は笑顔で「その時はよろしく」と笑うのであった。
ーーーーー
午後になりミクが合流してくる。
「お疲れ様ですー」
「今日は動いてないからお疲れでもない」
「おサボりですか?」
朝早くに起こされたからルーティンが崩れたと言い訳したかったが言っても変わらないだけだと開き直り「そんなとこ」と答えるのであった。
「スカイタワー!見に行きましょうよ!」
「行っても無駄だぞ?夕方まで報告待ちだ」
「関係ありません!見に行くだけの野次馬です。ついでに近くに魔窟あったら攻略する感じで」
ついでが本命じゃないのかと呆れるが暇してたし見に行くかとアキトは腰を上げる。
「そうこなくっちゃ!」
ミクに乗せられた気もしないでもないが移動を開始するのであった。
スカイタワー前、結構な野次馬が集まっていて魔窟化とはどうなっているのかと人々は気にしていたがハザマ財閥の人間がブロックしていて近づくことさえ叶わない様子だった。
「念入りなガードですね…」
「そりゃ間違えて入って死人が出たら責任問題になりかねないからな…」
「普通の魔窟はフルオープンなのに!?」
それはそれで問題なんだがと苦笑いしつつ普段のものとは違うかも知れないとアキトは答える。
「雰囲気だけでも…ダメかぁ…はっ!黒コートの名前で通れないかな?」
「恥ずかしいからやめろ。大人しく夕方まで様子見だ」
「ちぇー、わかりましたよー」
口を尖らせて納得しきってない返事をするミクであった。
帰り際に近場の魔窟を予約入れてたアキトはそこへ向かう事にしてそそくさと攻略してしまう。
「大胆に大幅カットですね」
「特筆する事はなかったからな…それよりもスカイタワーの攻略に相当時間が掛かっている問題だな…」
「そうですね夕方までなんて相当気合入ってますよね…」
アキトは遠い目をして持論を語る。
「魔窟の規模を考えたらそれでも早い方じゃないか?数日は掛かると俺は考えてる」
「そんなに!?」
「デカさが違うからな…杞憂ならいいんだが」
雑談混じりに協会に戻る二人なのであった。




