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ものま根

協会での会話も終えてミクと共に次の魔窟へ向かう。


「また午前中に攻略してたんですね」


「暇だからな…やり得だからやって来た」


「やり得…せめて動画撮れたらなぁ…」


アキトも撮影しろとミクがカメラを指差す。アキトは面倒だと断る。


「えー、皆の参考のデータを取るんじゃないんですか?」


「それとこれは別…俺はそういうの下手くそだからな」


下手という言葉に苦笑いしてしまうミクなのであった。

雑談交じりに神社近くに出現した魔窟に到着した二人は周囲確認後侵入する。


第一層、森の内部。


「森ですね…」


「今までと雰囲気は違うな…」


「そうですか?私には違いが分かりませんけど…」


なんというか今までは「洋風」今回は「和風」だとアキトは説明するがミクにはピンとこない様子であった。

敵も虫とは違い鬼のような和風の敵になっていた。


「あー、雰囲気で理解しました」


ミクも敵を見て何となく理解したようだった。

アキトは神鳴と約束通り武器を呼び出して使う。使うのは緑の装飾の手斧。


「成る程コイツか!」


アキトは武器の能力を使い木の根を操り鬼を貫く。


「植物を操った!?」


「そういう能力だ」


「かっ、カッコいい…かなぁ?」


ミクはちょっと考えて環境活用の能力の不便さを疑問視する。

アキトも魔窟内の植物を操れるのかと言われてから気付く。


「この植物達は…操れるんだな」


「うーん、細かい事よくわからないです」


アキトも理屈は分からないと口にして取り敢えず使えるなら使うの精神で行くことにするのであった。


第二層に入り長い夕刻の和風の回廊に出る。


「ノスタルジックって言うんですかね?」


「警戒しろ、何が出てくるか俺でも分からない」


ゆっくり動く二人の前に回廊の外から大きめの蝶が飛んでくる。


「あ、チョウチョ」


ミクは呆けるがアキトが素早く斧を振り下ろし蝶を滅殺する。


「モンスターだ。油断するな…毒持ちのモンスターの可能性もある」


「容赦ないですね…人すら斬りそう」


「最近は予約制になったからな…無関係な人なら叩き斬るかもな」


斧を担いで冷たく言い放つアキトにミクは軽く身震いする。


「冗談ですよね?」


「本気だ。魔窟が人を再現しない保証はない」


「あ…、うぅ…それは…そうですけど…」


正論ではあるが納得はできないミクはアキトの圧に少し萎縮してしまう。アキトはそんなミクを置いてズンズン先へ進んでしまうのであった

回廊の突き当たりまで進みアキトは下へ降りる階段を振り返らず降りる。


ボス部屋。和風の舞台の袖に出て舞台に上がる。

舞台は崖っぷちに作られていて舞台の外は断崖絶壁でありアキトは眉間に皺を寄せる。


「また高所か…敵は…」


「あー、もー!待ってくださいよー」


ミクが舞台袖から上がってくる。


「遅いぞ…カメラはどうした?」


「え?…あー、落としちゃいました…?」


いつも頭に括り付けてるカメラがないミクを見てアキトは頭を痛める。

魔窟で物を無くした場合閉じられた時に返ってこないだろうから、とアキトはカメラの費用を考える。


(高いだろうなぁ…というかワンランク上とかねだられそうだ…五万…いやもっとか?)


ヤダな等と考えていると舞台袖からナイフ片手に滝のように汗をかいたミクが現れる。


「アキトさん!酷いですよ!なんで一人…え?」


瞬間ドンとアキトは押されて舞台から落ちる。


「え?何どういう事?!」


自分と瓜二つの存在が居てアキトを押し出した。それを理解する事を拒む。


「バカ!ドッペルゲンガーだ!」


舞台の外からアキトの声が聞こえてきてミクはハッとする。

ヒトの真似事をする存在が目の前にいて今度はこちらに狙いを定めた。ミクは過呼吸気味にナイフを握り締める。


「こ、来ないでぇ!ドッペルゲンガーってアレでしょ!?見たら死ぬやつ!わ、私は何も見てなーい」


「戦えバカ!本当に死ぬぞ!」


叫びを聞いてアキトはツッコミを入れる。その間ドッペルゲンガーは手刀を構えてミクに斬りかかる。

ミクは必死にナイフを振り回し「来るなー!」と暴れる。手刀はミクの頭を捕捉し振り下ろされる。

瞬間舞台から木が伸びて手刀を押さえ込む。ミクは驚き腰を抜かす。


「うひゃあ!…あ!か、カメラがあ!」


アキトが舞台に外から飛んで戻ってきてドッペルゲンガーに突進し斧を振り下ろす。


「やりやがったなぁ!オラァ!」

ズバッとミクの姿をしたドッペルゲンガーを切り裂くが影のように黒くなり逃げられる。


「クソッ外したか!進藤!大丈夫か!」


「わ、私は…で、でもカメラが!」


「んなもん後で買ってやる!自衛しろ!」


アキトの言葉にミクは震えながら「はい」と返事して舞台の上の影を睨む。


「わ、私死にませんよね?!ドッペルゲンガーって…」


「おバカ!都市伝説とモンスターを一緒にすんな!」


アキトは畳を操作しドッペルゲンガーを今度こそ捕らえる。


(貫け!)


ドスンとドッペルゲンガーの意識外、背後から伸ばした棘で貫く流石に対応できなかったのか影はシュワシュワと消えていく。


「た、倒した!」


宝箱が出現してアキトはやれやれと言いたげに溜め息をつく。


「ふぅー」


「す、凄い、てっきり落ちちゃったのかと…」


「舞台も植物で出来ていた…だから何とか伸ばして掴んだんだ…」


アキトの説明にミクは「成る程!」と手をポンと打つ。アキトは宝箱の方へ歩みよりミクは壊れたカメラからメモリーカードを抜き取る。


「データは無事かな…携帯でチェックしないと」


アキトは愚痴りながら宝箱を開封する。


「ったく、ガラにもなく油断しちまった…」


「はぁーどうしようカメラ…あ!アキトさん!さっき買ってくれるって言いましたよね!?」


「あ?言ったか?そんな事?」


アキトは頬を掻いて首を捻る。ミクは「絶対に言いました!」と全力で押してくる。


「そんなモノ扱いしてくれましたよね?」


「分かった、分かったから…」


詰め寄られてアキトもタジタジになるのであった。


ーーーーー


大手電気屋、ミクに連れられてカメラを新たに購入する事になり財布の紐を緩めていたアキト。


「ゴープロゴープロー」


上機嫌のミクの欲したカメラの価格を見てアキトは予想より高くて顔を(しか)める。


「なぁ、高くねぇか?もう少しランク低くても…」


「何言ってるんですか!安物買いの銭失い!こういう物は高い物を買っとくのが時流の吉なのです!」


完全に言い(くる)められる形で絶対に要らないレベルの高性能カメラを購入させられるアキト。


「なぁ、俺騙されてない?」


「騙してませんよ?もっと高画質でもっと高品質でユーザーの皆に映像をお届けできるんですから!」


「やっぱり壊れた物より高ランクの物を買わされてるじゃねぇか!」


結局騙されたとアキトは愕然としてミクは経費です経費と誤魔化し笑うのであった。


ーーーーー


カメラを新調してご機嫌なミク、アキトは散財させられてアキトは肩を落とす。


「さぁ新カメラの初陣ですよ!」


「はいはい、場所はここから一駅跨いだとこの会社内だ」


「よーし頑張るぞー」


頑張るのは基本自分なんだよとアキトは呆れつつツッコミを入れながら駅へ向かう。ミクはカメラの試運転が楽しみで仕方ないといい笑顔を見せるので仕方ないかとアキトはほっこりするのであった。


「なぁ…それ前のと比べてどのくらい性能良くなったんだ…?」


「さぁ?私もよく分かりません」


「おい!」


ミクは苦笑いしてきっと高い分良い所が沢山あるはずですと豪語する。


「まぁいいか…それより壊れたカメラからデータは取れたのか?」


「はい、サルベージは可能でした。でも大事なトドメは…」


「まぁ上げとけ、死亡説出そうだな」


アキトはケラケラ笑ってミクは不服そうであった。

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