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勘違い

ケインズに連れられて城へ顔を出すアキト、二回目の訪問にも関わらずやっぱり笑われていて不快感を感じる。

ケインズは気にする事はないと実力の保証は自分がするとにこやかに語り警戒が緩みそうになるが静かな殺気を隣のレインから感じ取り緊張感を取り戻し歩みを進める。


謁見の間とは違う円卓の会議室へ案内されて下座に座るケインズ卿の後ろに立って待機しているとケインズの他に卿が数人入って来て決められている席に着く。

どうやら年齢順のようでケインズは一番下座であった。


「やぁケインズ卿、良い報告があると聞いているよ」


「まさか卿が一番乗りするとはな…」


その内二人の卿が会議が始まる前にケインズへ声を掛けてくる。


「マイルス卿、レイズ卿。私は運が良かっただけですよ」


謙遜するようにケインズは笑って答えるが二人の卿は不服そうで特にメンバーの内で上座に座っているマイルス卿は口とは裏腹に鋭い視線をアキトへ向けていた。

皇帝が最後に会議室に入って来て全員が起立して出迎える。

上座の豪華な椅子に座り全員に着席する様に伝えて会議の音頭を取る。


「本日はケインズ卿から明るい話題があると聞いてな。全員ではないが集まってくれて感謝する。ではケインズ卿、報告を…」


「はい陛下!」


ケインズは緊張した声色で報告書を手に若干震えた声で盗賊団討伐の報告する。


「マイルス卿の領、レイズ卿の領と私の領の三箇所の領を騒がせていたガルド盗賊団の征伐を我が部下が行いましたのでご報告となります」


部下と紹介されたアキトに拍手が送られるがレイズ卿がレベル1にぷぷっと笑ってしまい他の者達も気付いてクスクス笑いだしマイルス卿が辟易とした様子で質問を行う。


「本当にその者が討伐したのかねケインズ卿?我々にはその者の実力が…」


皇帝はアキトの顔を見てマイルス卿を止める。


「待て、その者…ラーナフィーユの護衛をした一人だな?勲章を与えた若者の保護者かと思ったが…」


アキトは皇帝が覚えていてくれていたと安心しながらお辞儀してから答える。


「覚えていただき光栄です。名はアキト、あの後勲章を頂いたレックス達とリッチーの討伐を行い一人縁あってケインズ卿に協力し取り立てていただきました」


一部の卿はあの時のと印象薄かったとざわざわする。

皇帝は娘から話を聞いていたのかにこやかに答える。


「やはり娘が話していた不思議な実力者は本物であったか…ケインズ卿は良き部下を得たな。ラーナフィーユも喜ぶぞ」


そんな馬鹿なとレイズ卿が憤慨するが落ち着きたまえと周囲から顰蹙(ひんしゅく)を買って悔しそうに席に座る。

皇帝は他の土地で問題が起きていないかと話を戻し一人が挙手する。


「陛下、恐れながら我が領地にてモンスターの大量発生で田畑が荒らされておりまして…」


「ふむ、一個大隊を預けよう。足りなければ冒険者を雇いなさい」


「はっ!部隊有り難くお借り致します!」


アキトは会話からその数で足りるかと考える。


(一個大隊…500人位か?領地の規模にもよるが大事なければいいが…)


上座の方ならばそれなりに広いはずとケインズ卿に耳打ちする。


「近い領地なら自分も手を貸しても?」


隣のメイドはアキトの足を軽く踏み大人しくしていろと言いたげな目を向ける。

ケインズ卿も手を貸す利点は今は無いと苦笑いしアキトは引き下がり他の卿達の様子を確認する。

早く終われと言いたげな卿達、自分の所に被害が広がらないでくれと不安そうな卿達、相変わらずイライラした様子でアキトを睨むレイズ卿、皇帝と何か相談しているマイルス卿、相談を持ち出し解決策が浮かんで嬉しそうな卿。

卿にも色々といるが一枚岩ではない組織に管理が大変そうだとアキトは頬を掻く。


皇帝がマイルス卿と話を終えてひとまず解散となり全員起立し皇帝に一礼してぞろぞろと出て行きケインズ卿は皇帝に呼び止められる。


「ケインズ卿、婚姻の事なのだが…」


アキトとレインは主が呼び止められた事で自分達も足を止める。

確かにアキトと同年代の貴族で婚姻していないのは奇妙だと思い目を丸くする。しかも同年代と思っていたが年齢は若いらしかった。


「ラーナフィーユが正式に受け入れたぞ」


「本当ですか!」


「ああ、キミはラーナフィーユとは旧知、他国に行くよりもと語っていたよ」


思考停止したアキトは会話の意味を噛み砕いて飲み込む。


(なに?!皇女とケインズは…じゃあ暗殺は…?!いや、待て…そもそも俺がケインズ卿を疑ったのは勲章持ちのレックスを処理しようとミラベルに依頼をしたから…あんな怪しい書状で?)


自分は大きな勘違い、間違いを犯していたのではないかとアキトは思い返す。

そもそもを思い返して一つ気になった事を整理する。


(あの勲章授与のタイミング、俺が皇帝に依頼したタイミングにケインズは居たか?いや、居なかった若い卿なら目立っていただろうし俺は少なくとも見ていない…じゃああそこで俺の出した依頼にリッチー討伐を提案したのは…)


瞬間記憶を掘り返してあの場で発言した男は誰だったか思い出す。


(レイズ卿!…じゃああの書状はレイズ卿の捏造!?…なら賊の協力者も…?!いや、そこはまだ…ただ勲章持ちを殺す理由…そこもまだだな。そもそも勲章の話を聞いてケインズ卿が嫉妬で…って線もある)


推理として色々と破綻してきたぞとアキトは頭を抱えて大きく肩を落とすがどうせならケインズ卿とレックス達とを顔合わせさせてしまおうかと画策する事にする。

気付いた時には婚姻の話がトントン拍子に進んでいて日程まで話し合っていて大人しく見守ることにするのであった。


ーーーーー


ケインズが帝都を出る前にアキトはレックス達を紹介しておこうと語る。


「一応皇女の護衛をしていた勲章持ちを紹介しようと思うんだが…」


婚姻も決まり上機嫌のケインズは未来の妻を守った者達と知り「是非」と嬉しそうに答える。

アキトはその反応からケインズはほぼ白だと判断して色々と知ってもらおうと考える。


幽霊屋敷に着いてレックス達とアキトはおおよそ3日ぶりの再会となる。

出てきたミラベルを含む四人にケインズは深々とお辞儀をする。

レックス達は戸惑いつつ良い身なりのケインズへお辞儀を返す。


「ラーナの護衛をしてくれたナイトだそうだね」


「あー、えっと…はい!」


勲章をちらっと見せるレックス、他の二人も胸を張って自慢気な顔をする。ミラベルだけ肩身が狭そうだったが友としてウンウンと軽く頷く。


「私はケインズ、ラーナと婚姻をしたのでキミ達へ感謝を伝えに来た」


「本当ですか!?おめでとうございます!」


女子達は貴族と皇女の婚姻にキャッキャとはしゃぐが名前を聞いてミラベルは真っ青になる。

アキトはミラベルを呼んで確認をする。


「ケインズの顔、見た事あるか?」


「無い、手紙だけ…」


「そうか、なら安心しろ。彼は白だ」


ミラベルは安堵の息をホッと漏らして護衛のレインの鋭い視線を感じてレックス達の背中に逃げ帰る。

ワイワイと盛り上がる中でアキトはケインズにレックス暗殺の為の書状を確認してもらう事にする。

当然身に覚えがないケインズは書状を見て首を横に振る。


「そんなものは知らない…それに魔法の鍵など私には…レイン?何か分かるか?」


メイドも書状を睨みつけて首を横に振る。

レックス達もアキトの意図を察して安堵して口を開く。


「じゃあ僕らを狙ってミラに依頼したのは?」


「勲章授与の場に居た卿…と俺は考えてる」


推理が外れた事は恥ずかしくて言えずレイズ卿の名も伏せて探偵ぶる。

ケインズもアキトが自分に接触してきた真意に気付いて険しい顔をする。


「私を疑って…?」


「ああ、最初はな。皇女と旧知、婚姻となれば話は別だ。元は皇女の暗殺の犯人探しだったし…あ」


「ラーナを?!一体誰がッ!」


ケインズに凄まれてアキトはまだ分からない事があると答えケインズは考えつつレインに自分達も個人的に調べると宣言するのであった。

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