現代人の精神性
という訳で早速朝一番に公園の魔窟攻略を開始するアキト。
今回はミクの撮影はなく他の探索者もいないと自由にやれるとなってちょっと本気出すかとなる。
『不思議な旅行人』
旅行鞄を呼び出して武器を呼び出そうとする。
『準備中』
「おい!」
出鼻を挫かれて少し肩を落とす。
取り敢えず木刀で頑張れといつも通りの攻略をやらされるのであった。
第一層、パイプや歯車と機械で作られた通路。
モンスターも機械的なものが多くアキトは木刀でやるには不利な対面を迫られる。
(まったく、準備中とかヒデェよ)
硬い敵に木刀を振るうアキトは内心愚痴りながら敵をゴリ押しで撃破していく。
いつまで準備中なのか分からないがとにかく前に進もうと必死になるアキトなのであった。
「神鳴さん?まだですか?」
『まだ』
一体何の準備中なんだとアキトは呆れながらも待つことにする。
中々先に進めないアキトは力一杯木刀でゴーレム達を破壊していく。
「硬ぇ!このままだと木刀がヘバッちまいそうだ」
金属製のゴーレムに苦戦していたが次の階層への階段を見つける。
(次の階層に行けば楽な敵に…!)
転がり込むように階段に突っ込むアキト、そのまま第一層を抜けて第二層へ向かうのであった。
第二層、蒸気機械の街並みが続いてアキトはガックリと肩を落とす。
(おいおい、同じ敵が続くのかよ…)
ダルいとアキトが旅行鞄に愚痴をこぼすとようやっと準備完了と旅行鞄が口を開く。
飛び出してきたのはハンマー、アキトは軽々とキャッチして構える。
「トールハンマー!」
早速突っ込んでくるゴーレムをグシャッと一撃で粉砕する。
更に飛行型の機械鳥が鉤爪を向けてくる。
「ライトニングパイル!」
雷の杭を放ち空の敵を粉砕する。
「よし!やっぱり精霊パワーは健在だな!」
気持ちよく敵を倒しアキトはスッキリした顔をする。
『木刀は卒業?』
「これはこれで使うからなぁ…」
精霊を使わない偽装の装備としても重要なんだよと答える。
アキトは気前よくハンマーを担いで気前よく敵をぶん殴りながら前へと進む。
破壊の権化と化したアキトを止められるモンスターはもういなかった。
第二層を越えて三層に入り巨大な金属製のゴーレムが立ちはだかる。だが巨大なだけでアキトの敵ではなかった。
「唸れトールハンマー!ライトニングパイル!」
アキトはグルグルと回転しながらハンマーをゴーレムに打ち付けて雷の杭を打ち付ける。ゴーレムは大きく歪み一撃で粉砕される。
フルパワーを久々に出せてアキトは憑き物が落ちた顔をして良い汗かいたとホッと一呼吸入れる。
ボスを撃破し宝箱が出現しアキトはウキウキで開ける。金属の塊が入っていて普段の石とは何か違うものを感じ取る。
(特殊な金属…ってとこか?売るか加工するか…加工出来る奴は…居ないな)
神威がいれば何か分かったかもしれないが手を借りる訳にはいかないと売る道を選ぶのであった。
ーーーーー
昼になり協会に持ち込んだ金属が百万で買い取られてアキトは目を丸くする。
「百万!?ほんとか!」
「今までの鉱石に含まれていた新種の鉱物の塊…技研が喉から手が出る程欲しがっていますからね」
札束を渡されてアキトは変な笑いが出てくる。
(金貨を袋で渡されるより札束を叩きつけられた方が脳味噌に響くなぁ…)
現代人の精神として現ナマの力の凄さを実感する。銀行にそのまま振り込み貯金が増えて行く喜びを、私腹の肥える楽しみを感じるのであった。
ミクから合流する時間の報告が入りアキトはその時を待つ。
その間、協会内で人からアキトは色々と指さされ黒コートだとカメラをチラチラと向けられる。
(やっぱり覚醒者の第一人者としてはまだまだ有名人って事なんだな…)
「アキトさん!おまたせしました!」
「お、来たか」
ミクも到着して挨拶を交わす。周りの目はミクに集まり「シドミクだ」とこちらも有名人になっていた。
「あはは、たった数日で私達すっかり有名人ですね…」
「ライバルは多いぞ?凡人に逆戻りしたくなかったら頑張れよ?」
「アキトさんだって!」
アキトは凡人に戻れるなら戻ってみたいと少し遠い目をしつつ次の魔窟の話を始める。
「次はこの公共施設近くの魔窟に挑もうと思う」
「公共施設ですか…人通りの多そうな所ですね…」
「だから選んでる。間違えて人が踏み入らないようにな」
アキトの考えを聞いてミクは理解し頷きカメラの調子を確かめる。
「変な気候じゃない事を祈りますよ」
二人は移動を開始するのであった。
ーーーーー
魔窟一層目。前回と同じ機械の空間にアキトは「ウゲッ」と声を漏らす。
早速機械のゴーレムがアキト達に襲い掛かってくる。木刀で迎え撃つアキトは辟易とした顔をしていた。
「なんでそんな顔してるんですか?」
「午前中も同じ敵と戦ってたからな…苦手なんだよな木刀だと…」
今すぐ指を鳴らして旅行鞄を呼び出したくなるアキトであったがカメラがある為見せ付けるのは良くないと分かって仕方なく木刀で戦う。
「確かに硬い相手に大苦戦してますね…」
取り敢えずで暫く戦っていたアキトだったが流石に痺れが切れて指を鳴らす。ミクは何事かとカメラを向けズームさせる。
『不思議な旅行人』
生きた旅行鞄が小躍りして虚無から飛び出してきてミクは「魔法!?」と驚く。
「武器を出してくれ!」
『また?』
「相手が悪い」
旅行鞄と会話するアキトはミクから見ても奇怪であった。
「あのー、何を話してるんです?」
「ん?あー、カメラは止めておけ」
アキトはオフレコで頼むと言いながら旅行鞄からトールハンマーを取り出して大暴れする。
「ハンマー!?なんて強さ!」
ミクは驚きカメラを止められずにいた。それどころか画角に収めないといけないと感じ取る。
雷の魔法のような攻撃にミクがまた反応する。
「アキトさんが魔法を!?」
午前中と同じ構成の魔窟で一気にアキトは攻略するのであった。
お宝は同じもので鉱石と他にナイフが入っていてアキトは「おお!」と喜ぶ。
「何が凄いんですか?」
「この鉱石百万だぞ!百万!」
「百万!」
現金な性格なのは二人ともであり顔が緩む。カメラに撮られているのを忘れてアキトは喜びミクも目を輝かせて「少しは分けてください」とおねだりされる。
アキトは構わないがと前置きした上で宝箱の中身のナイフを手渡す。
「ナイフ…?」
「お前ナイフ使いだろ?新しいのに新調したらどうだ?」
「確かにそうですけど…あ、でもなんかしっくり来る」
どうやら気に入ったようで新しい装備に微笑むミクなのであった。
ーーーーー
協会に鉱石を持ち込むと協会の人に二つ目だと喜ばれる。
「本当に百万で売れましたね!」
「ひゃー札束だぁ」
アキトは変な声を漏らしながら喜ぶ。ミクも帯付きの札束に目がお金マークになる。
「なんでも買えちゃいますよ!鉱石一つでですよ?!」
「ああ、買えちゃうな!」
世の中にはもっと高い物もあるのだが今アキト達は無敵な高揚感に包まれていた。
「これで次の魔窟でも鉱石が出たら…ぐへへへへ」
「うへへへへ」
二人は変な笑いを漏らしながら次の魔窟へと挑むのであった。
次の魔窟でも旅行鞄を活用してハンマー以外にも使って戦う姿をミクに見せてカメラに収められてしまうのであった。
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当然録画データはミクによってアップロードされて黒コートの木刀は舐めプであって本気を見せると魔法もこなせると発覚してとんでもない怪物レベルの存在だと世間に知られてしまうのであった。
『オフレコって言わなかったか?』
『忘れてましたごめんなさい』




