浪漫の街
アキト達はサンゴの街に向けて出発し数日、二人はサンゴの街の前に立っていた。
「うわぁ、何ですかコレ…」
クララは異質な街の様子に目を丸くする。
蒸気機械に包まれた街の様子にアキトも驚く。
「蒸気機関…」
「なんですそれ…?」
「機械の元祖…文字通り水蒸気を使い稼働する機械だ」
水蒸気というものを理解できないクララは頭の上に沢山の「?」を浮かべる。
兎に角街がスチームパンクに汚染されているのにアキトは少し胸を高鳴らせる。
ここまで街が完成されているのは数日じゃ無理だとハッキリ分かる中で今の情報の遅さは今後ネックになるなとアキトは頭を悩ませる。
クララはパイプがたくさん出ている城壁に溜め息を漏らす。
「はぇー、何か凄いね…」
触ろうとしてアキトが慌てて止める。
「触るなよ?火傷するぞ」
「ええ!そんなに熱いんですか?!」
水蒸気を通すだけはあって軽く百℃は超えるとアキトは苦笑いするのだった。
兎に角今は街に入ろうとアキトに促され二人で入る。
内側も結構な機械化が進んでいて目を丸くする。
「ヤマトが居たら頭痛で気絶してたかもな」
「あはは、私も良く分からなくて頭痛いかも」
クララの発言はスルーしてアキトはこの街の中心部を目指す。何故中心部なのかとクララは質問する。
「こういうのは技術者は中心部に引きこもってるってもんだろう」
「そういうものなんでしょうか?眉唾ー」
「わかった、クララは冒険者酒場の方で情報収集を頼
む」
手分けした方がいいとアキトは手を打ってクララに酒場に一人で行くように伝える。クララは一瞬渋るが一人で街を観光していいと言われて「合点承知」と調子よくすっ飛んで行くのだった。
「やれやれ、まぁ俺も観光したかったしいいか」
任務をさっさと終わらせようとアキトはパイプが集まる街の中心部を目指すのであった。
ーーーーー
アキトが街の中心地へ入ろうとすると警備の兵士達に止められる。
「ここは街の中心地、何の用だ?」
「麒麟児さんへ中央からの手紙を」
そんなものは無いがアキトは胸ポケットを探る動きをして警備兵は武器をサッと構える。
まるで拳銃を知っているかのような動きにアキトは「おっと」と両手を上げる。
「どうやら手紙を忘れちまったようだ。内容は覚えてるから伝言を頼めるか?」
「貴様何者だ?」
「何者って…ちょっと前に俺の顔は宣伝されてたと思うけど…」
アキトは金の冒険者証を見せる。中央からの依頼というのは理解されて兵士達は顔を見合わせる。
「分かった伝言を聞こう」
「直接話したい。冒険者酒場にて待つ…アキト」
「ッチ…不遜なヤツだな」
嫌われてしまったが取り敢えず受け入れてくれたようだった。
アキトはゆっくり観光しながら冒険者酒場を目指す事にするのであった。
ーーーーー
先に到着しているはずのクララの姿はなくアキトは軽く溜め息をつく。
(さっさと観光に行ったか道に迷ったか…まぁいいか)
怒るのはよそうと席について水と軽食を頼む。
サンドイッチを食べつつ待ち人を待つ。実際来るかどうかは確率は低い話だが暇だから待ち続ける。
クララが途中でやって来てアキトを見て気不味そうに苦笑いする。
「あはは、先に観光してました。もう用事は済みましたか?」
「まだだ、宿取っとけ粘り強く行く必要もある」
「はーい」
笑って去っていくクララを見送りアキトは軽く欠伸をするのであった。
日が暮れてもう来ないかなと思っていた頃だった。
「アキトという者はいるか?」
ゴーグルを額に掛けたスチームパンクの装いの女性がアキトの前に現れる。
「まだ残っていたか…酒は飲んでないようだし…物好きだな」
「仕事だからな、アンタが噂の麒麟児か」
「麒麟児?…天才発明家メル様とはアタシの事さ!」
名前は知らなかったがどうやらお目当ての人物のようでアキトは軽く頭を下げる。
「メルさん、中央に技術協力してくれないか」
「何度も言ってる、断る」
アキトは「なぜ」と聞く前にメルは面倒臭そうに理由を答える。
「アタシの蒸気機関と電気式機械は別物さ、信条に反する」
その説明に成る程とアキトは唸ってしまう。
根本的に違うシステムを組み込むのは難しいと分かりアキトは身を引く。
「仕方ない、これだけのスチームパンク見せられたらな…」
「分かるかい!このロマンが!」
「お前、外の人間だな?」
アキトが鋭い目をして質問するとメルはニコッと微笑みイエスと答える。
「普通に答えるのか…」
「そういうアナタも外の人間でしょう?」
メルはアキトを値踏みするように見つめてニヤニヤする。
「世界の脅威にならないなら俺から手出しすることもないし…しかし街一個改造しちゃうのは…やり過ぎでは?」
「あっはっは、それはたまたまですよ。街が発展したいというので蒸気機関をここまで積み込んだだけさ」
ロマンの為に命を捧げるような覚悟を見せるメルをアキトは説得は不可能だと判断する。
「分かった、もう求めない。中央にも蒸気機関と電気は違うと説明しておこう」
「本当かい?!助かるよ!これでアタシの火の国蒸気機関化の夢が…」
「そんな野望抱くな、機関車位にしとけ」
機関車もいいねとニヤニヤするメルであった。
ーーーーー
宿に戻るとクララがムニャムニャした顔で迎える。
「遅いぞー師匠…」
「寝てればいいのに…」
アキトの言葉を聞いてクララはバタンとベッドに倒れる。
「お仕事お疲れ様でした…ぐー」
「早いな…まぁそれだけ我慢してたんだな…すまんな」
自分が悪いわけじゃないが遅くなったことを謝る。それにしてもメルの技術躍進のすごさに目を奪われながら眠りにつくのだった。
翌朝、用事は無くなったが観光はしたいとクララが言うので付き合う事にする。
サンゴの街はパイプで天も覆われ薄暗く魔法の明かりが灯されていた。
「薄暗いですがなんというか凄まじい光景ですねパイプだらけで」
「それがスチームパンクのロマンさ」
「よく分かりませんがロマンかぁ…」
クララはよくわからないと呟いて周囲を確認する。
「あれは何でしょうか」
原始的な自転車が置かれていてアキトは関心する。
「自転車だな、簡易的な馬だ」
「馬…?」
「ああ、足を動かして車輪を回す。結構な速度が出るんだぜ?」
歯車的機構のものもあるのかとアキトは車も機関車もすぐに作られてしまいそうだと笑う。
「馬が不必要な車、そんなものが簡単に実現できるならどれだけ楽かと…中央まで丸二日くらいか」
「ええ!?そんなに凄い早いんですか!」
「ああ、人も一度に数百人は動かせるぞ」
ロマンって凄いと少しズレた回答をするクララ、アキトは電気式も凄いんだけどと呟いてしまい虎の尾を踏む。
『デンキシキ…テキ…テキ!』
「な、なんだぁ!?」
ガションガションと蒸気式ロボットが動いてアキトを狙ってくる。
『タイホー』
ロボはマジックハンドアームを伸ばしてアキトを掴む。
「クララ!逃げろ!」
「いや、師匠しか狙われてませんよ!」
壊してでも脱出すべきかとアキトは考えるが問題事を起こしたくないと大人しく連行されていく。
「し、師匠ー!」
クララは考えた。別に師匠なら大丈夫かと…そしてまぁいいかとなって不思議なサンゴの街の一人観光を続けるのであった。
一方アキトはと言うと、中心地に連れて行かれてメルからお説教を受ける。
「なんか街で「で」の付く言葉を言ったね…?」
「車や機関車の話をしてたまたま…」
「この街じゃNGワードだからね?魔法と蒸気のゴーレムがお仕置きしちゃうからね」
暫くメルのお説教を聞いて夕刻頃にようやっと解放されるアキトなのであった。




