ドルーガ教
朝、アキトは首を回して肩の調子を整えて目覚ましを行う。
ヤマトとクララはまだ寝ているようでアキトは邪魔しないようにそっと部屋を出て朝食を取る。
(優雅な朝食、紅茶とハニートースト…いいね)
アブラギッシュなジャンキーよりは大分マシだと重めだがハニートーストを堪能する。
(一応パトロールするか)
朝食を楽しんで口元を優雅に拭いて席を立つ。
嫌な予感がしてアキトは宿を出て裏路地へ向かう。
裏路地に入るとアキトは険しい顔をする。
「やはり復活してるか…厄介だな」
ローブは無いがモヤモヤしたものが漂っていて敵意を向けて来る。
氷の魔法が飛んできてアキトは慣れた様子で木刀で弾き落とす。
(問題ない、見える!)
朝の運動に丁度いいとアキトは手早く斬撃波で撃ち倒していく。
数いるゴーストを倒し終えてアキトは一息つく。
(時間で復活するなら根源を潰す他無いな)
そんなものあるのかとアキトは頭を悩ませつつも他の路地のゴーストを倒しに回るのであった。
一仕事終えて起床して朝食している二人に合流するアキト。
朝の運動をしてきたのを見て何かを察する二人。
「アキトさん、外の様子は…良くなさそうですね」
「雑魚どもが復活している。ローブまでは復活してないがゴーストはモヤモヤとしていやがる」
アキトの表現にクスッと笑うクララだが笑い事じゃないなとヤマトは腕組して考える。
「やはり元凶を…元凶?そんなものあるのか?」
ドルーガ教も結局はこのゴースト騒ぎが元であって元凶ではないと気付いてヤマトもアキトと同じ結論に至る。
「マンダリンさんの死の秘宝が?」
「かもしれないが…今更何か出来るのか…?」
「今どういう状況なのか…不明なんですよね」
兎に角一度確認しようとマンダリンの元を訪ねることにするのであった。
ーーーーー
マンダリンの元へ再び訪れたアキト達、外の状況を話すとマンダリンは険しい顔をする。
「そうか殲滅しても復活してくるのか…」
「闇の中から復活というのか湧いて出てきている。死の秘宝は今どこに?」
元凶と思しき死の秘宝、加工した後どこにあるのかと尋ねると加工はまだ終わっていないとマンダリンは語る。
「加工職人は死の秘宝と現在の惨状に恐れをなして皆逃げてしまったよ」
「つまり完成していない…?」
「そうだ、優秀な加工職人を探しているが見つからない…といったところだ」
諦めるか完成させるかどちらかが必要なんだとアキトは考えるが職人が逃げ出したならどうにもならないと首を横に振る。
「諦める…は選択肢に無さそうだし…技術研究とは全く別だしな」
ヤマトには頼めない話だとアキトは頭を捻る。
「俺がそういう仕事出来たらなぁ…」
「また無茶考えますね…」
クララもヤマトと同じ意見を持ってマンダリンもド素人には触らせたくないとアキトに対して冷たい反応をする。
アキトは当初の目的を考えてヤマトに話す。
「ゴースト問題は後にして今はドルーガ教について何とかするのが仕事だな」
「た、確かに…ゴーストも気になりますが今は依頼を遂行するのが大事ですよね」
ヤマトも同意してマンダリンにドルーガ教について知っている事をすべて話して欲しいと願い出る。
マンダリンは渋りながらも話を始める。
「この街から北のグレブの街に教団の本拠地がある」
「グレブの街…そこに行けば…」
何か解決できるのかもしれないとヤマトは希望を見出すのであった。
ーーーーー
グレブの街、レモの街よりは小さめだがガッチリした城壁が目立つ。
入場するのにアキトの存在がネックになる。
「元お尋ね者が何のようだ!」
「またか…」
ちゃんと説明する必要があるとヤマトと共に冒険者証を見せて中央からの依頼だと話す。
疑いの眼を向けられるがヤマトが自分は中央の人間だと説明してようやっと中に入る許可が下りる。
「警戒されてるなぁ…」
「お尋ね者になって解除令が届いて数日ですからね…仕方ありません」
クララは自分だけ特に何もなく入れる事に逆に違和感を感じていた。
「私は警戒に価しないって事ですかぁ?!」
「まぁ普通の冒険者一人なら特に問題ないだろ」
「師匠は普通じゃないんですね…やっぱり」
金の証だしお尋ね者で生き残ってるしで色々と危険視する要素はあるからなと笑うのだった。
グレブの街に入り早速目を引くのがゴーストと似たローブを着た教団員が街を歩いている事だった。
「うわ、アレ!ゴーストと同じ感じですよ?!」
「あんまり騒ぐな…」
アキトはクララにチョップして騒ぎを起こすなと注意しながらヤマトを見る。
「ヤマト、どうやらマンダリンの言ってた事はマジらしいな」
「教義の乗り換えは嘆かわしい事ですが分かりやすくて助かります」
取り敢えず宿を探そうとなり三人ではぐれないように移動する。
宿の部屋に入りアキトとヤマトは今後の事を話し合う。
「教団を潰すって事でいいのか?」
「潰す…結果的にはそうなると思います。教祖と幹部を調べて中央の名の下にお取り潰しになりますね」
穏やかには事は運ばないと知ってクララは場違いな事に気付いて震える。
「団体に対してお二人で立ち向かうんですか?」
「え?わ、私は…ちょっと…」
ヤマトは自分が戦うのは無いと身振り手振りする。
「じゃあ師匠が一人で!?」
「みたいだな、クララはどうする?」
「ええ!?私は無理です!勝てるわけ無いですよ!」
クララも無理無理とヤマトと同じ反応して結局アキト一人で何とかする事になりやれやれ顔をする。
「仕方ねぇなぁ…ちょっと冒険者酒場覗いてくるわ」
「私も行きます」
クララが挙手して残されたヤマトも仕方なく一緒するのだった。
冒険者組合に入り依頼をチェックするアキト。
大人しくヤマトとクララの二人は酒場にて食事を頼む。
アキトは受付嬢に街のゴーストについてそれとなく尋ねる。
「街の路地に出る実態のない幽霊…退治依頼とか出てないのか?」
「え?!退治!?…ドルーガ教が禁止してますからこの街では…」
小声で返答されて表沙汰にしないようにしているようだった。
アキトは余計な事を聞いたと街の外のモンスター退治の依頼書を受け取りクララに差し出す。
「お前とヤマトはコッチやっててくれ」
「何ですか?ゴブリンとオーク退治?」
「街の外の警邏だ。生活費稼ぎ」
ヤマトは自分もかと目を丸くするが協力しろと言われて仕方なく頷くのであった。
ーーーーー
アキトは二人を外に行かせた後街の裏路地に入りゴーストにわざと襲われて迎撃する。
(教義で禁止されてようが正当防衛なら文句ねぇだろ。後は向こうから接触してくるのを待つか)
路地裏のゴーストをボコボコに倒していくアキトはドルーガ教が釣られて出てくるのを待つのだった。
暫く戦闘を繰り返しているとローブを着た連中に呼び止められる。
「おい!貴様!神聖なホーリーゴースト様達になんて無礼を働いている!」
「こいつらは俺に攻撃してきた。だから教育してやってんだよ。反省せずに消えちまうけどな!」
最後の一体を仕留めて木刀を肩に担いで荒々しく教団員に接する。
教団員も埒があかなそうな相手に戸惑いながら上の者を呼びに行くような素振りを見せる。
アキトは獲物が引っ掛かったと内心喜ぶが顔には出さずに教団員に木刀を向ける。
「お前ら同じローブしてるが何なんだ?敵か?」
ざわざわと暴力は反対するように敵ではないと慌てふためく。
ガラ悪くしゃくれ顎しているとようやっと服装の違う幹部らしき人が現れる。
「おやめなさい、我々の信仰するゴースト達を攻撃するのも信徒を攻撃するのも」
「少しは話せそうなヤツが出てきたか」
アキトは木刀を納めて会話する姿勢に入るのであった。




