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裏で糸を引くのは

鬼の居ぬ間に洗濯、死霊術師の居ぬ間に探索とアキトは適当な事を言いながら書斎等を確認する。

書簡は積まれているがアキトを部屋を見ただけで引き返すのをレックスは不思議そうに尋ねる。


「幽霊でも居ましたか?」


「いや、埃。そこは最近使われてないな」


依頼は今日届いたばかり、ならば指示書も昨日か今朝届いたはずとアキトは一階の奥の廊下を見て一言「違う」と呟く。


「二階か…」


レックスが幽霊を見たという情報を思い出してアキトの二階に行く足取りが急に重くなる。

進まなければ時間稼ぎも無意味になると自身を鼓舞して死霊術師の導線を探る。

幽霊は浮いているし地に足つくのは彼女一人、追うのは容易と埃の少ない道に目をつける。


「こっちか…」


鍛えた洞察力で子供部屋に入る。学習机の上にある書簡が目に入る。

三つの書簡、黄ばんでしまっているが大切にされている書簡が一つと新し目の書簡が二つ、片方は握り潰したのかしわくちゃになっていた。


「これですね」


「ああ」


レックスが無用心に手を伸ばしアキトに叩かれる。


「とりあえず警戒しとけ、直接触れるな」


慎重過ぎると思いつつ自分に何かあったらアキトも幽霊恐怖症で機能不全になるかもしれないとレックスは小さく頷く、

アキトは木刀で書簡を軽くつつく、新しく皺の無い書簡だけ反応があり魔法の鍵が掛けられているようであった。

レックスが目を見開いて「スキル?!」と呟く。


「当たりはコイツだな…厳重な警戒だな…さて残りの二つは…」


中身を見ようとするアキトの前に幽霊達がそれは見せられないと脅かしてきて妨害してくる。

アキトは心停止したようにビクッとして直立不動のまま後ろに倒れレックスに介抱される。


「あ、アキトさん!…見せられない内容…それもラナ暗殺の…?」


「ち、違うと思う…俺が思うにその書簡は…」


それ以上言うなと言いたげに幽霊が周りに集まってきて攻撃はしないものの威嚇はしてくる。

それと同時に階下からドタバタと足音を鳴らしてびしょ濡れの半裸の死霊術師がやって来てレックスは思わず目を逸らす。


「見ーたーなー!?」


「み、見てません!裸なんて!」


「はだっ?!ちがーう!書簡!」


タオルを身体にしっかり巻いて倒れるアキトを鼻で笑いながら書簡をサッと黄ばんだのを取って何もされていないと分かり「良かった」と安堵する。

アキトが何とか上体を起こして手に取った書簡がソレなのかとニヤけ顔をする。


「キサマッ!」


喧嘩と挑発は良くないとレックスはアキトを注意する。

どっちの味方だと思いアキトは死霊術師の反応を見る為にカマかけするように話す。


「勲章持ちで命狙われてるのにそっちの味方するのかよ…?」


「だって女性だし…ほとんど裸だし…」


レックスは困惑しながらも呆れる回答をするが死霊術師は顔を真赤にして書簡を全部掴んで着替える為に下へ戻って行く。

幽霊達はアキトにアカンベーとして消えていき攻撃されなかった事を不思議に思うのだった。


ーーーーー


手掛かりを失って乙女の秘密を探ったと女子達からアキトは散々に罵倒され正座させられる。

四面楚歌であるが帰ることが出来ない状態で敵は死霊術師だろうとアキトは弁明する。

しかし風呂を共にして雑談をしたからなのか女子二人はアキトの批判をする。


「ミラちゃんは一人でこの館に住んでて可哀想なのよ!?」


「ミラは死霊術のスキルに目覚めて両親に捨てられて…」


名前も聞いたのかとミラと呼ばれた死霊術師は少し話し過ぎたと赤面する。

子供を持つ大人として子を捨てたと聞いてアキトも腕組して憤慨する。


「そいつは良くないな!子を持つ親として許せない!スキル…が何か知らんが!」


スキルを知らないのかと今まで自然に受け入れてただろうとツッコミを受けるがアキトはハッキリと知らないと答える。


「仕方ないわね、スキルってのは一定の年齢になると身に付く特殊技能の総称よ。私の場合は《魔術適性◎》!」


シシーは鼻を高くして魔法の才能は秀でているとアピールしレックスも嬉しそうに口を開く。


「僕も《勇者の才覚》ってスキルで…!」


アキトが話を遮り(うつむ)くミラを見て話す。


「で、ミラは《死霊魔術》って事か。スキルで人生決まるとか虚しすぎるし悲しすぎないか?」


アキトは世界の無情さを口にして今まで鼻を高くしていた二人は「あっ」と不幸になっているミラを見て慌てて謝る。

謝られて惨めになったのかミラは大きく溜め息をつく。


「ミラベル!ミラなんて気安く呼ばないでよ。敵なんだから」


レックスは冷たく突き放された感じがして悲しい顔をするがアキトは心が弱っている今がチャンスと情報を引き出そうとする。


「こんな空気感で戦えるのか?お偉方の指示でも別に断れるだろ?お前を捨てた奴も入ってるんだろ?」


「違う!ボクの父様も母様も奴らとは無関係だ!」


怒りに呼応するように幽霊達がミラを取り囲み防壁のように渦巻く。

また余計な事をしたとシシーに怒鳴られるがアキトは口撃を続ける。


「ならなんで書簡を握り潰した!?復縁の願いじゃねーのか?」


地球でやってた探偵時代の勘を頼りに推理を始める。


「キミを捨てたのは両親の内の片方、心配されてずっと手紙を貰ってたんじゃないか?こんな汚れ仕事もうやめろ。復縁するチャンスだろう」


「うるさい!(うるさ)五月蝿(うるさ)い!」


屋内にも関わらず凍えるような風が四人に向かって吹き荒れる。

アリスは立っていられないと片膝ついてレックスに肩を貸され立ち上がる。

威圧感と恐怖感、そして孤独感。襲い来るその感覚にアキトを除く三人は後退(あとずさ)りする。


「死霊と踊るのも悪くないだろうが友達を苦しめていいのか?一緒に風呂入った仲だろ!?」


「ウルサい!」


遂に三人は吹き飛ばされ床の絨毯にしがみつくのがやっとといった様子でアキトは仕方なく木刀を構える。


「幽霊は斬れないが奏者のお前を斬る事は出来るんだぞ!」


「やってみろ!木偶の坊!」


「言ったなこの野郎!」


アキトが風に(あらが)い時間操作で一瞬でミラの背後を取る。

視界から消えた事に目を丸くするミラは首筋に強い衝撃を受けて気絶させられ床に倒れる。

吹き荒れていた強風も渦巻く怨念達も霧散してアキトは額に流れる冷や汗を拭う。


「ったく、消えなかったら俺の意識がもたなかったな…」


お前を倒せば幽霊も消えると強く意識した事でツッパする事が出来たとアキトは語りミラの懐から書簡を抜き取り自分の推理が正しかったか確認する。

しわくちゃの書簡は父からの謝罪、汚れ仕事をやらされている事を知ってもう一度0から家族をやり直したいという手紙。

黄ばんで大切にされていた書簡は母親からの心配の手紙、捨てる事になった謝罪と愛しているという文字、そして涙の跡。

アキトは書簡戻して最後の鍵が掛かった書簡をどうにか開けないかと確認する。


「パスワード…呪文か何かか?」


あと一歩で裏で糸を引く黒幕が分かるのにと忌々しい思いでこの書簡だけは回収する。

レックス達が立ち上がり倒れるミラを心配しアキトは気絶させただけと説明する。


「首を打ったら死ぬかもしれないじゃない!」


正論受けてアキトは自分は達人だからと言い訳するが盗賊相手にミスして殺していると言われて急にミラが心配になってくる。

しかしそんな暇を与えないようにジェスターが乱入してくる。


『おやおやおや!ご主人様が寝ておられる!こーれは…しくじりましたねぇ?』


「ジェスター…消えてないってことは…」


アキトが木刀を素早く抜いてレックス達も察したのかミラを守るように立って武器を構える。


『御名答!ワタクシこそが皆さんの探しているリッチーでござーい!おや?気付きませんでしたか?ご主人様に縛られて困ってたんですよー!でーも。お陰様で解!放!』


ジェスターは指を軽快に鳴らして火の玉を呼び出しジャグリングを始める。


『ご主人様は…惜しくも、残念ながら!しくじりましたがぁ?ワタクシが代わりにお仕事しましょうか!ではでは皆々様?万雷の喝采を!』


道化師姿のリッチーとの決戦が始まる。

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